持続可能なITインフラのビジネス価値を引き出すには:Gartner Insights Pickup(403)
規制圧力の増大やエネルギー価格の高騰に伴い、企業はサステナビリティ(持続可能性)戦略と技術投資を見直す必要がある。持続可能性は企業のあらゆる側面に関わるため、ITインフラにいつ、どのように投資するかは重要なビジネス判断だ。インフラとオペレーション(I&O)のリーダーは持続可能性への取り組みがもたらすビジネス価値を証明しなければならない。
規制圧力の増大やエネルギー価格の高騰に伴い、企業は持続可能性戦略と技術投資を早急に見直す必要に迫られている。
Gartnerの調査によると、アジア太平洋地域のCEOの79%が、持続可能性への取り組みをビジネス成長の主要な機会と捉えている。環境の持続可能性は、CEOが長期戦略を転換する際に、競争の枠組みを左右する要因の一つであり続けている。
持続可能性は企業のあらゆる側面に関わるため、持続可能なITインフラにいつ、どのように投資するかを決めることは、重要なビジネス判断だ。
持続可能なデータセンターやクラウドサービスの環境上の利点は明らかだが、ビジネス上の利点は過小評価されがちだ。持続可能性への取り組みは、二酸化炭素排出量の削減や廃棄物の最小化など、環境影響の観点から行われる場合が多い。
インフラとオペレーション(I&O)のリーダーは持続可能性に取り組み、期待に応えるだけでなく、この取り組みがもたらすビジネス価値を証明しなければならない。
持続可能なITの価値を最大限に引き出すには、マインドセットを変える必要がある。I&Oリーダーはそのために、持続可能性戦略を主要なビジネス成果と整合させ、環境目標を超えた取り組みが求められる。
持続可能なITの間接的な効果(コスト削減、イノベーション、リスク管理など)を認識することは、持続可能なITを、競争優位とビジネスレジリエンス(回復力)の基盤として位置付けるのに役立つ。また、この認識を踏まえ、業績に直接影響を与える方法で進捗(しんちょく)を測定することで、持続可能性の成功に対する明確な指標を提供する。
価値の最大化と廃棄物の最小化
環境と予算の両方に貢献するためにI&Oリーダーにできる効果的な行動は、新しい機器の購入を先送りし、既存資産を適切に管理、最適化、または再配置することだ。
その一つの方法は、IT機器のライフサイクル基準をベンダーのサポート期間に応じて最長期間に設定し、パフォーマンス上必要な場合にのみ短縮することだ。Gartnerの調査によると、企業がデバイスの寿命を延ばすことで、電子廃棄物を減らせるだけでなく、最大40%のコスト削減も達成できる。
こうした方法は、持続可能な慣行の受け入れが広がっている従業員向けの技術にも適用できる。Gartnerの調査によると、従業員の75%は、自社の持続可能性目標の達成に役立つのであれば、リファービッシュ(メーカー再生品)デバイスの利用をいとわないと回答している。
データセンターも、既存のサーバやストレージ資産を適切に管理することで、廃棄物を減らし、コストを節約できる主要な分野だ。多くの企業では、サーバの使用率は大抵50%を下回り、時には20%程度にとどまっている。パフォーマンス管理およびイベント管理ソリューションを使用して、データセンターインフラの使用率と効率を監視し、これらの資産の最適化に役立てられる。
イノベーションの絶好の機会
Gartnerは、2027年までに既存のAIデータセンターの40%が、電力供給問題により、運用上の制約に直面すると予測している。そのため、持続可能性戦略の見直しが重要になる。この課題は、I&Oリーダーがイノベーションや新たな成長機会の開拓、新しい技術やビジネスモデルの導入を主導する絶好の機会を提供する。
例えば、ITインフラ全体でデータを収集するためのオープンな業界標準を提供するOpenTelemetryプラットフォームの導入を検討すべきだ。OpenTelemetryプラットフォームは、エネルギー効率を追跡し、改善する。また、ITチームがデータの使用パターンを理解するための重要な洞察も提供する。データの使用パターンを理解して最適化することで、より一貫した優れたシステムパフォーマンスが得られる。
液体冷却技術や液浸冷却技術の導入も、電力制約の影響の軽減、効率の改善、廃熱の再利用、冷却コストおよびパフォーマンスの一貫性の向上につながる。
長期的なビジネスレジリエンスの構築
持続可能で長期にわたって稼働する効率的なITは、最も重要な利点の一つを提供する。それはビジネスレジリエンスだ。
企業のITエコシステムは根本的に、天然資源の消費と世界の産業の安定性に依存している。そのため、I&Oリーダーがエネルギーコストの変動による混乱や、サプライチェーンとESG(環境、社会、ガバナンス)の要件が頻繁に変化することによる混乱を考慮して、持続可能性戦略を策定することが重要だ。
自社がこれらの混乱を回避し、ビジネスレジリエンスを維持できるように、I&Oリーダーは持続可能なリサイクルと資源利用の実践を推進すべきだ。これには、レイテンシに敏感でないワークロードのホスティング先として低炭素地域を選択することや、水力発電などの再生可能エネルギーや化石燃料の利用を最大化することなどが含まれる。
出典:Unlocking business benefits with sustainable IT infrastructure(Gartner)
※この記事は、2025年3月に執筆されたものです。
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