AIでテレビショッピングの問い合わせ電話数を予測 効果的な番組制作に活用――キューサイ、NTTデータらが効果検証
キューサイは、NTTデータ、NTTデータ経営研究所と共同で、テレビショッピング番組の内容から視聴者の問い合わせ電話数を予測するAIモデル「nAomI」を開発。nAomIによる効果予測を番組制作に活用した結果、問い合わせ電話数が27.6%増加したという。
キューサイは2018年11月13日、NTTデータ、NTTデータ経営研究所とともに、効果的なテレビショッピング番組の制作に向けて、番組内容から視聴者の問い合わせ電話数を予測するAI技術を開発し、実際の問い合わせ電話数を増加させる効果を検証したと発表した。
ヘルスケア商品やスキンケア商品などの事業を展開するキューサイグループでは、顧客起点に注力し、特にテレビショッピング番組制作では、顧客に“楽しい体験”を提供して、結果として商品の魅力を理解してもらい、注文につなげる施策を追求。番組放送前に顧客の反応を分析し、番組制作に反映する方法を模索していた。
一方、NTTデータグループでは、脳科学やAI技術を基に人間の情報処理プロセスの定量的理解とそのビジネス応用を進めており、2016年には脳活動を計測して知覚内容を解読する「脳情報解読技術」を利用して、TVCMなどの動画広告の評価、改善、出稿前の効果予測を行う広告評価サービスを開始している。
今回、両社は、NTTデータグループのAIによる効果予測技術を応用して、番組視聴者が商品に興味を持ち、問い合わせ電話をかけるまでの反応を予測するAIモデル「nAomI(ナオミ)」を開発。この予測モデルは、キューサイが2012〜2018年に放送した番組の映像とそれに対する視聴者の問い合わせ電話数を基に、番組の特徴(映像や音声)と問い合わせ件数の関係性を機械学習させて構築した。
そして、nAomIに機械的に生成した数千通りの番組構成案(番組進行における紹介内容の順序など)を読み込ませて評価させ、最も問い合わせ電話数が見込めると予測した番組を制作し、2018年7月に全国14のローカルテレビ局で放映して効果を検証した。
比較検証のため、従来の手法で制作した2番組と、nAomIの判断を基に制作した1番組を、同時期に同放送局で放送したところ、nAomIによる番組は問い合わせ電話数が平均で27.6%増加したことを確認。この結果から、数千通りの構成案を生成、評価することで、従来の方法では実現に至りにくい意外性の高い案を制作、放送できた可能性が高いと見ている。
キューサイでは、nAomIを活用することで、顧客に楽しい体験を提供し、商品の魅力を分かりやすく伝える番組の制作が可能になり、問い合わせ電話の入電件数の増加も期待できると説明。今回の検証結果に基づき、今後は、広告や情報コンテンツの制作にもAI活用を拡大していくとしている。
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