[Analysis]

MS社長が阿波踊りに参加する理由

2004/08/17

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 マイクロソフト 代表執行役 社長 マイケル・ローディング(Michael Rawding)氏が8月10日、2005年度の経営方針を発表した。2003年7月に社長に就任したローディング氏にとってこの1年は「マイクロソフトに対する指摘にこたえる」ことに専念した1年だったのではないだろうか? マイクロソフトに対する世間の認識と、その指摘に対するマイクロソフトの回答はどうだったのか。経営方針説明会でのローディング氏の発言から拾ってみよう。

 マイクロソフトに対する指摘で最も多いのがセキュリティ関連。マイクロソフトもセンシティブになっている。ローディング氏は「セキュリティ対策は第1の優先課題」と強調した。この1年のセキュリティへの取り組みにも自信を見せ、「私はある程度の自信を持ってBlasterのようなワームは今後数週間は発生しないといえる」と述べた。2003年夏にはローディング氏がフランスで夏期休暇をとっている時にBlasterワームが発生し、一部で批判を浴びた。そのためローディング氏は「お盆は日本にいる」と語り、万全の体制を強調した。

 世間からの指摘はまだある。それは外資系企業のマイクロソフトが、日本のソフト産業を支配してしまうのではないかという懸念だ。ユーザーや他社ベンダの中には、クライアントPCとオフィスソフトの大半を握ったマイクロソフトが、サーバ製品でも市場を席巻するのではないかという不安がある。この懸念を払しょくするためにマイクロソフトが採用した作戦はパートナーシップの積極的な推進だった。国内のセキュリティベンダはもちろん、地方自治体や大学、NPOなどと次々に協力を発表した。ローディング氏は「統合された技術革新をパートナーとともに実行していく」と述べた。ローディング氏は8月15日に開かれた徳島市の阿波踊りにも参加。日本への溶け込みに懸命だ。

 マイクロソフトの「指摘にこたえる」という方針を象徴するのが2004年2月に始めた「Get the Fact」キャンペーンだった。ローコストでセキュリティが強固とされるLinuxなどオープンソースソフトに対して、第3者機関の客観的な評価でWindowsの優位性を強調する内容。ローディング氏はキャンペーンを「第3者機関のレポートによる事実に基づき、(マイクロソフト製品が)提供できる価値を示す」と意義を強調。「神話と現実は切り離さないといけない」と語り、Linuxになびく企業や自治体の担当者に覚醒を促した。

 マイクロソフトはこの1年、指摘にこたえ、「信頼される企業市民」(ローディング氏)となるべく、さまざまな施策を講じてきた。その効果はどこから表れるのか。注目する必要があるだろう。

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