
第6回
奥義その弐 敵を知り、自らを知る
西村 泰洋
富士通株式会社
マーケティング本部
フィールドイノベーション
プロジェクト員
2008年4月14日
各機器への筆者の経験ならびに感想から
読者の皆さんがここで紹介したすべてのリーダ/ライタに触れることは困難だと思われますので、筆者のチームの経験から各社の機器の印象を述べておきます。
モトローラ XR480は最新テクノロジのリーダ/ライタであることは相違ありません。現在よりも、むしろ今後に重点を置く製品と思っています。UHF帯は2005年4月に日本でも利用可能となりましたが、それまではこの周波数帯で先行していた米国製リーダ/ライタが中心でした。
筆者はもともとUHF帯を学ぶに当たってシンボルテクノロジー製品とエイリアンテクノロジ−製品から入ったことから、個人的にも愛着のある機器です。添付のマニュアルをすべて読んでRFIDシステムの基本思想などを学ぶのも有益です。
XR480では洗練されたコマンド群が提供されていますが、新しさがある故に利用者にもチャレンジ(学習)精神が求められます。しかしながら、OSや開発言語の縛りがないのはありがたく、新しいテクノロジを好む方や若手エンジニアにお勧めです。
オムロンは、細かい動作や凝った処理が可能です。完全なコントロールを希望する方には適しています。また、細部にわたって現場適用へのこだわりが感じられます。
オムロンの特徴として、マニュアルが非常に分かりやすく、確認が必要な性能の明示がされている点が挙げられます。一方でさまざまな処理が可能なことから、エンジニアとしては自身の理想形を目指して、開発に時間をかけてしまう可能性もあります。どちらかというと、ベテランのSEやプログラマにお勧めできます。
なお、モトローラとオムロンは世界の主要国の電波規制に対応した製品を提供していますので、グローバルに展開するユーザーにとっては強い味方です。
日立や富士通は、総合ベンダとしての経験とノウハウを生かして、リーダ/ライタの各種設定はコードでなくミドルウェアで実施し、開発者と利用者がすぐに使えるということと、リーダ/ライタやアンテナ、RFIDタグからミドルウェアや上位システムまでのトータルなシステムが売りです。
ただし、いずれも現在のシステムシーンであるWindowsプラットフォームにフォーカスしているという課題があります。WindowsやVisualStudioに慣れている方にとっては、長所であり開発効率も高くなるといえるでしょう。このような前提において、直ちに利用を開始したいというユーザーにはお勧めです。
なお、いずれの機器もイーサネット接続を前提に設計されており、ハードウェアとしての性能とメーカーサポートもしっかりしています。
コストと開発メンテナンスの視点から考える
ここで、コストと開発メンテナンスの視点で考えてみましょう。プロダクトのコストを縦軸に、開発コストを横軸に取ってみます。
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図2 UHF帯RFIDリーダ/ライタのコスト別マトリクス |
現時点で、製品価格に関してはモトローラのXR480はやや高めです(価格の詳細に関しては各社にお問い合わせください)。
開発コストに関しては、どれもイニシャルのシステム開発ではそれほど変わらないと思います。モトローラが多少学習時間を要するかもしれませんが、更新時期を迎えたときにプラットフォーム変更の可能性やそれによる移行などを勘案すると話は違ってきます。更新までをかんがみるとOSに依存しない機器の方が有利かもしれません。
「それぞれの具体的な学習期間は?」と質問される読者の方もいるかもしれません。それは、本連載をお読みいただいていれば、すでに各機器の特徴と概要はつかんでいると思います。さほど心配は要らないでしょう。
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Index | |
奥義その弐 敵を知り、自らを知る | |
Page1 代表的なUHF帯リーダ/ライタの特徴 |
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Page2 各機器への筆者の経験ならびに感想から コストと開発メンテナンスの視点から考える |
Page3 RFIDタグの最新動向 敵を知りさらなる敵に挑む |
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