Google、AIシステム構築を支援するオープンソースの「Project Open Se Cura」を発表:lowRISC、Antmicro、VeriSiliconが協力
Googleは、安全でスケーラブル、透明、効率的なAIシステムの開発を加速させるオープンソースフレームワークの開発プロジェクト「Project Open Se Cura」を立ち上げたと発表した。同社内で「Project Sparrow」と呼ばれていたものだ。
Googleは2023年11月7日(米国時間)、安全でスケーラブル、透明、効率的なAI(人工知能)システムの開発を加速させるオープンソースフレームワークの開発プロジェクト「Project Open Se Cura」を立ち上げたと発表した。同社内で「Project Sparrow」と呼ばれていたものだ。
Googleは、新プロジェクトを立ち上げた背景を次のように説明している。「AIが人々の生活に浸透する中、安全で信頼できるAI体験を提供するために、安全でスケーラブルかつ効率的なコンピュートシステムの開発が不可欠となっている。だが、ハードウェアの進歩は機械学習(ML)モデルやソフトウェアの開発に後れを取っており、安全で効率的なフルスタックシステムの展開を妨げている。より小型のデバイスを求める消費者の要求にバッテリー技術の進化が追い付かず、電力の制約から、展開可能なAIシステムの能力が限られている」
Project Open Se Curaでは、これらの課題の解決に向けて、Ambient MLアプリケーションのための省電力で安全な組み込みプラットフォームが構築される。ターゲットプラットフォームは「RISC-V」と「OpenTitan」を使用したものになる。
RISC-Vは、非営利団体のRISC-V Internationalが管理しているオープンソースのRISC命令セットアーキテクチャ(ISA)。OpenTitanは、シリコンRoT(Root of Trust:信頼の基点)チップの透明で高品質なレファレンス設計と統合ガイドラインを作成するオープンソースプロジェクトだ。
Open Se Curaの目標は、MLワークロード用のシステムの開発が、共同設計および開発によって加速するように、オープンソースの設計ツールとIPライブラリのセットを進化させることにある。これにより、セキュリティ、効率性、スケーラビリティを中心としてシステム設計を改善し、次世代の強力なAI体験を実現可能になるという。
Open Se Curaの取り組みは、GoogleとlowRISC、Antmicro、VeriSiliconのようなパートナーとの緊密な協業により推進するとした。
- lowRISC:プロジェクトの安全な基盤を確保するためのRoTと開発および統合ツールで貢献している
- Antmicro:「Renode」によるシステムシミュレーションツールと、オープンソースのシステムレベルソフトウェアの専門ノウハウで貢献している
- VeriSilicon:IP設計、シリコン設計、BSP(Board Support Package)開発、商品化に関する専門ノウハウで貢献している
Googleとパートナーはこれらのツールを用いて、安全なML機能を備えたIPライブラリを拡張し、省電力AIシステムの概念実証に取り組んできた。
Googleは「われわれは今後、Open Se Curaをオープンな方法で引き続き進化させ、さらなるパートナーとの協業を目指していく。ケンブリッジ大学(高度なセキュリティメカニズムであるCHERIのイノベーションのため)やミシガン大学(省電力と生成AIのため)がその候補だ。オープンソースコミュニティーと協力し、安全、スケーラブル、効率的なMLシステムで新しいイノベーションとAI体験を後押しすることを楽しみにしている」と述べている。
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