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@IT > Master of IP Network > Mobile Connection > WAP 2.0で採用されたXHTML Basicを考える |
![]() XHTMLで変わるモバイルコンテンツの世界(1) WAP 2.0で採用されたXHTML Basicを考える 佐藤 崇 2001/12/7
2001年夏に、WAPフォーラムがパブリックプレビュー版を公開し(ニュースリリース)、にわかにWAP 2.0に対する期待が高まってきた。高まってきたというよりは、さまざまな思惑が錯綜する中、ようやく1つのものとしてまとまったといったほうが正確だろう。さらに、11月12日にKDDIがいよいよ本格的にWAP 2.0に正式対応した次世代サービスラインナップを公開し(ニュースリリース)、一気に動き出す雰囲気を帯びてきた。これに対してNTTドコモも、従来の独自路線を突き進むというイメージとはやや異なり、今回はNOKIAと共同で積極的にWAP 2.0を推進していくという戦略を発表している(ニュースリリース)。モバイル事業の1つのトレンドとして、WAP 2.0によるプラットフォームの統合と、2.5/3Gによる動画配信というものが目前に迫ってきている。 本連載では、コンテンツデベロッパー向けの内容として、WAP 2.0を主軸に下記のような形で連載を展開していこうと考えている。
今回は、コンテンツデベロッパーの目から見たWAP 2.0全体像について概観してみたい。
ご存じのとおり、日本のモバイルインターネット関連事業はWAPフォーラムの動向に先駆ける形で、各キャリアによりさまざまなモバイル事業が展開されている。バブル的な展開は一段落したとはいえ、その将来的な期待にかけるものは世界のどこよりも大きいものがあるし、世界各国から日本でのモバイル事業の展開に注目が集まっている。 従来、WAPサイドに立つKDDI(EZweb)陣営、ACCESSやそのほかの国内携帯電話端末メーカーとタッグを組む形でCompact HTML(正確にいえばiモード対応HTML)を持ち込んだNTTドコモ、そしてメールという得意分野からインターネットアクセスサービスの展開を図ったJ-フォンによる三つどもえ、という形が表面上展開されてきた。 こういった勢力争いにより、WAPというとKDDIサイドの立場のように見受けられるが、実際3勢力すべてはいまやWAPフォーラムにおいて重要な影響力を持つ存在であることも事実だ。そしてそうした中、WAP 2.0は妥協と将来に向けた拡張性の可能性を秘めたものとしてまとめられた、1つの成果といえる。 モバイルコンテンツレイヤという立場から見たとき、WAP 2.0の新しいポイントは以下のとおり。
そして日本においては、
が大きなポイントだろう。従来、独自路線を突き進み、世界唯一ともいえる携帯電話によるインターネットサービスの大成功を収めた日本においても、世界標準としてのWAPがやはり受け入れられたと見ることもできるし、日本発のモバイルコンテンツの規格仕様が国際的にもその評価が受け入れられ、世界標準として採用されたと見ることもできる。利用者サイドからすれば、仕様の統一化により、幅広いコンテンツを参照できるようになるわけで、そこから得られるメリットは大きい。 今後は、「標準仕様」というものの上に、いかにして他社にない付加価値を提案していくかがポイントとなっていくことは必至だ。それがコンテンツ自体なのか、標準+アルファの技術仕様になってくるのか、独自のプロトコルレイヤを基にした新たなサービスとなってしまうのかは混沌としている。利用者にとってメリットの出る形で展開されることを期待したい。
WAP 2.0上で規定されているベースとすべきモバイル端末向けのコンテンツ記述言語は、「XHTML Basic」とされている。HTMLではなく、XHTMLをWAPフォーラムが採用することで、一昨年より展開されてきたW3Cとの提携が実を結ぶことになったといえる。 XHTMLは、概念や知識としてはかなり知られるようになってきた記述言語だが、なかなか利用が進まない言語であることも事実だ。分かりやすくいえば、HTML 4.0をXML体系に再定義したものと考えると分かりやすいだろう。
マークアップ言語をXMLベースとして位置付けたいW3Cとしては、XHTMLは現状のHTMLと将来の標準仕様であるXMLの架け橋をするものとしてとらえており、その利用をなんとかして拡大させたい考えだ。 HTMLが「XML対応」となることで変わる点といえば、
などである。 HTMLをXHTMLとして出力するツール(HTML TIDY)もあり、HTMLで書かれたものをXHTMLで書き直すこと自体はさほど困難なことではない。
XHTML Basicとは、XHTMLの中でも基礎的な部分をまとめたもので、拡張性を取り除いた携帯端末などのハンドヘルド端末向けの仕様となっている。XHTMLは正確には、基礎的な部分を定義したXHTML Basicの上にデバイスごとに拡張した仕様を載せたような構造になっていると考えれば分かりやすい。モバイル機器においてXHTMLという場合、XHTML Basicを指すものと考えれば問題ない。 XHTMLファミリの体系は下記のようになっている。
CHTMLとXHTML(XHTML Basic)との違いについてだが、基本的にCHTMLはHTML互換なので、差し当たっての変更点は、HTMLとXHTMLの章で述べたことと変わりはない。
ただし、ページの装飾表現に関連した部分は、決定的に異なっている。XHTMLでは、文字や画像、そのほかのページを構成するオブジェクトはスタイルシートによって表現できる。そのため、無駄なタグの省略が可能だ。また、TABLEタグが使用できるなど、従来にはない拡張性が特徴だ。効率的なプログラムを組むことで、携帯電話でWebサイトを表示する際に消費するパケット数にも改善が見られるかもしれない。いろいろな意味で、この部分はXHTMLに書き換えるうえで重要になってくる点だろう。 とはいえ、当分の間CHTMLで記述し続けたところで問題が起こるわけではない。今後NTTドコモは、CHTMLではなくXHTML Basicを主力言語として扱っていくことをすでに発表しているので、ゆくゆくはXHTML Basicに移行するのがよいだろう。 ただCHTMLの立場からは、まだまだ実験的なスタンスという立場にとどまったほうがよいことはどうやら間違いない。NTTドコモの50xi端末がどのタイミングでXHTML Basic対応のブラウザを搭載してくるのか、見極めが求められるだろう。現行のCHTML向けのブラウザでXHTMLBasicで記述されたコンテンツを見ると、表示上、制作者の意図しない表示をされる可能性がある(逆のケースは比較的寛容のようだ)。 具体的には、CHTMLにはなくXHTMLにおいて新たに付け加えられたタグを使用したケースで一部エラーができることが予想される。例えば、tableタグを使用できない501〜502シリーズ向けの端末ではテーブル機能自体が認識されないし、<br>ではなくXHTML的に記述した“<br/>”など、空要素のタグは“/>”で閉じたものはタグとして正しく認識できないことがある。また冒頭に宣言しなければならない“<?xml>”部分に関してはそのまま表示されしまう。これら、CHTML互換に関しては、後日詳しく検討してみたい。
WML 1.3(WML 2.0の前のバージョン)はもともとXML体系の記述言語なので、WMLからXHTMLに言語を変えても実はそれほど問題は起こらない。HTMLからXHTMLに書き換えるうえで必要となるプロセスはすべてクリアしているからだ。ただ問題となってくるのはWML自体がいままでもっていた表現力の部分(変数やイベント処理、カード分割によるコンテンツ自体の操作性の最適化、ソフトキー機能の充実など)であり、XHTMLに書き換えることでこのような表現力が獲得できれば、それまでになかったよりリッチなコンテンツになることは間違いない。 また今後は表現力の向上したモバイル端末上では、PCと同様のHTMLライクなページ設計が求められてくるのかもしれない。特に日本においては、現状のWMLに対応した端末は、EZwebのもののみであり、それもWMLではなくHDMLネイティブであるということから、WML向けの開発コンテンツは早急にXHTML向けにシフトすることを考えるべきではないかと考える。
HDMLは、WAP対応という言い方をされてきたが(WMLがHDMLの言語仕様を基に設計されており、設計部分で共通部分が多いなどの理由から)、XHTMLとはそもそもまったく概念が異なる言語であることに注意する必要がある。HDMLとWML 1.3はよく似た言語だが、XHTMLとはまったく異なる。そもそもページの設計自体から再考する必要がある。 特にHDMLはWML 1.3と異なり拡張機能がいろいろと加わっているので要注意だ。
などに関しては、そもそもWAPフォーラムで規定されているWMLには一切機能として提供さていないものもあり(ただし日本向け端末では、Openwave社がWML+という独自拡張でWML上でもアクティビティを実現してきた経緯はある)、こうしたものをベースとして作り上げてきたコンテンツに関しては、早急に書き換えというか、新端末向けのページ設計が求められてくる。 ただしそれ以外の部分(通常のページ表示関連)に関しては、XHTMLに対応したブラウザではバックワードコンパチビリティが保障されているし(どの程度のものかは未知数だが)、過去の端末から新しい端末への切り替えのペースを考え(すぐにすべてが切り替わるということではない)、新規に開発する予定のコンテンツをXHTML対応にすると考えれば分かりやすいだろう。 通常モバイルコンテンツは、今日ではまずHTMLで開発するというケースが多いようなので、それをHDMLに再設計するというプロセスを踏むのではなく、比較的プロセスが容易なXHTML向けにすると考えると分かりやすい。 つまり従来は開発フォーカスを
としてきたのを
に変更すればよい、ということになる。これによってコンテンツデベロッパーにとっては比較的開発が困難とされてきたHDMLではなく、HTMLにより近接性のあるXHTMLで開発できるというメリットがもたらされる。また、ユーザーにとってはEZweb向けとWAP 2.0対応のiモード端末などで同一コンテンツが同時リリースされるというメリットも享受できるということになろう。 問題となってくるのは、3のケースだ。これらは、WAP 2.0対応端末が発売されれば、端末数、ユーザー数がただ減少するのを待つだけであり、そこにどれだけの開発メリットが存在してくるのかということを考えなくてはならない。 端末が大体1年ぐらいの期間を経て過半数が新端末に切り替わることを考えれば、2002年4月ぐらいまでにサービス拡充やユーザー獲得に動く際はHDML向けに3.の開発を考えた方がよいということになろう。2.と3の見極めは、WAP 2.0対応端末の出荷ペースと販売台数とのにらめっこということになるだろう。ただし、3は2に含まれるのだから、過去の端末でもXHTMLサイトが変換されるから、開発しなくてもよいとする意見は少々乱暴すぎるのではないかという懸念もある。
WAP 2.0では、XHTML Basicとともにコンテンツの表示まわりの規定をサポートするものとして、「CSS(Cascade Style Sheet) Mobile Profile」が使用できることになっている。CSS自体は通常のHTMLでおなじみのものであり、扱いに戸惑うことはなく、WAP 2.0ではCSSのレベル2が使用できることになっている。詳しいCSSの機能説明は、以降の連載で行う予定だ。 そして、CSSMobile Profileは、CSSレベル2の中からモバイル向けに必要なものを抽出したものと考えればよい。記述の方法に差異があるわけではない。インライン方式、ドキュメントスタイル方式、外部スタイル方式いずれをも使用することができるのはHTMLのときとまったく同様だ。
最後に、WML 2.0とXHTML Basicについてもきちんと述べておこう。WML 2.0は、実際にはXHTML Basicをベースに拡張を施した仕様となっており、XHTML Basicそのものではない。いくつかのモジュールには拡張が施され、またWML独自の機能として、EventsモジュールとContext and Navigationモジュールが新たに定義され、組み込まれていることに注意したい。
最大の問題点は、デファクトスタンダードからの移行体制だ。片やWebの世界では依然としてHTML 3.2/4.0が使われる今日、なかなかXHTMLにシフトしようとしているようには見受けられない。画像と入力フォームで完結された現在のWebのインターフェイスは、いったん1つの形として完結性がもたらされてしまえば、なかなか次に進むことは難しいのだ。残念ながら世界標準であることや、文法的に「正しい」とされる記述言語であること自体が直接的に利用者のメリットになるとは考えにくい現状がそこにはある。 ただしモバイルの場合、端末が頻繁に買い換えられることにより、対応ブラウザが常に最新型になる確率が高いこと(それだけ新しい仕様に対応したユーザーの確率が高くなるということ)、現在のXHTML/WML/HDML/CHTMLやブラウザがもたらすインターフェイスの表現力が必ずしも完結した形とはいい難いこと(今後3D、TABLE、フォント、スタイルシート、画像表示などの分野で従来にはない新しさが登場する可能性が高いこと)などから、まだ新しい言語・新標準へ移行しやすい土壌があるのは事実で、そうしたものに期待したい。
コンテンツ記述言語の差がなくなるということは、本当にキャリアごとに断絶されているコンテンツの世界を統一してくれるものにつながるのだろうか? ユーザーにとって、記述言語の差があることが壁となっていないことにも注目する必要がある。CHTMLであろうが、HDMLであろうが、XHTMLあろうがそれ自体が問題視されているとは考えにくい。ホームページはASPサービスで作成すれば事足りてしまうし、コンテンツ変換サービスもある。この2年間で記述言語の差によるコンテンツラインナップの差もかなりなくなってきている。誤解を恐れずにいうなら、現在ユーザーが求める仕様に対する意見といえば、せいぜい
ぐらいであるのが現実なのだ。タグの一部分を省略したり、GIFイメージを使うのではなく2バイト全角の絵文字を使った方式こそが求められている現実は、HTML仕様至上主義者からすれば到底思い付かないだろう。記述言語のXHTML化は、こうした動きとはまったく正反対の方向に動いているような気もしなくはない。 キャリアごとに使える絵文字が異なる現状はそのままであり、ユーザーから求められる絵文字を使い続ける限り、結局同一コンテンツデータのマルチキャリアアクセス対応はそもそも無理な話であると言われれば、納得しないわけにはいかない。 ということは、いまさらコンテンツを1つにする理由がどうも希薄になってきてしまったのだ。キャリアがコンテンツをひっはってきた日本においては、なおさらではないだろうか。 ただし、一方で仕様と実装は別物であることにも注目したい。CHTMLにしろ、もともとはある程度厳格な記述言語であるが、それをベースにしつつも幅広く柔軟に対応した現在のACCESSのブラウザが今日の実装状態であるし、新しく登場するWAP 2.0対応の端末かもしれない。コンテンツを作成する上でのリファレンスが1つになったぐらいにとらえるのが一番良いのかもしれない。 いずれにしても、新標準はHDMLサイドのコンテンツデベロッパーにとって大きな契機となることは間違いなく、憂うつ感も大きいが期待感はそれ以上に大きいと締めくくりたいと思う。 次回以降は開発ツールの紹介・具体的なサンプルを織り交ぜながらXHTMLを使用したコンテンツ設計について追いかけてみたいと思う。
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