ツールベンダーが開発者を引きつけるには、何が必要なのか? 開発ツールの導入動機、評価項目などを調査:価格/料金モデルの選好も明らかに
SlashDataは公式ブログで、最近発表した開発ツールベンダー向け調査レポート「Pricing Strategies for Developer Tools」の中から、開発者調査結果の一部を取り上げて解説した。
調査会社のSlashDataは2024年2月15日(米国時間)に公式ブログで、最近発表した開発ツールベンダー向けの調査レポート「Pricing Strategies for Developer Tools」(開発ツールの価格戦略)の中から、開発者調査結果の一部を取り上げて解説した。
取り上げた調査結果は、開発者が「開発ツールを導入する主な動機」「新しいツールを評価する際に重視する要素」「ツールの無料プランの利用を中止した理由」「ツールの無料プラン/トライアルから有料プランにアップグレードした動機」「ツールの有料版を選択したり、それにアップグレードしたりする際に考慮する価格要因」に関するものだ。
開発者がツールを導入、評価する際に重視する要素
開発者が開発ツールを導入する主な動機について見ると、過半数(56%)が「生産性の向上」を挙げ、大差がついているものの、「コード品質の向上」(13%)、「パフォーマンスの向上」(7%)が続いている。
SlashDataは、開発ツールやサービスのベンダーは、自社製品がいかに生産性を高めるかを前面に押し出して製品や対外コミュニケーションを展開することで、効果的に開発者の注目を集めることができると述べている。
新しいツールを評価する際に重視する要素としては、「利用可能な機能」を挙げた開発者が31%と最も多く、「高品質なドキュメント」(25%)がこれに次いで多かった。「無料プランを利用できる」(23%)がわずかな差で続き、「無料トライアルを利用できる」を挙げた回答者も18%に達した。
SlashDataは、「無料プランやトライアルは、開発者がツールをテストし、要件に合っているかどうかを判断する上で重要だ。このオプションを用意しないベンダーの製品は、見過ごされやすい」と指摘している。
またSlashDataは、開発者の21%が「価格の透明性」を挙げていることから、「ベンダーは、ツールの価格や料金の設定を分かりやすくすべきだ。費用の予測可能性を確保し、隠れたコストが発生しないようにする必要がある」とも指摘している。
無料プランに求められる微妙なバランス
過去1年間に開発ツールの無料プランの利用を中止した開発者に、中止した理由を尋ねた質問では、回答者の34%が「機能の制限」、33%が「使用量の制限」(1時間当たりのAPIリクエスト数など)を挙げている。
一方、開発ツールの無料プラン/トライアルから有料プランにアップグレードした経験のある開発者に、アップグレードした動機を尋ねた質問では、44%が「高度な機能へのアクセス」、31%が「使用量の上限の引き上げや解除」を挙げている。
ツールベンダーが開発者を引きつけるには、機能を充実させて無料プランの競争力を高める必要がある。だが、無料プランの機能があまりにも多いと、無料ユーザーから有料ユーザーへの転換が停滞してしまう。ベンダーが無料プランによる販売促進を成功させる鍵は、提供機能について適切なバランスを見つけることだと、SlashDataは述べている。
開発者がツールの選択やアップグレードで考慮する価格要因
開発者がツールの有料版を選択したり、それにアップグレードしたりする際に考慮する価格要因について尋ねた質問では、「価格モデル/料金体系」を挙げた回答者が多かった(49%)。
また、それぞれ開発者の約3人に1人が「ベンダーの評判と信頼性」(36%)、「総所有コスト(TCO)」(33%)、「適切な価格階層」(32%)を挙げている。
SlashDataは、最も多くの開発者が挙げた考慮事項である「価格モデル/料金体系」について掘り下げた調査結果も紹介した。その概要は以下の通り。
- 開発者が好む「価格モデル/料金体系」については、首位が「サブスクリプションベースの価格」(53%)で、「買い切り」(39%)、「従量課金」(34%)がこれに続き、「シート単位のライセンシング」(21%)、「機能単位の支払い」(13%)を挙げた回答者は少ない
- 価格モデルの好みはツールによって異なる。クラウドサービスについては、開発者の53%が「従量課金」を好むが、統合開発環境(IDE)やテキストエディタについては、44%が「買い切り」を好んでいる
- サブスクリプションモデルで月額課金を好む開発者が43%、年額課金を好む開発者が35%。大企業の開発者は月額課金を好む傾向が高く、小規模企業の開発者は年額課金を好む傾向が高い
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