データ/アナリティクスのリーダーがステークホルダーのエンゲージメントを成功させるための3つのステップ:Gartner Insights Pickup(409)
データ/アナリティクス(D&A)戦略の成功には「人」――つまり、ステークホルダーの関与が欠かせない。しかし、ステークホルダーマネジメントはしばしば軽視され、CDAO(最高データ/アナリティクス責任者)は十分な支援を得られずに苦慮している。D&Aの価値を組織全体に浸透させるには、関係者を正しく特定・分類し、優先順位を付けた上で、持続可能なエンゲージメントを計画的に構築・管理する必要がある。本稿では、D&A戦略におけるステークホルダーマネジメントの重要性と、その実践手法を解説する。
ステークホルダーマネジメントは、軽視されたり見過ごされたりしがちだ。だが、データ/アナリティクス(D&A)の成功を妨げる最大の要因の一つは「人」だ。
ガバナンスプログラムは、データスチュワード(※)が非協力的なために頓挫する場合が多く、データガバナンス委員会への参加意欲も時間とともに薄れてしまう。このため、最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)や他のD&Aリーダーは、ステークホルダーからのエンゲージメントやサポートが不十分なことに不満を募らせている。
Gartnerの「2025 CDAO Agenda」(CDAOアジェンダ2025)調査によると、ステークホルダーマネジメントを優先事項として挙げている回答者は、5人に1人にすぎない。このことは、「ステークホルダーエンゲージメントを計画する必要はなく、D&Aの価値は自明である」という誤った思い込みを浮き彫りにしている。
測定可能なビジネス価値の証明を求める圧力が高まる中、組織の垣根を超えたステークホルダーの強固な協力がなければ、D&Aの成功を脅かす重大なリスクとなる。この課題を克服するため、CDAOはステークホルダーを特定、分類し、優先順位を付け、ステークホルダーの生産的なエンゲージメントと影響力を高める必要がある。
ステークホルダーマネジメントをD&Aの戦略計画に統合する
CDAOは、ステークホルダーエンゲージメントに対する受け身のアプローチから脱却し、ステークホルダーマネジメントをD&A戦略計画の中核要素とすることで、人的な課題に対処するための積極的な戦略を採用しなければならない。これにより、関連する全てのステークホルダーが考慮され、優先順位を付けられ、持続可能なエンゲージメントの強固な基盤が得られる。
CDAOは、測定可能なビジネス成果を通じてD&Aの価値を証明しなければならないという圧力の高まりに直面している。これを受け、強固なD&A戦略により「ビジネスの目的は何か」(なぜビジネスをするのか)と、「D&Aは組織の目標をどのように支援するのか」を明確に示さなければならない。
建設的なステークホルダーエンゲージメントを促進するための次のステップは、D&Aが支援する共通の優先目標にステークホルダーのベクトルを合わせることだ。この意識共有により、価値に関するステークホルダーとの対話が始まり、目指す目標の達成に不可欠なステークホルダーとのエンゲージメントが深まり、つながりが強まる。
多くのCDAOは「D&Aの価値は自明である」、あるいは「データ品質の改善やデータ管理の生産性向上と、ビジネスケースの整合性を確保すれば十分である」と誤解している。だが、こうした指標自体は、ステークホルダーのエンゲージメントや意欲を喚起しない。これらの指標とビジネス価値の関連を効果的に伝えなければ、CDAOは自らの取り組みが認められたり、ステークホルダーから感謝されたりすることは望めない。「D&Aに何を期待できるか」を言葉で伝えないと、ステークホルダーが「期待に届いていない」と感じた場合、双方が不満と幻滅を抱く恐れがある。
ステークホルダーに優先順位を付け、成功に最も重要な人物を特定する
CDAOとD&Aリーダーは、支持者の堅固なネットワークを意図的に醸成する必要がある。これは、相互に有益な成果を生み出すネットワークを構築、維持する明確な戦略の下で行わなければならない。よくある課題として、真のステークホルダーを特定し、2つの中核グループに分類することが挙げられる。
- ビジネス目標を共有するステークホルダー(最新のD&A戦略はビジネス目標と整合している)
- 成功に広範な影響を与えるステークホルダー
D&A戦略で目指すビジネス成果について合意に達したら、ステークホルダーマッピングを通じて、利害関係のあるステークホルダーを特定し、優先順位を付けられる。このグループは、戦略の範囲によって時間とともに変化する。CDAOとD&Aリーダーは、直感的に好ましいと感じる人物ではなく、ステークホルダーとして特定された人物を、取り組みに巻き込むことに注力しなければならない。
D&Aリーダーは、特定したステークホルダーをステークホルダーマップ上にプロットすることで、最も大きな成果が得られる分野で強固な協力関係を積極的に築くことに力を入れる必要がある。よく練られたステークホルダーマネジメント計画も、対象者を間違えると、望んだ結果を得たりリスクを軽減したりすることができず、努力が水の泡になってしまう。
ステークホルダーの支持レベルを評価、管理する
最終目標は、継続的な改善プロセスとして重要な関係を育成することで、ステークホルダーからの一貫したレベルの影響力を確立することにある。ステークホルダーマップは重要人物を特定するが、個々の人物の支持レベルや影響力の現状と期待値は考慮していない。
D&Aリーダーはステークホルダー支援マトリックスを使用して、ステークホルダーをその姿勢と影響力に基づいて、セグメント化する必要がある。このマトリックスは、特定の時点において重点の置き方とエンゲージメントの戦術を導き出すのに役立つ。個々のステークホルダーについて、姿勢と影響力を踏まえ、どのようなエンゲージメントを得たいかを明確にすべきだ。
影響力のある支持者は最大の味方になる。D&Aの目標を後押ししてくれる上、批判者にも影響を与える可能性がある。ステークホルダーエンゲージメント計画に基づいて、影響力のある支持者を育成し、巻き込み、意見を求めるとよい。
影響力が弱い支持者も見過ごしてはならない。影響力は変化する可能性があるからだ。こうした支持者に自分たちが解決策の一部だと感じさせ、労に報いることで、エンゲージメントの維持につなげる。
影響力のある批判者は、その意見がD&Aの取り組みを頓挫させることがあり、最大のリスク要因だ。こうした批判者が何に反発し、何を重要視しているかを理解し、影響力のある支持者の力を借りて、批判者の影響を中和する計画を立てる必要がある。
ただし、批判者の説得に時間を費やし過ぎてはならない。労力をかけるほど、否定的な姿勢が強まる可能性があるからだ。
出典:Successful Stakeholder Engagement for D&A Leaders in Three Steps(Gartner)
※この記事は、2025年5月に執筆されたものです。
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