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フィジカルAI(Physical AI)とは?AI・機械学習の用語辞典

センサーやデータを通じて現実世界を認識、理解し、それに基づいて行動するAIのこと。ロボットや自動運転車など、物理的な環境の中で自律的に動く機械の頭脳として注目されている。特にNVIDIAや学術分野で関心が高まっており、今後は社会での実用が本格化すると見込まれている。

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用語解説

 フィジカルAIPhysical AI)とは、「センサー(例:カメラなど)やデータを通じて物理的(フィジカル)な現実世界を認識、理解し、それに基づいて行動すること」を目的とするAI(人工知能)のこと、またはその学術分野を指す。これにより、ロボット(例:工場のアームロボットなど)や自動運転車などの自律マシンの実現が期待されている(図1)。

図1 フィジカルAIのイメージ
図1 フィジカルAIのイメージ

 このコンセプトは、特にNVIDIAが重要な自社戦略の一つに位置付けており、具体的にはフィジカルAI開発などを支援するプラットフォーム「Omniverse」や、事前学習された世界基盤モデル「Cosmos」などを提供している。これらの技術には生成AIの要素も含まれることから、生成フィジカルAIGenerative Physical AI)とも呼ばれている。

 また、生成AIとロボティクス、物理シミュレーション技術を統合した次世代のAI像として、政治/経済/学術の各分野でも近年、注目が急速に高まりつつある。具体的には2025年6月に内閣府で開催された「AI戦略会議」で言及された他、東京大学の松尾・岩澤研究室(松尾研)で「Physical AI:知能ロボティクス講座(2025年春)」が開講されている。

 フィジカルAIは、「現実の環境でどのように動くべきか」を習得するために、まずは仮想空間の中で訓練されるのが一般的だ。その際、工場や街のような空間がコンピュータ上に再現され、そこにロボットやセンサーを登場させて、動きやぶつかり方、光の反射といった物理現象も再現される。この“仮想の世界”を使って、AIは物体の位置関係や力のかかり方など、現実に即した判断や動作を学習していく。まるでシミュレーションゲームの中で何千回も練習するように、AIは物理世界に関する感覚と行動のルールを身に付けていくわけである。

 このような環境で用いられる機械学習の代表的な学習手法の一つが「強化学習」である。これは、AIがシミュレーション内で何度も試行錯誤を行い、適切な行動を取った際に報酬を得ることで、徐々に行動方針を改善していく仕組みである。現実では難しい繰り返し訓練も、仮想空間なら安全かつ高速に実施できるため、AIは(例えば)数千〜数百万回にも及ぶ反復的な訓練を通じて、環境への適応力を高めていくことができる。

 実際に訓練されたフィジカルAIは、さまざまな場面での実践活用が期待されている。例えば、

  • 倉庫内を自律的に移動して荷物を運ぶ搬送ロボット
  • 物体の形や素材に応じて“つかみ方”を変えられる作業用ロボット
  • 外科手術の現場で細かな手の動きを再現する支援ロボット
  • 交通状況や天候に応じて判断を行う自動運転車

などである。こうした高度な制御と判断を支える技術として、フィジカルAIはまさに“動くAI”の基盤となり、これからの産業や社会のあらゆる場面で重要な役割を担っていくと考えられる。

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