Windows 10/Office 365 ProPlusの企業向け更新管理まとめ(2018年春版)−中編−:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(20)(3/3 ページ)
前回は、Windows 10とOffice 365 ProPlusの最新サポートポリシーを再確認し、「Semi-Annual Channel(半期チャネル)」と改称された更新チャネルの選択方法を説明しました。今回と次回は、企業で利用可能なWindows 10とOffice 365 ProPlusの更新管理の選択肢について説明します。
WSUSを利用する場合、基本的にWUfBは不要
企業内ネットワークに「Windows Server Update Services(WSUS)」サーバを展開すると、Windows 10を含むWindowsクライアントとWindows Serverの更新プログラム、Microsoft製品の更新プログラムをMicrosoft Updateサービスと同期して、社内クライアントへの配布ポイントとして利用できます(図2)。
WSUSでは、コンピュータのグループ化と更新の承認/拒否/自動承認に基づいて更新プログラムを配布することができます。これにより、更新プログラムをパイロット展開してシステムへの影響を調査し、その後、検証済みまたは必要な更新プログラムだけを選択的に配布したり、Windows Updateポリシーを使用して自動インストールしたりすることができます(画面2)。また、WSUSに対応したサードパーティー製品の更新プログラムやドライバを、WSUSにインポートして配布することもできます。
WSUSのクライアント側の構成は、グループポリシー(またはローカルコンピューターポリシー)の主に以下のポリシー設定を使用して行います。
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\イントラネットのMicrosoft更新サービスの場所を指定する
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\自動更新を構成する
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\Windows Updateからドライバーを除外する
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\Windows Updateのすべての機能へのアクセスを削除する
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\インターネット上のWindows Updateに接続しない、または、コンピューターの構成\管理用テンプレート\システム\インターネット通信の管理\インターネット通信の設定\Windows Update のすべての機能へのアクセスをオフにする
WSUSでは、管理者の承認/拒否に基づいて更新プログラムを配布する/しないを選択できるため、基本的にWUfBと併用するものではありません(併用するシナリオについては次に説明します)。WSUSのポリシーとWUfBのポリシーを同時に設定した場合、あるいはWSUSのポリシーで制御されたWSUSクライアントであるにもかかわらず、クライアント側の「詳細オプション」でWUfBが有効化された場合は、Windows 10の品質更新プログラムと機能更新プログラムについてはWUfBが優先され、意図せずMicrosoft Updateに接続してしまうことがあります。
企業内のクライアントに対し、WSUSからのみ更新プログラムを配布する場合は、WUfBポリシーを使用しないことが重要です。また、「Windows Update\インターネット上のWindows Updateに接続しない」ポリシー(注意:ストアアプリのインストールと更新も制限されます)、または「Windows Update\Windows Update のすべての機能へのアクセスをオフにする」ポリシーおよび「\インターネット通信の設定\Windows Updateのすべての機能へのアクセスを削除する」を利用して、ユーザーがクライアント側の操作でMicrosoft Updateに接続することがないようにします。
Windows 10 バージョン1607からは、次のポリシー設定が利用可能になりました(品質更新プログラムで追加)。
Windows 10 バージョン1607(14393.1532以降)およびバージョン1703(15063.674以降)およびバージョン1709:
- コンピューターの構成\Windowsコンポーネント\Windows Update\Windows Updateに対するスキャンを発生させる更新遅延ポリシーを許可しない
この新しいポリシーを有効にすると、WSUSクライアントとして構成された環境で、自動更新または「更新プログラムのチェック」のユーザーのクリックによるWUfBポリシーに従ったMicrosoft Updateの検索を行いません。
Windows 10 バージョン1607の場合は、ユーザーがクライアント側の「詳細オプション」を操作してWUfBを有効化できないように、WUfBポリシーと組み合わせて使用します(WUfBポリシーの有効化により、クライアント側のUIがグレーアウトされます)。バージョン1703以降では、WSUSポリシーの設定によりクライアント側のUIは非表示になるため、WUfBポリシーの設定は不要です。
WSUSに同期され、承認されたWindows 10の品質更新プログラムおよび機能更新プログラムは、WUfBポリシーに関係なく、全てのWSUSクライアントに適用されます。しかし、WUfBポリシーが有効になっている場合、またはクライアント側で有効化した場合は、WUfBポリシーに従ってMicrosoft Updateに対する検索も行われます。
なお、WSUSクライアントのインターネット上のWindows Updateに接続させないポリシーは、WUfBポリシーに基づいたMicrosoft Updateの検索をブロックしません。このWSUSに対する検索とWUfBポリシーに従うMicrosoft Updateの2つの検索動作を「デュアルスキャン(問題)」と呼びます。
上記ポリシーは、デュアルスキャンを止めるためのものです。このポリシーは、社内ではWSUSから更新プログラムを配布し、外出時はMicrosoft Updateから手動で品質更新プログラムを取得できるようにしたい場合に、意図せず、WSUSで承認していない機能更新プログラムでアップグレードされるのを防止するのにも役立ちます。
このポリシーが有効になっている場合でも、ユーザーが「オンラインでMicrosoft Updateから更新プログラムを確認します」をクリックすると、WUfBポリシーに従ったMicrosoft Updateの検索が行われます。WUfBポリシーで機能更新プログラムを最大限に延期しておくことで、意図せずWSUSで承認していない機能更新プログラムによるアップグレードが行われるのを防止できます。
- [詳細情報]Windows Server Update Services(WSUS)を使ったWindows 10更新プログラムの展開(Windows IT Pro Center)
WUfBとWSUSの併用シナリオは限定的
WUfBとWSUSの併用は、Windows 10の品質更新プログラムおよび機能更新プログラムをWUfBポリシーに従ってMicrosoft Updateから取得し、その他の更新プログラムをWSUSから配布するというシナリオでの利用を想定したものです(図3)。
Microsoft製品の更新プログラムとMicrosoft Updateで提供されるドライバを、Microsoft UpdateとWSUSのどちらで配布するかは、「自動更新を構成する」ポリシーの「他のMicrosoft製品の更新プログラムのインストール」オプションと「Windows Updateからドライバを除外する」ポリシーの設定で制御できます。
なお、前述したように、WSUSにWindows 10の品質更新プログラムおよび機能更新プログラムが同期され、承認されている場合、それらの更新プログラムはWUfBポリシーに関係なく、全てWSUSクライアントに適用されます。その上で、WUfBに対する検索が行われることに注意が必要です。
- [詳細情報]Windows Update for Business の管理ソリューションとの統合(Windows IT Pro Center)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Microsoft、業務PC自動セットアップツール「Windows AutoPilot」を提供
Microsoftは「Windows 10 Fall Creators Update」で、IT管理者向けに組織内へのPC展開と管理を容易にする一連の新機能「Windows AutoPilot」を提供する。Windows 10 Fall Creators Updateに搭載される「次世代」のセキュリティ機能
Microsoftが「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載する次世代セキュリティ機能を紹介。「Windows Defender ATP」に含まれるツールを大幅に拡充することを明らかにした。「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載される新機能まとめ
マイクロソフトはWindowsの次期大型アップデート「Windows 10 Fall Creators Update」を2017年後半にリリースすると発表。Windows MRやiOS/Androidも包括したマルチプラットフォーム対応など、コンシューマー/技術者それぞれに向けた新機能を多数リリースする。Windows 10 Creators Updateがやってきた!――確実にアップグレードする方法を再確認
2017年4月6日(日本時間、以下同)、Windows 10の最新バージョンである「Windows 10 Creators Update」が正式にリリースされ、利用可能になりました。4月12日からはWindows Updateを通じた配布が段階的に始まります。