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連載:[完全版]究極のC#プログラミング
Chapter5 null許容型
川俣 晶
2009/09/28 |
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5.3 null許容型の内部構造
null許容型は、実際にはNullable<T>構造体(System名前空間)の省略形である。つまり、「int?」は、「System.Nullable<int>」の短縮された表記だということである。
Nullable<T>構造体は、HasValueプロパティとValueプロパティを持っている。HasValueプロパティは、値を持っていればtrue、持っていなければ……つまり、nullならfalseになる。Valueプロパティは値を持っている場合のみ、その値そのものを提供する。
しかし、これだけでは使いにくいので、C# 3.0コンパイラは複雑な自動型変換を挿入して対処する。
たとえば、リスト5.2の「a + b」という式はいとも自然に書かれ、素直に計算できるように思える。
using System;
class Program
{
static void Main(string[] args)
{
int? a = 1;
int b = 2;
Console.WriteLine(a + b); // 出力:3
}
}
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リスト5.2 null許容型の値を加算に使った例 |
しかし、「int?」の実体は「Nullable<int>」なので、足し算の対象にはできない。足し算の対象になる整数値は“その中に入っている”のである。しかも、null許容型ということは、nullだった場合の対処も必要となる。
上記のリスト5.2をVisual Studio 2008でリリースビルド後、.NET ReflectorでC#として逆コンパイルすると何が起きているのかが見えてくる。
「a + b」の式に相当する部分は、次のようになっていた。
CS$0$0000.HasValue ? new int?(CS$0$0000.GetValueOrDefault() + CS$0$0001) : null
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つまり、まずnullであるかどうかが判定され、null値であれば計算は実行されることなく式の値はnullで確定する。そうでない場合は、内部に格納された値を使って計算されるわけである。
一方、null許容型がnullか否かの判定も実は面倒である。次のリスト5.3のコードも一見普通に書かれているように見えるがそうではない。
using System;
class Program
{
static void Main(string[] args)
{
int? a = null;
if(a == null)
{
Console.WriteLine("aはnullです。");
}
// 出力:aはnullです。
}
}
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リスト5.3 null許容型がnullか否かの判定 |
ここで、「int?」の実体はNullable<int>構造体という“構造体”なので、もちろんnullになることはありえない。この値がnullであるかの判定は、実はHasValueプロパティを使うのが正しい。しかし、「HasValue」というキーワードは、機能を適切に示す良い名前ではあるが、nullであるか否かを判定するプロパティの名前だとは直感的にわかりにくい。
そこでnull許容型では、「==」や「!=」でnullと値を比較する場合には、あたかもnull許容型の値そのものがnullであるかのように判定式を書くことが可能になっている。それが「if (a == null)」という部分の意味である。
このリスト5.3は、リスト5.2と同様に.NET Reflectorで逆コンパイルすると、次のようなコードが実際に生成されていることがわかる。
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「if (a == null)」の逆コンパイル結果 |
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