Windows 10 バージョン1903のWindows AutoPilotの新機能「ホワイトグローブ展開」とは:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(56)
Windows 10の最新バージョンで、Windows AutoPilotに「ホワイトグローブ展開」機能が追加されました。ホワイトグローブ展開とはどういうオプションなのか、どういう利点があるのかを紹介します。
Windows AutoPilotのおさらい
企業でWindows 10コンピュータを新規展開する新たな手段として、Windows 10 Creators Update(バージョン1703)から「Windows AutoPilot」と呼ばれる機能が利用可能になりました。Windows AutoPilotについては、本連載の以下の回で紹介しました。
- さらに進化したWindows 10の企業向け展開―Sysprepを代替/補完する「プロビジョニングパッケージ」と「Windows AutoPilot」(本連載 第16回)
- Windows 10の展開は本当に楽になるのか―Windows AutoPilotの機能をもう少し詳しく(本連載 第24回)
Windows AutoPilotを利用すると、プリインストールPCを入手したユーザーは、「OOBE(Out-Of-Box-Experience)」と呼ばれる初回起動時のセットアップで「Azure Active Directory(Azure AD)」の組織アカウント資格情報を入力することで、そのWindows 10を組織内で利用可能にするための初期設定(Azure AD参加やデバイスポリシーの適用など)を自動的に完了させることができます(画面1)。

画面1 Windows AutoPilot対応サービスにデバイスが登録済みの場合、Azure ADの組織アカウントでサインインするように資格情報を入力することで、企業用のクライアントとしてデバイスが自動セットアップされる
なお、Windows AutoPilotを利用するには、対応パートナーのOEMベンダーから導入するプリインストールPCのデバイス情報(シリアル番号など)を取得し、Windows AutoPilot対応サービス(Microsoft Intuneやビジネス向けMicrosoft Storeなど)にインポートしてデバイスを事前登録しておく必要があります。
Windows 10 バージョン1903からはホワイトグローブ(White Globe)展開が可能に
Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)からは、Windows AutoPilotの展開オプションとして新たに「ホワイトグローブ(White Globe)展開」がサポートされます。従来の展開方法は、プリインストールPCの初期起動時のOOBEセットアップでAzure ADの組織アカウントの資格情報を入力することで、デバイスとユーザーの設定とアプリ、ポリシーが配信され、自動的にセットアップされます。この従来の方法は、Windows 10 バージョン1903以降も引き続きサポートされます。
ホワイトグローブ展開は、OOBEセットアップのうち、ユーザーに関連する一部を除く大部分のセットアップ(White Glove OOBE)を、OEMベンダーまたはIT担当者の手元で完了させておくオプションです。“ホワイトグローブ(白手袋)”は、出荷される前の工場内での作業というニュアンスから名付けられたのではないでしょうか。OEMベンダーやIT担当者は、手元で大部分のセットアップを完了させた状態で、エンドユーザーにデバイスを引き渡すことができます。
現時点でWindows AutoPilotのホワイトグローブ展開をサポートしているのは、「Microsoft Intune」(管理ポータルはMicrosoft Azureに統合されています)だけのようです。IT担当者は、Microsoft IntuneにWindows AutoPilotの対象となるデバイス情報をインポートし、Windows AutoPilotのデプロイメントプロファイルで「White Glove OOBE」を有効にして、デバイスにユーザーを割り当てます(画面2、画面3)。
Windows AutoPilotサービス側の準備ができたら、OEMベンダーまたはIT担当者がデバイスをユーザーに引き渡す前に、インターネット接続が可能なネットワーク環境でデバイスを起動して、最初の「お住いの地域はこちらでよろしいですか?」の画面のところで「はい」はクリックせずに、[Windows]キーを5回押します。
すると「何をしますか?」の画面に切り替わるので、「Windows Autopilotプロビジョニング」を選択して「続行」をクリックし、「Windows Autopilotの構成」画面で組織、プロファイル、割り当てられたユーザーを確認したら、「プロビジョニング」→「再シール」の順番に選択して終了します(画面4)。このとき、Azure ADの組織アカウントによる認証は要求されません。
[Windowsキー]を5回入力したときに「Windows AutoPilotプロビジョニング」を選択できるのは、Windows 10 バージョン1903以降です。つまり、ホワイトグローブ展開が可能なのは、Windows 10 バージョン1903以降のプリインストールPCに限られます。バージョン1809以前の場合は「PCをセットアップしますか?」と表示されますが、用意されているのはプロビジョニングパッケージのインストールを開始するオプションだけになります(画面5)。
デバイスを受け取ったエンドユーザーの初期起動時のエクスペリエンスは、従来と変わりません(前出の画面1を参照)。地域やキーボードを選択し、ネットワークに接続して、Azure ADの組織アカウントでサインインすることで、ホワイトグローブ展開では行われていない、ユーザーアプリと設定が配信されます。ホワイトグローブ展開を使用しない従来の方法よりも短時間で完了するはずです。
筆者は現在、Microsoft Intuneの有効なライセンスを持っていませんし、Windows AutoPilot対応の未使用のデバイスもないため、ホワイトグローブ展開の全体を体験することはできていません。詳しくは、以下の公式ドキュメントで確認してください。
- Windows Autopilot for white glove deployment[英語](Microsoft Docs)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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