業務アプリでビジネス成果を出している企業に共通する3つの特徴とは ガートナージャパン:アプリケーション戦略策定のための4ステップ
ガートナージャパンは、日本企業にとって「アプリケーション戦略の策定」が喫緊の課題であるとの見解を発表した。企業におけるIT部門の位置付けや取り組み姿勢の違いが、ビジネスの成果に大きく影響しているという。
ガートナージャパンは2025年5月12日、「アプリケーション戦略の策定」が日本企業にとって喫緊の課題であるとの見解を発表した。同社によると、ほとんどの企業が体系的なアプリケーション戦略を策定しておらず、ビジネス戦略と整合性の取れたアプリケーション戦略を用意することが、開発リーダーにとっての喫緊の課題となっているという。
成果を出している企業とそうでない企業の3つの違い
国内企業で業務アプリケーションの意思決定に関与する人を対象に実施した同社の調査によると、導入済みの業務アプリケーションによってビジネスの成果を得ている企業は、成果を得られていない企業と比べて以下のような特徴があった。
- ITに対する経営層からの理解が得られている
- ステークホルダーからの信頼が厚い
- IT業務環境の意思決定に経営戦略を反映している
ガートナージャパンは、このようなIT部門の位置付けや取り組み姿勢の違いが、導入済みの業務アプリケーションによるビジネス成果の獲得に明確な違いを生み出していると分析している。
アプリケーション戦略策定のための4ステップ
ガートナージャパンは、アプリケーション/ソフトウェアエンジニアリングリーダーがアプリケーション戦略を策定するための4ステップを説明する。
- アプリケーションの役割、価値を示す戦略原則を定める
- アプリケーションの健康診断を実施する
- ビジネスケイパビリティを仕分けする
- 直感的に理解できる簡潔なアプリケーション戦略にする
ステップ1は「アプリケーションの役割、価値を示す戦略原則を定める」。同社は、戦略の方向性を示し、組織が重視する戦略上の価値を表すルールやガイドラインとして働く原則はあらゆる戦略の必須要素だとしている。その企業に固有で有効な戦略原則を策定するには、考慮すべき事項やKPI(重要業績評価指標)のうち、何を重視し何を見送るかを明確にする必要があると説明する。
ステップ2は「アプリケーションの健康診断を実施する」。アプリケーションがビジネスと技術のニーズを満たすには、アプリケーションポートフォリオの定期的な検証が必要だ。ガートナージャパンは、アプリケーションポートフォリオの健全性をチェックするために、「TIMEフレームワーク」(Tolerate<許容>、Invest<投資>、Eliminate<廃棄>、Migrate<移行>)を活用し、ビジネスや技術、コストの観点の指標に基づいて各アプリケーションの適合性を評価することを推奨している。
ステップ3は「ビジネスケイパビリティを仕分けする」。ビジネスケイパビリティとは、顧客に企業価値を提供するためにすべきことを行動単位で分類したもの。ビジネスケイパビリティの仕分けでは、「これは差別化につながる独自性の高い機能か」ではなく、「これは差別化につながる独自性の高い機能として発展させるべきか」という未来を見据えた視点で議論することがポイントだとしている。
ステップ4は「誰もが直感的に理解できる簡潔なアプリケーション戦略にする」。戦略はできるだけ簡潔にまとめ、全体像を理解しやすい形で伝えることが重要だ。ガートナージャパンは、戦略に含めるべきポイントを特定することに注力すべきだとしている。
ガートナージャパンの本好宏次氏(バイスプレジデント アナリスト)は、「アプリケーション/ソフトウェアエンジニアリングリーダーには、相互に連携して動くアプリケーション群の複雑なポートフォリオを管理し、自社のビジネスに合わせて最適化するという任務が課せられている。今後、クラウドサービスや組み込み型AI(人工知能)が増加する中、業務アプリケーションの全体感を見失いがちな傾向が強まっていくだろう。誰にとっても分かりやすく、簡潔で力強いアプリケーション戦略を作ることが企業にとって非常に重要だ」と述べている。
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