[Analysis]

具現化するユビキタス・コンピューティング構想

2001/11/22

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 ここ数年、次世代コンピューティングを語るとき、“ユビキタス”という言葉がよく用いられている。野村総合研究所では、ユビキタス・ネットワーク社会は2005年までに到来すると発表しているが、その具現化に向けた技術の研究や開発は、少しずつ着実に進んでいる。

 ユビキタスとは“いたるところにある、遍在する”という意味の形容詞。IT業界で“ユビキタス”が用いられる場合、情報にいつでもどこでもアクセスできる環境を指す。1980年代後半に、米ゼロックス PARC研究所のリサーチャー マーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が、ユーザーが多くのコンピュータ・デバイスに囲まれるというコンピューティングの将来図を表現するのに用いたのが始まりだ。

 人がコンピュータを意識しないユビキタス・コンピューティング世界の実現には、接続性やデバイスの発達が不可欠だ。接続性に関しては、無線LANやBluetoothといった技術が実用段階に入った。また、シスコシステムズが全製品をIPv6対応にしたが、無限に近いアドレス空間を有するといわれるIPv6の導入は、接続性の発展を加速させるだろう。情報へアクセスするデバイスは、携帯電話やPDAにとどまらず、家電や車といった領域にも浸透しつつある。今後は、ユビキタス・コンピューティングを実現する主役である端末以外にも、その周辺のソリューションに関してさまざまなものが登場しそうだ。

 米ゼロックスのユビキタス・コンピューティングに関するサイトには、「ユビキタスはバーチャルリアリティではない」と強く主張している。人間がコンピュータ社会の中にあるのがバーチャルリアリティとすれば、ユビキタス・コンピューティングでは、コンピューティングが現実の人間社会に入る。そこでは、人間がどうやって技術と接するかという、社会的・心理的なテーマが持ち上がるだろう。コンピューティングと人間が共存するユビキタス・コンピューティング社会実現に向けた課題は、技術だけではないといえそうだ。

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