生成AI時代は「Visual Studio Code」一択ではない? 注目の次世代コードエディタとは RedMonk:LLMの台頭は「全ての開発者ワークフロー」を再考する機会に
「開発者体験の最前線を走るMicrosoftだが、AI技術の進化は新たな波を生み出している」――調査会社のRedMonkは、LLMの台頭がコードエディタに及ぼしているトレンドの変化や、開発者が注目する次世代コードエディタに関する見解を発表した。
調査会社のRedMonkは2025年2月21日(米国時間)、LLM(大規模言語モデル)の台頭がコードエディタに及ぼしているトレンドの変化や、開発者の間で注目されている次世代コードエディタに関する見解を発表した。
RedMonkは「LLMやAI(人工知能)の普及/イノベーションには、誰一人として無縁ではいられない」とした上で、「『Visual Studio Code(以後、VS Code)』や、GitHubの買収、OpenAIとの密接なパートナーシップを通じて、開発者体験のリーダーとしての地位を確立したMicrosoftも、その例外ではない」との見解を示している。
「『ChatGPT』発表以降、AIの代名詞となったOpenAIですら、競争優位を維持することが容易ではないと痛感するに至っている。コード生成の観点で、2024年はAnthropicの年だった。同社のLLMである『Claude』は各種ベンチマークで圧倒的な成績を収めており、開発者からも高く評価されている。2024年10月にはGitHubが、Copilotを通じてClaudeをはじめとする複数のLLMをサポートすると発表した。Anthropicがコード生成で開発者支援を強化する中、同年12月にはMicrosoftが『GitHub Copilotを全てのVS Codeユーザーに無料提供する』と発表した。このように、コード生成を巡るサービス競争は激化し、変化が激しい状況だ」(RedMonk)
開発者体験のリーダーであるMicrosoftを追う、2つの次世代コードエディタとは
2015年4月にリリースされたVS Codeは、2020年代初頭には事実上の業界標準となっていた。だが今、新たなAIファーストのエディタが、ほぼ毎日のように、あるいは少なくともそう感じるほどの頻度で次々と登場していると、RedMonkは指摘する。
「新世代のWebプログラマーが台頭する中、優れた言語サポート、IntelliSense、デバッグ機能を兼ね備えたVS Codeは一気に普及した。VS Codeは『ちょうどいい』存在であり、重過ぎず軽過ぎず、理想的なバランスを備えていたためだ。エディタとして十分に軽量でありながら、IDE(統合開発環境)のように機能が充実している」(Redmonk)
RedMonkは「LLMの登場により、インナーループ(コーディング、思考、問題解決といった主にローカルでの作業)とアウターループ(デプロイや本番環境でのアプリ管理など、通常はクラウドベースのサービス)の両方を含む、全ての開発者ワークフローを再考する機会が生まれている」とした上で、開発者の間で注目されている次世代コードエディタと、その理由を次のように挙げている。
Cursor
次世代コードエディタとして最も注目を集めたのは間違いなく「Cursor」だ。
Cursorは、AI最適化が施されたVS Codeのフォークだ。CursorはAIベースのワークフローを見事に実現している。エディタ内のAIエージェントが開発者の作業を監視し、開発者に代わってLLMに質問し、手元のタスクのモデルを効果的に構築し、開発者がそれを活用できるようにしている。
LLMが注目された当初、開発者は自身の好きなエディタを使いながら、別のコンテキストに切り替えて、質問を投げかけ、コードを生成させ、それについて議論し、より良いものを考え出し、それをエディタに貼り付ける、というワークフローが一般的だった。
だが開発者が求めていたのは、作業中のファイルだけでなく、コードベース全体を理解した上で、コードを生成するツールだ。Cursorは、まるで開発者とその意図を理解し、注意を払っていると感じられるように、パッケージとして提供しているのだ。
Windsurf Editor
Cursorもこの現状に甘んじてはいられない。2024年には大成功を収めたが、2024年末には開発者たちが次なる新星、Codeiumの「Windsurf Editor」を絶賛し始めていた。Windsurfはコンテキスト理解に優れており、非常に洗練されたデザインを備えている。
Cursorと同様、Windsurfの開発チームも、エンドツーエンドの体験を最良の形で管理する方法として、VS Codeをフォークしている。この判断は、今後ますます重要性を増すだろう。
エディタ以外の選択肢
VS Codeのフォークにあまり関心がなく、VS Codeや「JetBrains」を使い続けたいと考えるユーザーには「Augment Code」「Cody」「Continue」といった多数のAIアシスタント系プラグインが選択肢となる。
Augment Codeは、開発者が問題に取り組み、変更を加えると、他の箇所、たとえ異なる言語で書かれている部分であっても、同様に変更が必要な箇所を特定するなど、オートコンプリートを強化するプラグインだ。
「次世代コードエディタはまだ完成していない」
一方でRedMonkは、次世代コードエディタについて「完成には程遠く、始まったばかりでもある」と評価している。
「Copilot拡張を備えたVS Codeは圧倒的な勢いを持ち、Microsoftの営業力が全面的にそれを支えている。2024年末の『GitHub Universe』での発表を振り返ってみても、GitHubが劣勢に立たされているというわけではない。とはいえ、Cursorが挑戦者であることを、Microsoftは確実に認識している」とした上で、「テクノロジー分野での成功とは、技術や機能をどう魅力的にパッケージングし、常にユーザーに届けられるかどうかにかかっている。最前線のLLM、開発者体験に特化したエディタ、特定領域向けのコードアシスタント――まさに刺激的な時代が到来している」と、結論付けている。
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