コードもドキュメントもテストも、全部つらい――SlashDataの調査で分かった開発現場のリアル:開発者が多いほど課題も多い?
SlashDataは、ソフトウェア開発者の現状調査レポート「State of the Developer Nation 29th Edition」の中から、ソフトウェア開発プロジェクトの課題に関する調査結果をブログで紹介した。
SlashDataは2025年6月18日(米国時間)、ソフトウェア開発者の現状調査レポート「State of the Developer Nation 29th Edition」の中から、プロフェッショナル開発者(以下、プロ開発者)がソフトウェア開発プロジェクトで直面する課題に関する調査結果をブログで紹介した。
同調査は、2025年第1四半期に世界127カ国の開発者を対象に実施し、1万500人以上から有効回答を得た。このうちプロ開発者は6300人超を占める。本稿ではこの調査結果のハイライトを紹介する。
コード、ドキュメント、テストの問題とは
調査結果によると、プロ開発者の10人のうち9人(88%)が、日々のソフトウェア開発業務で少なくとも1つの課題に直面していた。最も多くの回答者が挙げた上位3つの課題は、次の通り。
- 読みにくく、保守や拡張が難しいコード(31%)
- 不十分な、または古くなったドキュメント(31%)
- テストカバレッジの不足やテスト結果の軽視(27%)
SlashDataは「これらの課題は新しいものでも珍しいものではないが、ソフトウェアの品質保証やチームの知識管理の構造的な破綻につながりかねない重大な問題だ」と警告している。
これらの課題のうち、「ソフトウェアコンポーネントが最新に保たれていない」「古い、または不適切なサードパーティーライブラリ/ツールへの依存」「開発環境または本番環境の設定または保守が不適切」については「不十分な計画、ツール戦略の断片化、チーム間の責任共有の不足という相互に関連した症状だ」と指摘している。
大規模な開発チームの方がより多くの課題に直面
調査結果によると、ソフトウェアプロジェクトに携わる従業員数が1000人を超える企業の開発者は、平均3つの課題に直面していた。これに対し、小規模なチーム(開発者数が1〜10人)が直面する課題は平均2.4個にとどまる。
企業規模による違いが最も明確に表れている課題は、ドキュメントと設計だ。大規模チームの開発者の46%がドキュメントの問題を報告しているのに対し、小規模チームではこの割合は28%となっている。大規模チームの開発者の30%は「システムの拡張や変更を困難にする、古い、または欠陥のあるソフトウェア設計」という問題に直面している。
SlashDataは、「堅実なエンジニアリング手法の実践やスケーラブルな知識共有文化が定着していなければ、大規模チームでは機能不全が深刻化してしまう。この調査結果は、チーム規模とともに進化するスケーラブルな文書化システム、社内開発者ポータル、自動化されたリンティングやコードハイジーン(衛生)ツールに投資する重要性を示している」と述べている。
企業の歴史に関するパラドックス
新しい企業(設立から5年未満)は、課題に直面している割合が高かった(92%)。だが、古い企業(設立から30年以上)は、開発者一人当たりで見ると、直面している課題の数がより多い。特に、以下の課題に直面している割合が高い。
- 不十分な、または古いドキュメント(39%)
- 古い、または欠陥のあるソフトウェア設計(29%)
SlashDataは「これらの傾向は、若い企業がリソースと成熟度の問題に直面する一方で、古い企業はレガシーシステムと組織の硬直化に苦しんでいることを示唆している。モジュール性や柔軟性が求められるAI(人工知能)、モバイル、クラウドネイティブアーキテクチャへの展開を企業が進めている場合は、レガシーシステムのモダナイゼーションに積極的に取り組むべきだ」と指摘している。
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