業務にシステムを合わせることが一般的であり続けてきた日本企業では、過去に構築して改修を重ねたシステムが、経営環境やビジネスニーズに適合しなくなり負債化するケースが多い。特に経営環境変化が速い現在、変化対応力の低いシステムは維持・運用コストを増大させ、エンドユーザーの業務効率も阻害する。
だが、システム改修には多大な時間とコストがかかる。特にERPは業務をシステムに合わせるFit to Standardのアプローチを採ることで導入・運用コストを抑え、保守性、拡張性を担保することがポイントとなるが、半面、業務プロセスが標準化されるためエンドユーザーの抵抗に遭うことが多い。そうしたシステムニーズとユーザーニーズを両立した一例が朝日新聞社の「SmartDB」導入事例だ。
ドリーム・アーツは2025年8月19日、Webデータベースとワークフロー機能を持つノーコード開発プラットフォーム「SmartDB」をERPのフロントシステムとして導入したと発表。8月12日からSmartDBで構築した業務アプリを全社員約3700人で利用開始している。
年間10万件を超える伝票処理業務を安定運用。現場主導の業務改善も期待
同社がオンプレミスで約10年利用してきた既存ERPシステムは、機能追加を重ねる中で複雑化、属人化が進行。システム改修には多大な工数、コストがかかることを受けて、Fit to Standardで日本オラクルのクラウドERP「Oracle Cloud ERP」に移行した。一方で、SmartDBをERPのフロントシステムとして導入。各業務現場が求める要件や従来の運用に合わせた対応を実現したという。
朝日新聞社は創刊150年を迎える2029年に向けて、事業構造の転換と再成長に向けた取り組みを推進。その一環として業務基盤の刷新に着手。「年間10万件を超える伝票処理業務を安定的に運用できる基盤を構築できた。Oracle ERP Cloud側のマスターデータ参照や外部購買ASPとの連携など、高度なシステム連携も実現できた」と評価している。業務部門のエンドユーザー自身で業務アプリを作成・修正できることから、IT部門に依存しない現場主導の業務改善も期待されている。
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