年齢確認にプライバシーを 「ゼロ知識証明」技術をオープンソースで公開するGoogleの狙い:「18歳以上です」だけ伝える技術
Googleは、オンライン年齢確認のための「ゼロ知識証明」(ZKP)を実現するライブラリをオープンソースで公開した。
Googleは2025年7月3日(米国時間)、オンライン年齢確認のための「ゼロ知識証明(ZKP:Zero-Knowledge Proof)」を実現するライブラリ「Longfellow ZK」をオープンソースとして公開した。
以前から、オンラインサイトやアプリケーション(以下、アプリ)における安全で効果的な年齢確認方法が求められている。これに対しGoogleは、「強力な暗号化機能を備えたZKPライブラリのオープンソース化により、民間および公共部門の開発者は、需要の高いプライバシー強化型アプリやデジタルIDソリューションを格段に容易に構築できるようになる」と述べている。
「18歳以上」をどのように確認、証明するのか
Googleは、プライバシーを保護する方法で年齢確認ができるようにすることを目的に、ZKPライブラリを開発した。
ZKPライブラリは、ユーザーの年齢などのアイデンティティー(ID)情報を安全に共有できるパイプラインの作成を可能にする、Googleの「Credential Manager API」を支える中核技術だ。
WebサイトやアプリはCredential Manager APIを使用して、訪問者の「認証情報保持者」(モバイルウォレット、デジタル年齢検証アプリなど)を呼び出し、必要な年齢情報のみを安全に取得する。ZKPライブラリによる暗号化のおかげで、訪問者は「自分が18歳以上であること」を、自分が誰であるかを含む追加情報などを明かすことなく証明できる。
Googleは、年齢確認サービスのプロバイダーやアプリ/Web開発者に、Androidデバイス向けのこの安全なインフラの活用を推奨している。
Googleは「エコシステム内の全ての関係者を支援する」という取り組みを進めており、ZKPライブラリをオープンソースコミュニティーおよび暗号コミュニティーと共有している。同社によると、ZKPライブラリのオープンソース化によって、関係者は以下のような恩恵を受けるとしている。
- Webおよびアプリユーザーは、よりプライバシーに配慮された安全なデジタルエコシステムを利用できる
- 企業や組織の規模にかかわらず、このオープンソースソリューションを柔軟に活用してプライバシーニーズを満たせる
- 開発者は、プライバシーを重視したアプリケーションを構築するためにZKPコードベースを自由に使用できる
- 研究者は、効率的で高性能なZKP実装を使用して、新たなアプリケーションや技術の応用を促進できる
2026年に施行予定の欧州連合(EU)の「eIDAS(electronic Identification and Authentication Service:電子認証および識別サービス)規則」は、加盟国にZKPのようなプライバシー強化技術を「EUDI Wallet」(European Digital Identity Wallet)に統合することを奨励している。Googleは、ZKPツールを自由に利用できるようにすることで、EU加盟国によるEUDI Walletにこれを統合し、開発を加速させられると説明している。
また、Googleは同日、ドイツの地域貯蓄銀行ネットワークであるSparkasseが、EUの年齢確認要件への対応を支援するGoogleの認証パートナーとなったと発表した。
Sparkasseは、Google WalletとZKP技術によってサポートされるCredential Manager APIを使用したウォレットベースのデジタル年齢確認サービスを発表している。これにより、同銀行の顧客は、Sparkasseが発行する信頼できる認証情報を使用して、オンラインで安全かつプライベートに年齢確認ができるようになる。このサービスは数カ月以内に提供が開始される予定だ。
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