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@IT > インフラのユーティリティサービス化を目指すパワードコムの新商品戦略とは? |
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「パワードコム」と聞いて、どのような企業像を思い描くだろうか。IT業界の人なら、東京電力グループの通信事業者で独自の光ファイバ網を持つということぐらいは知っているだろうが、実態として何を強みとし、どのような方向に進もうとしているのか。イメージを描ける人は多くないかもしれない。 だが、企業ネットワークの構築・運用に多少でも携わっている人はもちろん、情報システム部門や経営企画部門の人ならば、同社の動向は注目しておいて損はない。他社に依存しない独自ネットワークを持つ電力系通信事業者が注目されて久しいが、その高い競争力が徐々に現実味を帯びはじめている。 東京電力の東京通信ネットワーク(TTNet)と全国の電力会社10社が共同設立したIP系通信事業者パワードコムが合併を果たし、「新生パワードコム」が誕生したのは2003年4月。電力系通信事業者(PNJグループ各社)と協調・連携しながら、他社に依存しない光ファイバ・ネットワークを全国規模で展開している。そのケーブル敷設距離は25万km*1におよび、日本のすべての光ファイバケーブルの39%を占めている。 そして2004年6月、日本IBM出身でSAPジャパンのCEO、米i2テクノロジーズのCOOなどを歴任してきた中根滋氏がトップに就任。長らく外資系ITベンダーですご腕を振るってきた中根氏が質実剛健な“電力系”のカラーにどのような色合いを加えるかが注目されている。
パワードコムは、新型WANサービスの広域イーサネットでトップシェアを持ち、顧客から高い支持を得ている。日経コミュニケーション2004年9月1日号「ユーザー人気度調査」 における広域イーサネットサービス利用率データによると、3年連続で同社の「Powered Ethernet」は広域イーサネット分野で利用率トップとなっており、別の専門誌では新型ネットワークサービス分野で顧客満足度1位も得ている。 広域イーサネットは、Ethernetで使用されているスイッチングハブ(レイヤ2スイッチ)を組み合わせて構築する広域なプライベートネットワーク(VPN)である。回線距離に応じて料金が上がり、拠点同士をじかに接続する専用線サービスに比べ、多拠点でVPNを構築する場合、コストがかなり下がる。 同じ新型WANサービスでは現状、ルーター(レイヤ3スイッチ)を利用するIP-VPNの方が普及率は高い。だが、広域イーサネットは、IP-VPNと違ってIP以外の通信プロトコルも使え、スイッチングハブがルーターより安価で、利用可能なアクセス回線の種類が増えていることなどからIP-VPNを上回る成長率を見せる。 特に、高速なイーサネット技術を利用する広域イーサネットは、100Mbps以上の広帯域サービスが充実し、コストパフォーマンスが高いため、今後の企業が幹線で利用するデータ通信回線の“本命”と目されている。
Powered Ethernetが最大のシェアを持つ大きな理由は、その高い信頼性にある。同社マーケティング・商品統括本部の安達徹也・広域イーサネット商品企画部長は次のように語る。 「当初、広域イーサネットはよく止まるという評判があったが、われわれは早い段階で技術部隊を中心に社を挙げて問題解決に取り組み、品質を向上させてきた。その点は他の通信事業者よりアドバンテージがある。使用するネットワーク機器もベンダーと共同で技術改良を行い、業界に先駆け顧客満足度の向上に努めてきた」 パワードコムがPowered Ethernet(図1)の提供を開始したのが2001年4月。競合他社が一斉にIP-VPNに傾く中で、同社は広域イーサネットに技術リソースを集中してきた。その信頼性を高める技術としてネットワーク機器への採用が進んでいるEoE(Ethernet over Ethernet)技術*2をネットワーク機器に取り込むにあたっても、同社技術者がいち早くメーカーと共同開発してシステム化し、ネットワークに取り込んだという実績がある。
こうした技術面での優位性の表れが昨年10月に導入したSLA(サービス品質保証制度)。業界最高水準となる99.99%(フォーナイン)の月間稼働率をユーザーに保証しており、「実現レベルではファイブナインを達成している」(安達部長)という。企業の基幹ネットワークでよく利用される広域イーサネットにおいて、稼働率の高さは絶対条件になる。 さらに顧客満足度が高い要因としては、コールセンターとネットワーク監視拠点を統合したSOC(サービスオペレーションセンター)の存在が大きいようだ。SOCにはエンジニアが3交代制で常駐しており、顧客からの問い合わせにダイレクトに対応している。 安達部長は「われわれがアクセス回線サービスをじかに提供している関東圏はもとより、全国の電力各社との協業により、他のキャリアと違ってアクセス回線と広域イーサネットを一体でサポートしている点もお客さまから好評をいただいている」と話す。
そのパワードコムが3月17日、法人向け通信サービスの新商品戦略の概要を記者発表し(発表資料)、彼らの更なる戦略が明らかになった。 同社は2005年度中、一気に17種類もの新サービスを投入し、ビジネス拡大を狙っている。 新商品戦略の柱は、『ネットワークのユーティリティサービス化』。水道、電気のようにユーザーが技術や運用管理を意識しないで利用できるように「通信コスト削減と信頼性確保」「セキュリティ強化」「ユーザーにおける運用管理負荷の軽減」「ユビキタス環境の提供」という点に注力していく。
「お客さまの声としては、今や通信コスト削減やセキュリティ強化は当たり前。そして運用管理負荷を減らしたいというご要望が強い。企業ではネットワーク運用に割けるリソースが少なくなっており、大きな課題になっている」(安達部長)
こうしたユーザーの要望を反映した17種類の新サービスの体系は、図2に示した通りだ。WAN、インターネット、PC、サーバーという5つのITインフラ領域でそれぞれ新サービスを提供していく。そして「Power on Power」と称して、パワードコムの通信サービスの上で利用できるWeb会議やOAB〜J番号のIP電話*3などのアプリケーション提供も新たに開始し、通信サービスの付加価値を高める考えだ。 加えて、「災害対策コンサル」「おまかせパック」(ネットワークの診断から最適化提案、設計・構築・運用まで一連の業務をワンストップ提供)というコンサルティングサービスやソリューションを用意し、さらに、海外通信事業者と連携した国際通信サービスの提供も盛り込んだ。
同社の本年度商品強化のポイントとして、「ネットワークの更なる信頼性・性能・柔軟性を追求した商品機能の強化」、そして「顧客の利便性向上」、の2つの側面がある。例えば同社コアビジネスである、WANサービス分野での新しいメニューは次の5商品が予定されている。
Powered Ethernet type Dは、Powered Ethernetの付加価値メニューで、アクセス回線、メディアコンバータ、エッジスイッチを二重化。一方で障害が発生しても通信サービスのダウンを防ぐ高信頼サービスである。統計的に見ると、エッジスイッチ部分での回線障害はその復旧に時間を要するが、その部分を二重化しておくことで故障回復時間を劇的に短縮することができ、稼働率を極限まで高められるという。 Hybrid-Network Solutionはユーザーの運用管理負荷を減らすサービス。複数事業者の通信サービスを取りまとめ、申し込み・開通から保守・障害対応、請求までをパワードコムがワンストップで担う。詳しくは連載第2回で紹介するが、複数の通信サービスを適材適所で組み合わせて1つのWANを構築する「メリハリ・ネットワーク」が主流となりつつある現在、Hybrid-Network Solutionはパワードコムならではの便利なサービスとなる。 次世代専用線は、その高信頼性から根強い需要を持つ専用線ユーザーに向け、広域イーサネットへの乗り替えを容易にするサービス。Powered Ethernetと同じバックボーンとアクセス回線を使い、料金が距離に依存しない一方で、専用線並みの信頼性を確保する。使用するネットワーク機器は専用線とインターネットの両方のインターフェイスを持ち、Powered Ethernetへの乗り替えをスムーズにする。 Powered Ethernet Mobileプランは、モバイル端末を使ってPowered Ethernetへリモート接続できるようにする(9月から提供予定)。さらにPENeX6は、IP-VPNサービス「PENeX」でIPv6が利用可能な上位メニューである。 いずれも、ユーザーの選択肢を広げるために既存サービスを強化したものだ。 また「顧客の利便性向上」の1つとして、パワードコムはワイヤレス分野への進出も明らかにしている。2006年ごろから公衆無線LANアクセスサービスに乗り出し、3G携帯と無線LANのデュアル端末でIP電話を行う「無線IP電話」も提供を検討している。 「将来の通信サービスは固定と無線の垣根がなくなり、ワンネットにコンバージェンス(融合)されていく、とわれわれは考えている 」と安達部長は話す。 今回パワードコムが打ち出した基本コンセプト、『ネットワークのユーティリティサービス化』。その顕著な具体例として、次回は、メリハリ・ネットワークの導入・運用を画期的に変えるHybrid-Network
Solutionについて詳しく紹介する。
提供:株式会社パワードコム
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2005年5月23日 |
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