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IBM、AI時代に対応する次世代メインフレーム「IBM z17」を発表 プロセッサ「Telum II」搭載でメインフレームのAI推論はどう変わるのか2025年6月に提供開始

IBMは、「AI時代に向けて完全に設計された」とする次世代メインフレーム「IBM z17」を発表した。

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 IBMは2025年4月8日(米国時間、以下同)、「AI(人工知能)時代に向けて完全に設計された」とする新たなメインフレーム「IBM z17」を発表した。新しい「IBM Telum II」プロセッサを搭載するIBM z17は、これまでのトランザクションAI機能を超えてシステムの機能を拡張し、新しいワークロードに対応できるという。

 「メインフレームシステム『IBM Z』は、大規模なAI処理を新たなレベルに引き上げ、企業は全てのトランザクションをリアルタイムで処理、評価できる。IBM z17は、z16と比べて1日当たり50%多くAI推論を処理できるなど、企業がイノベーションを推進し、より多くの成果を実現できるようにする。融資のリスク軽減、チャットbotの管理、医療画像の分析、小売り犯罪の防止など、250を超える幅広いAIのユースケースを通じて、さまざまな業界でビジネス価値を高めるために利用できる」と、IBMは述べている。

 IBM z17は、2025年6月18日に提供が開始される予定だ。Telum IIプロセッサを補完するAIコンピューティング機能を提供する「IBM Spyre」アクセラレータ(PCIeカード)も、2025年第4四半期に提供が開始される予定だ。

 IBMは、IBM z17の特徴を次のように説明している。

AI推論の高速化など、メインフレームで強力なAI機能を提供

 IBM z17は、マルチモデルのAI機能をはじめ、データを保護する新しいセキュリティ機能、AIを活用してシステムの使いやすさと管理を向上させるツールなど、以下のようなAI機能を備えている。

AI推論の高速化

 IBM z17のAI推論機能は、IBM Telum IIプロセッサに内蔵された第2世代のオンチップAIアクセラレータによって強化されている。このオンチップAIアクセラレータは、前世代の「IBM z16」に搭載の「IBM Telum I」プロセッサに内蔵されたオンチップAIアクセラレータと比べて、チップ当たりのAI処理能力が4倍、コア当たりのAI処理能力が32倍で、大規模言語モデル(LLM)の推論をサポートする。量子化も改良されており、Int8およびFP16(16bit)データ型に対応している。

 これにより、周波数や計算能力が向上し、キャッシュメモリ容量は40%増加している。1日当たり4500億回以上の推論処理が可能となる。推論リクエストの応答時間は1000分の1秒を実現する。

AI向けアクセラレーションの拡張

 IBM Telum IIプロセッサとIBM Spyreアクセラレータを組み合わせることで、マルチモデルAIのサポートに最適化された環境を構築できる。IBM Spyreアクセラレータは、システムに含まれる企業データを活用し、アシスタント実行を含む生成AI機能をメインフレームに導入するために設計されている。

AIの活用によるユーザー体験の強化

 IBM z17は、「IBM watsonx Code Assistant for Z」および「IBM watsonx Assistant for Z」などのAIアシスタントやAIエージェントを活用して、開発者やIT運用のスキルと効率を向上させるように設計されている。

 さらに、IBM watsonx Assistant for Zは、「IBM Z Operations Unite」と統合され、システムデータをリアルタイムで活用した、AIチャットによるインシデント検出と解決を可能にする。

ソフトウェアとハードウェアの完全な統合

 IBM z17はハードウェアのイノベーション、AI対応のソフトウェア機能、オープンスタンダードおよびツールの豊富なサポートを緊密に連携させることで、ハイブリッド環境に完全に統合できるように一から設計されている。

 これにより、差別化されたパフォーマンスと信頼性を実現するとともに、開発者やシステム運用担当者がIBM Zを管理、活用する方法を次のように刷新する。

AI向けOS

 IBMは2025年第3四半期に、IBM Z向けフラグシップOSの次期バージョン「z/OS 3.2」を提供開始する。z/OS 3.2は、システム全体でハードウェアにより高速化されたAI機能や、システム管理機能を強化するAIによる分析機能(オペレーショナルAIインサイト)に対応するよう設計されている。

 最新のデータアクセス方法、NoSQLデータベース、ハイブリッドクラウドでのデータ処理に対応している。これらの新機能は、AIソフトウェアがより広範な企業データを活用し、予測的なビジネスインサイトを導き出すのに役立つ。

統合されたIT運用

 2025年5月30日に一般提供が開始される予定のIBM Z Operations Uniteは、IBM Z全体の複数のソースから得た主要なパフォーマンス指標とログデータをOpenTelemetry形式で統合し、AIによってIT運用を効率化する。

 この新しいソリューションは、異常の検出時間を短縮し、潜在的なインシデントの影響を切り分け、解決時間を短縮する。「IBM Concert」と併用することで、運用チームは、企業全体の運用データを自動的に関連付けることができる。

効率化のためのAIアクセラレータ

 PCIeカードで提供される拡張オプションのIBM Spyreアクセラレータにより、IBM z17はプラットフォーム上の顧客体験の変革を目指す。顧客は、データや機密性の高いビジネスロジックをプラットフォーム外に移すことによるリスクを負うことなく、IBMのAI基盤モデル「Granite」をベースに、IBM z17上でIBMのAIアシスタントとAIエージェントを直接実行できる。

 これらのソリューションは最適化されたスタックが組み込まれており、顧客はセキュリティと拡張性を維持しながら生産性向上を実現できる。

セキュリティとサイバー防御を軸としたレジリエンスの構築

 IBM z17は以下のように、強力なセキュリティとレジリエンシーを備えたプラットフォームの進化を加速させる。

シークレット管理

 IBMの子会社であるHashiCorpが2025年3月に発表した機能がIBM Zで利用可能になり、ハイブリッドクラウド間でのシークレット管理を標準化する。「IBM Vault」は、IDベースのセキュリティを活用して、シークレット、証明書、キー、トークンなどの機密データへのアクセスを認証、許可する。

 顧客はIBM Vaultを追加し、IT資産全体にわたるシークレットのライフサイクル全体を管理することで、重要なワークロードを保護する統合ソリューションを利用できるようになる。

AIを活用したデータセキュリティ

 IBMは、プラットフォーム上で機密データを検出、分類する新機能の提供を予定している。この機能では、IBM Telum IIプロセッサと自然言語処理機能を活用してミッションクリティカルなデータを、AIに組み込む前に特定、保護できる。

 さらに、最新のAI主導のセキュリティソリューション「IBM Threat Detection for z/OS」は、サイバー攻撃の結果である可能性がある潜在的な悪意ある異常を検出、特定するよう設計されている。

セキュアでアジャイルなストレージを提供

 IBM Zの統合ストレージソリューション「IBM Storage DS8000」の最新世代となる「IBM Storage DS8000」(第10世代)は、IBM z17の能力を最大限引き出すように設計されており、重要なワークロードを処理できる環境を企業に提供する。

 一貫性のある最適化されたデータパフォーマンスに加え、データの収益化を支援しながらビジネスの成長を促進する最新のIBM技術を採用できる、モジュラーアーキテクチャを提供する。

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