25年間連続プラス成長を遂げるマイクロソフト

2002/4/27

 世界規模での景気の低迷により、大きな打撃を被っているIT業界。今月、多くのベンダが2002年第3四半期の業績発表を行ったが、明るい話題は少ない。だが例外もある。米国時間4月18日に発表された米マイクロソフトは、今期も増収・増益を達成した。

 同社の発表によると、2002年度第3四半期の同社の売上高は72億5000万ドル、前年同期との比較で13%の増収となった。営業利益は33億ドル、純利益は27億4000万ドルという。

米マイクロソフト シニアバイスプレジデント兼CFOのジョン・コナーズ氏 日本料理が大好きという同氏は現在、日本庭園付きの日本風の自宅を建築中という

  4月26日、来日中の米マイクロソフト シニアバイスプレジデント兼CFO(最高財務責任者)のジョン・コナーズ(John Connors)氏が、財務面から同社の現状および今後の方針などを明らかにした。

 1975年の創業以来25年間、同社の売上高および営業利益は右肩上がりで成長を遂げている。IT企業であれば高い株価がついた時代は、ITバブル崩壊でピリオドを打った。そんな中、同社の好調さは際立っている。同氏は、2000年7月25日と2002年4月16日の全業界の時価総額トップ10を比べて見せ、以下のように語る。「2000年、マイクロソフトの時価総額は3760億ドルで第4位、2002年は3100億ドルで第2位になった」。(ちなみに両年ともに第1位のGEの時価総額は2000年5210億ドル、2002年は3370億ドル)。さらに、この両年をIT業界に絞って並べると、2000年の3位から2002年にはトップに浮上している(2000年トップだたシスコシステムズは4位に下がり、インテルは両年ともに2位)。

 「株主にリターンをもたらすことも大きな使命の1つだ」とコナーズ氏は言い、投資家から見ても優良企業であることをアピールした。2002年度、IT企業で売上高、営業利益ともに増加したのは、同社とAOLぐらいだ。ライバルのサン・マイクロシステムズやオラクル、IBMはマイナス成長で終わっている。

 コナーズ氏は1999年に同社が大きく方向性を変えたことに触れ、それ以来、現在までの注力分野は、(1)コンシューマおよびデバイス、(2)PCエクスペリエンス、(3)サーバおよびエンタープライズの3つとした。中でも3番目のサーバおよびエンタープライズ分野は今後5年間の重点分野という。「効率性、生産性の向上はあらゆる企業にとって課題だ。.NET構想は、まさにこれを実現するためのもの。長期的に使えるアプリケーションの構築・実装を可能とする」(コナーズ氏)。具体的には、開発ツール「Visual Studio .NET」(VS .NET)のプロモーション、「SQL Server 2000」などのサーバ製品のプロモーション、あらゆる製品においてのXMLサポート、Webサービス技術の発達と実装などを挙げる。VS .NETに関しては、開発者のマインドシェアの獲得を図っていくという。また、パートナー企業が.NETプラットフォーム上でビジネスの収益を上げるビジネスモデルの安定化も成功に不可欠とした。

 すでに実行に移している戦略の実現に関して、同氏はおおむね現況に満足している様子だ。「成功している」というVS .NETは、3500万以上のベータ版を配布し、35万人以上の開発者が最終版を取得しているという。そのほかのサーバ製品「SQL Server 2000」に関しても、「成長率はオラクルの2倍。100万台以上のサーバに導入され、10億ドル規模のビジネスに発展した」という。また、「Exchange 2000 Server」に関しても、「1億本のライセンス登録を記録した。これはロータスの2倍にあたる」と、成功をアピールした。

 現在、同社の売り上げを事業別に見ると、デスクトップ・アプリケーションが71億ドルで最大規模を占める。それ以下は、デスクトップ・プラットフォームが69億ドル、エンタープライズ向けソフトウェアおよびサービスが38億ドル、と続くが、成長率で見ると、エンタープライズ分野は6%のプラス成長。「他社が落ち込んでいることを考慮すると、すばらしい結果」とコナーズ氏は言う。

 今後の取り組みは、優先順に、PC市場の活性化、サーバなどエンタープライズ市場への取り組み、消費者からの信頼獲得、パートナーへのサービス事業の強化の4つ。研究開発に50億ドル投資して、これらの取り組み分野を実行に移すという。技術カンバニーにとって社内に優秀な研究者を抱えることは、社運をも左右する。同社も、優秀な開発者や従業員に働きやすいと思ってもらえる環境作りを心がけているという。「コカコーラやハンバーガーに膨大な供給(投資)をしたね(笑)」。

 「XBox」に関しては、「米国では成功、欧州では値下げして様子を見る」と述べ、「日本では予想より悪かった」と認めた。そして、「今後も忍耐強く市場動向を見守っていく」とコメントした。

(編集局 末岡洋子)

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