VMwareのバージョン9が提供開始、VCFへの完全集約は近いのか:2つのポータルに集約
BroadcomがVMware新バージョン「VMware Cloud Foundation 9.0」の一般提供を開始した。「作りたいと思っていたものをようやく作ることができた」とする。一方で、製品エディションの集約を示唆する動きも見られる。
Broadcomは2025年6月17日(米国時間)、VMware新バージョン「VMware Cloud Foundation 9.0」(以下、VCF 9)の一般提供を開始した。BroadcomによるVMwareの買収後、初のメジャーバージョンリリースとなる。日本法人はこれについて6月20日に説明した。
VMwareは同社の中核といえる仮想化ソフトウェアをこれまで「VMware vSphere」と呼び、Version 8 Update 3まで更新してきた。だが、今後はvSphereのバージョンを語ることはない。理由は、vSphereが独立した製品ではなく、パッケージ(エディション)の一機能になったことにあるという。今後は、エディションに含まれる機能全てを対象としたバージョン番号付けとなる。
Enterprise Plusは非(未)対応、VCFへの集約がまた一歩進む
Broadcomは紆余曲折を経て、最近では下記4つのエディションを提供してきた。
- VMware vSphere Standard
- VMware vSphere Enterprise Plus
- VMware vSphere Foundation(VVF)
- VMware Cloud Foundation(VCF)
このうちvSphere Standardについては、2025年4月11日をもってアジア太平洋/日本地域での販売が終了した。従って日本のユーザーが現時点で購入できるのは、Enterprise Plus、VVF、VCFの3エディションだ。このうちEnterprise Plusについては9へのバージョンアップを提供しない。
この資料(PDF)では、「vSphere StandardおよびvSphere Enterprise PlusについてはVersion 8 Update 3リリースまでしか提供していない。現時点で、vSphere 9.0の機能はVMware vSphere Foundation 9.0あるいはVMware Cloud Foundation 9.0の一部としてしか入手できない」と説明している。
「現時点で(currently)」という言葉が入っているため、将来における対応の可能性を完全には否定できないが、現時点ではバージョンアップを期待してEnterprise Plusを購入できないことになる。
また、BroadcomはVVFとVCFでバージョン9を提供するが、今回のプレスリリースはVCF 9のみを説明する内容であり、VVFの名前は一度も出てこない。
[2025/06/27 10:58]
初出記事では「本社のVMwareサイトを探しても、VVFのバージョン9を説明した記事は見つからない」としていましたが、下記のブログポストがあるとのご指摘を受けました。誤認をお詫びして訂正します。
Announcing VMware vSphere Foundation 9.0 Smarter Operations, Better Performance, Stronger Security
統合管理をようやく実現
では、“全部入り”の最上位エディションであるVCFの新バージョンは何が新しいのか。「作りたいと思っていたものをようやく作ることができた」と日本法人は説明する。
VMwareは、長年にわたり企業の統合的なITインフラ基盤となることを目指し、段階的にカバー範囲を広げてきた。サーバに始まりストレージ、ネットワーク、セキュリティ、コンテナ、マルチクラウド、それらを構成するさまざまな要素のプロビジョニングやモニタリングなどだ。
だが、その過程で各種ツールの組み合わせが複雑化し、使いにくいものになっていた。特に管理コンソールが複数に分かれ、誰がどのコンソールを使って何をどうやればいいのかが分かりにくいのが大きな課題だ。
そこでVCF 9では管理・運用インタフェースの統合を図ったという。
具体的には、管理インタフェースを運用部門向けの「VCF Operations」、ユーザー/開発チーム向けの「VCF Automation」の2つのポータルに集約した。
これでIT部門がインフラの安定性やセキュリティを確保する作業を効率化できる。一方、ユーザー/開発チームはこれを前提としながらも、IT部門に邪魔をされずに、ITリソースをクラウドライクに使えるようになったのだという。仮想マシンとコンテナを混在させたアプリケーション構築も容易だとする。
Broadcomは「企業IT全体を仮想化することが目的」だと話すが、確かに他のエディションを9にアップグレードできたとしても、これは管理ツールを網羅するVCFでしかできない。
VDF 9には、VMwareのコア機能に近いところでも目立つ新機能がある。例えば仮想GPUを使う仮想マシンのvMotionが2秒以下でできるようになった。また、NVMeストレージメモリでDRAMを補完できる「Memory Tiering」機能が正式に提供開始となった。vSANではディスクグループ単位ではなく、クラスタ全体で重複排除ができるようになった。
[2025/06/25 10:50]
「Broadcomは『企業IT全体を仮想化することが目的』と話すが、確かに他のエディションを9にアップグレードできたとしても、これは管理ツールを網羅するVCFでしかできない。」の一文を追加しました
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