データセンターの持続可能性向上に向けた重要指標:Gartner Insights Pickup(401)
デジタル需要が増加しデータセンターの拡大が進む中、持続可能性が課題となっている。電力消費、環境対策、厳格な規制など、データセンター運用における徹底的な見直しが求められている。本稿では、インフラとオペレーション(I&O)のリーダーが活用すべき指標について解説する。
増大するデジタル需要に対応するためにデータセンターの拡大が進む中、サステナビリティ(持続可能性)が喫緊の課題として浮上している。
国際エネルギー機関(IEA)の2024年のレポートによると、2022年に460テラワット時(TWh)だった世界のデータセンターの電力消費量は、2026年までに1000TWhを超える見通しだ。電力消費の急増に加え、環境対策への期待の高まりと厳格な規制により、データセンター運用の徹底的な見直しが必要となっている。
企業は現在、電力効率と水資源保全を最優先し、データセンター施設の電源供給、冷却、維持管理による環境影響を最小限に抑える必要に迫られている。従来は「電力使用効率」(PUE)が効率評価の主要な指標だった。だが、PUEは、データセンターの環境性能全体を捉えるには不十分だ。
このギャップに対処するため、インフラとオペレーション(I&O)のリーダーには、「水使用効率」(WUE)、「炭素使用効率」(CUE)、「再生可能エネルギー係数」(REF)、「エネルギー再利用効率」(ERE)など、より広範な持続可能性指標を採用することが推奨される。これらの指標は、電力使用、水消費、炭素強度の複雑な相互依存関係を考慮している。
これらの指標を日常業務と長期戦略計画に統合することで、I&Oリーダーは、自社の生態系への影響を包括的に理解できる。このアプローチは継続的な改善を促進するだけでなく、進化する規制や持続可能なITインフラに対するステークホルダーの期待に沿ったものとなる。
指標に基づく統合管理を実践
指標に基づく統合管理は、詳細な洞察を提供するだけでなく、持続可能性指標をダッシュボードやレポートプラットフォームに一元化し、データセンター管理者、施設、IT運用、持続可能性チームのコラボレーションを促進する。
この統一的なアプローチにより、情報に基づいた迅速な意思決定ができる。例えば、炭素集約型の電力網への依存によってCUE指標が上昇した場合、リーダーは電力供給契約の再交渉や、現場での再生可能エネルギー源の追加といった対策を迅速に実施できる。
同様に、WUE指標が上昇したら、運用チームはより効率的な水再利用技術や冷却技術を検討できる。これらの指標を連携させることで、I&Oリーダーはリソース消費の最適化と運用パフォーマンスの向上を実現する戦略的な意思決定を下し、規制順守を確保するとともに、持続可能な業務運営に対するステークホルダーの期待を満たせる。
指標の品質の継続的な向上を追求
多くのI&Oリーダーが指標を活用しているが、これらの指標が品質的に、継続的なインフラ最適化を可能にする信頼できる測定結果を常に提供し続けるとは限らない。インフラ効率化の将来の進捗(しんちょく)を測定するために必要な指標は、現在使われている指標とは異なる可能性がある。効果的で実用的な指標を見極めることは、継続的な努力と規律を必要とする継続的なプロセスだ。
これらの目標を達成するには、データセンター指標を開発する際に包括的に詳細を網羅し、指標とその目的を定期的な(指標の種類に応じて四半期ごとや半年ごとなどに)見直しが推奨される。
出典:Key Performance Metrics to Improve Data Center Sustainability(Gartner)
※この記事は、2025年3月に執筆されたものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.