トランプ関税のIT影響調査 多くの企業が業績悪化を見込む中、予算を増額する企業の狙いとは:約7割が「業績は悪化すると思う」と回答
ITRは「米国の関税政策にかかるIT動向調査」の結果を発表した。同社は、短期的なITコスト削減や調達先の国内回帰の動きが強まると予想している。
アイ・ティ・アール(ITR)は2025年5月13日、「米国の関税政策にかかるIT動向調査」の結果を発表した。この調査は、従業員数50人以上の国内企業でIT戦略の策定やIT実務に関わる課長以上の役職者を対象に、2025年度のIT予算やIT戦略に関する見直し状況を調査したもの。それによると71%の企業が、「自社の業績が悪化すると思う」と回答した。
2025年度はもちろん、2026年度のIT予算を見直す企業も
米国のトランプ政権による関税政策(いわゆる「トランプ関税」)が自社の業績に与える影響について聞くと、「(自社の業績が)大幅に悪化すると思う」と回答した企業の割合は23%、「やや悪化すると思う」は48%だった。自社のIT/DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の進展についても、「大きく減速する」または「やや減速する」との回答が60%に上った。
トランプ関税に伴うIT投資計画の見直し状況を見ると、2025年度のIT予算について、「既に見直しを実施済み」と回答した企業の割合は4%、「現在見直しを検討中」は14%、「今後見直す可能性がある」は26%だった。2026年度のIT予算については、「現在見直しを検討中」が17%、「今後見直す可能性がある」が38%だった。さらにIT戦略に関わる中期計画についても、見直しの意向を示している企業が58%を占めた。
ただし、2025年度の予算を見直す企業のうち、当初よりも増額する企業(42%)が、減額する企業(25%)を大きく上回った。2026年度予算についても同様の傾向が見られており、ITRは「トランプ関税の影響によるIT製品やサービスの価格上昇を見越して、IT予算を増額しようとしている」と推測している。
一方、トランプ関税の影響によるIT支出の変動見込みに関しては、「サーバ/ストレージ/ネットワーク機器」「PC」「モバイルデバイス」のハードウェア支出について減額を見込む企業の割合が増額を見込む企業を上回った。それに対して「IaaS/PaaS(Infrastructure as a Service/Platform as a Service)」と「SaaS(Software as a Service)」に関しては、増額を見込む企業の割合が減額を上回った。
ITRは、ハードウェアの調達コストの増加を想定して企業がクラウドサービスの利用に移る動きや、ハードウェアの調達コスト上昇分をクラウドベンダーがサービス料金に転嫁する可能性を考慮した結果だとみている。
トランプ関税に伴いIT戦略上優先度が高まると考えられる取り組みでは、「コスト管理の厳格化」(28%)、「国内ITベンダーとの取引強化」「海外製品、サービスの調達コスト上昇への対応」(どちらも25%)がトップ3を占めた。
ITRの舘野真人氏(プリンシパルアナリスト)は、「トランプ関税は、日本企業のIT戦略責任者に対して、短期的なコスト削減圧力への対応と、中長期的なサプライチェーンの再構築によるリスク低減という2つの大きな課題を突き付けている。国内企業のIT責任者は、最新の経済情報を注視するとともに、不確実性を前提とした弾力的な投資計画を策定することが求められる」と述べている。
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