大企業でのAI導入、用途の2位は「セキュリティと脅威検出」1位は?:「積極的に導入、検討する」企業が世界中で4割まで増加
IBMは、世界20カ国の企業におけるAIの導入状況に関する調査結果を発表した。
IBMは2024年1月10日(米国時間)、世界20カ国の企業におけるAI(人工知能)の導入状況に関する調査結果を発表した。
調査対象の大企業(従業員数1000人以上)では、42%がAIを積極的に導入しており、40%がAIの利用を積極的に検討していることが分かった。AIを導入または検討している大企業の59%が、この2年間にAI投資や導入を加速している。
一方、適切なスキルセットを持つ従業員の雇用、データの複雑さ、倫理的な懸念といった課題が、依然として企業におけるAI導入の妨げとなっている。
この調査はIBMの委託を受けて、Morning Consultが2023年11月、IT担当者8584人の代表サンプルを対象に実施した。これらのIT担当者は、「従業員が1人以上の企業の正社員であり、マネジャー以上の役職に就いている」などの条件で調査に参加した。居住国はオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、シンガポール、韓国、スペイン、UAE(アラブ首長国連邦)、英国、米国、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルーだ。
IBMは、調査結果のハイライトとして以下を挙げている。
ここ数年、大企業ではAI導入が着実に進行
大企業のIT担当者の42%がAIを積極的に導入していると回答し、40%がAI利用を積極的に検討していると回答した。
大企業のIT担当者の38%が、自社が生成AIを積極的に導入していると回答し、42%が導入を検討していると回答した。
AIを積極的に利用している企業の割合が多い国は、インド(59%)、UAE(58%)、シンガポール(53%)、中国(50%)など。少ない国は、スペイン(28%)、オーストラリア(29%)、フランス(26%)など。
AIを利用している割合が最も高い業種は金融サービスで、IT担当者の約半数が、自社はAIを積極的に導入していると回答。通信業界もIT担当者の37%が、自社はAIを導入していると回答した。
AIを積極的に導入または検討している企業の過半数が、過去24カ月にAI投資や導入を推進
AIを導入または検討している企業のIT担当者の59%が、自社は過去24カ月にAI投資や導入を加速したと回答した。
AI導入を推進している企業の割合が多い国は、中国(85%)、インド(74%)、UAE(72%)など。少ない国は、英国(40%)、オーストラリア(38%)、カナダ(35%)など。
AIを検討または導入している企業におけるAI投資分野の上位は、研究開発(44%)、リスキリング/人材開発(39%)。
AIツールの使いやすさと、コスト削減やプロセス自動化の必要性が、AI導入を促進
AI導入の促進要因の上位は、AIツールをより使いやすくする進化(45%)、コスト削減と主要プロセスの自動化の必要性(42%)、標準的な既製ビジネスアプリケーションに組み込まれるAIの増加(37%)。
IT担当者にとって、AIに関する近年の最も重要な2つの変化は、導入が容易になったソリューション(43%)と、データ、AI、自動化スキルの普及(42%)。
AIを検討または導入している企業にとって、AI導入を促進するユースケースは限定的ではなく、業務運営の多くの主要分野に及ぶ。
- ITプロセスの自動化(33%)
- セキュリティと脅威検出(26%)
- AIのモニタリングやガバナンス(25%)
- ビジネス分析またはインテリジェンス(24%)
- ドキュメントの処理、理解、フローの自動化(24%)
- 顧客や従業員のセルフサービスでの回答や行動の自動化(23%)
- ビジネスプロセスの自動化(22%)
- ネットワークプロセスの自動化(22%)
- デジタル労働(22%)
- マーケティングと販売(22%)
- 不正検知(22%)
- 検索と知識発見(21%)
- 人材獲得(19%)
- 財務計画および分析(18%)
- サプライチェーンインテリジェンス(18%)
一連の障壁が、AIの恩恵を受ける企業の拡大のネックに
AIを検討または導入している企業にとって、AI導入の成功を妨げる障壁の上位は、限られたAIのスキルとノウハウ(33%)、データの過度の複雑さ(25%)、倫理的な懸念(23%)、統合や拡張が難し過ぎるAIプロジェクト(22%)、コストの高さ(21%)、AIモデル開発ツールの不足(21%)。
生成AIには、従来のAIモデルとは異なる導入障壁も
生成AIの検討や導入を行っていない企業にとって、生成AIの導入障壁の上位は、データのプライバシーに関する懸念(57%)、信頼や透明性に関する懸念(43%)、導入のためのスキルの不足(35%)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
開発者が最も使用している生成AIツール、2位は「GitHub Copilot」 1位は?
JetBrainsは、開発者エコシステムの現状をまとめたレポート「The State of Developer Ecosystem 2023」を発表した。196の国と地域の2万6348人の開発者から回答を得た。漠然としていた不安の原因と解決策が徐々に具体化 生成AIの業務利用開始は目前?
その関心の高さを裏付けるように、日々多くの生成AIのニュースが流れている。だが、その全てを把握するのは至難の業だ。そこで本稿は、2023年10月から12月までに@ITに掲載された生成AI関連のニュースを編集者の目線でまとめ、解説する。業務利用は「言語生成」が圧倒的 ランサーズがフリーランスの生成AI活用実態を調査
ランサーズは「生成AI活用の実態調査」の結果を発表した。生成AIを業務で使用している人は約4割。最も使用している生成AIの種類は「言語生成」で、ライティングやプログラミングなどで利用している人が多かった。