データウェアハウス最前線(2)

独自技術でシェアードナッシングの欠点を克服

吉村 哲樹
2010/11/26

新旧機種の共存機能とワークロード管理機能

 なおTeradata Data Warehouse Appliance 2580は、1つのラック(キャビネット)に前述のSMPノードを4基搭載したMMP構成になっている(2ノードの「ハーフキャビネット構成」も可能)。複数台のラックを接続して最大12ラック、46ノードまでシステムをスケールアウトさせることが可能だ。

 さらに同製品のユニークな点として、同じ機種同士を接続できるだけでなく、旧機種との接続が可能になっていることが挙げられる。しかも単に接続するだけでなく、1ノード当たりの処理能力が低い旧機種と、処理能力が高い新機種、それぞれの処理能力を考慮して、自動的に処理負荷を分散できるのだ。この機能は、無駄なコストを抑えて効率の良いIT投資のために非常に役立つと丹氏は強調する。

 「旧機種で構築したシステムに最新機種を増設してスケールアップできるため、新しいハードウェアに入れ替えることなく、過去のIT投資を有効に生かしながらシステムを拡張していける」(丹氏)

 また、Teradata Data Warehouse Appliance 2580が備えるもう1つのユニークな機能に、「ワークロード管理機能」という機能がある。これは一言で言えば、処理に優先順位を付けられるというものだ。

 DWHを導入し、その活用が進んでいくと、さまざまな種類の処理を実行させることになる。典型的なBIの処理だけでなく、ダッシュボードや従業員ポータル、レポーティングなど、多種多様な処理の要求がDWHに続々届くようになる。また、データをよりリアルタイムに分析したいというニーズが出てくれば、日中でもDWHにデータをロードする処理が定期的に発生する。

 これらさまざまな処理は、それぞれの負荷や、求められる処理速度が異なる。例えば、経営戦略の策定に役立てるための分析やデータマイニングの処理は、負荷はさほど高くないが、高速に処理できなければならない。反対に、DWHにデータをロードするバッチ処理は、高い負荷がかかるが、短時間で処理が終了することは求められない。そして、もしデータをロードするバッチ処理がシステムリソースを占有してしまい、ほかの処理要求に対する反応速度が低下してしまうようでは、システムを効果的に利用できているとは言いにくい。

 そこでTeradata Data Warehouse Appliance 2580のワークロード管理機能を使うと、処理の優先度を4段階で設定できるようになり、優先度が高い処理が優先的に処理されるようになる。例えば、データ分析処理の優先度を高くし、バッチ処理の優先度を低くしておけば、たとえ重いバッチ処理を実行していても、データ分析処理が優先的に処理され、ユーザーに要求に素早く反応できる。丹氏は、こうした仕組みを車と道路に例えて次のように説明する。

 「Teradataデータベースが道路で、SQL要求が車だと考えると、ワークロード管理をしていない状態ではまったく交通整理が行われていないので、遅い車が邪魔になって速い車が先に進めない。ここで車線と信号を設けて、きちんと交通整理をして速い車が先に進めるようにするのがワークロード管理機能ということになる」

自動チューニング機能で管理作業を簡素化

 また、運用管理の負荷軽減と作業自動化の機能を豊富に備えているのも同製品の大きな特徴だ。多くのチューニング作業が自動化されており、インデックスの再構築やパーティションの再設定など、通常のデータベース運用において多くの手間が掛かる作業が不要になっている。

Teradata
日本テラデータのデータウェアハウスアプライアンス「Teradata Data Warehouse Appliance 2580」

 また、一般にシェアードナッシング方式のウィークポイントといわれるディスク増設の作業や、データを分割して複数のディスク領域に格納する処理も、ハッシュ分散と呼ばれる方式を採用することによりほぼ自動で行われ、特別な設定・チューニング作業は一切不要だ。

 さらに、Teradata Data Warehouse Appliance 2580から上位機種への移行もスムーズにできるという。

 「テラデータの各製品間では同じデータモデル、同じクエリ、同じデータロードプログラムが利用できるので、DWHを異なるモデルに簡単に移行できる。そのため、まずは小規模なDWH環境から始めて、徐々に大規模なEDW環境に移行していくシナリオも描きやすい」(丹氏)

 Teradata Data Warehouse Appliance 2580の製品価格は、最小構成時(ディスク容量2Tbytes)で5640万円(税別)からとなっている。

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独自技術でシェアードナッシングの欠点を克服
Page 1
全世界でおよそ1000社もの導入実績を誇る
MPPシステム構成で実現するシェアードナッシング
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新旧機種の共存機能とワークロード管理機能
自動チューニング機能で管理作業を簡素化
【筆者プロフィール】
吉村 哲樹(よしむら てつき) 早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。 その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。



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