鮮明になる「オンプレからクラウド」トレンド 大規模データセンターの容量が全体の37%を占める:自社運用のオンプレミスデータセンターは40%
Synergy Research Groupが実施した調査によると、成長を続けるハイパースケールプロバイダーは全世界のデータセンター総容量の37%を占めることが分かった。
Synergy Research Groupは2023年7月12日(米国時間)、世界のデータセンターの総容量に関する調査結果を発表した。調査によると、世界中のデータセンターの総容量のうち、ハイパースケールプロバイダーが37%を占めているという。ハイパースケールプロバイダーが運営する大規模データセンターは、900に近づいている。そのうち約半分は自社で建設したデータセンターによるもので、残りの半分はリース施設によるものだ。その他のデータセンターの容量は、非ハイパースケールのコロケーション施設が23%を占めており、自社運用のオンプレミスデータセンターは全体の40%となっている。
この状況は5年前と比べると大きな変化が見られる。5年前には、データセンター容量のほぼ60%がオンプレミス施設によるものだったが、現在はハイパースケールプロバイダーの割合が増大し、オンプレミスデータセンターのシェアは下がっている。将来的にもハイパースケールプロバイダーが増加し、容量の半分以上を占める見込みだ。一方、オンプレミスデータセンターが抱える容量は毎年2ポイント以上低下するものの、オンプレミスデータセンター全体から見れば、減少の割合はわずかなものだ。総容量に占めるコロケーションのシェアは比較的一定のままであることが予測される。
ハイパースケールプロバイダーの調査数値は、SaaS、IaaS、PaaS、検索、ソーシャルネットワーキング、eコマース、ゲーミングの大手事業者を含む、世界の主要なクラウドおよびインターネットサービス企業19社のデータセンターのフットプリントとオペレーションの分析に基づいている。コロケーションおよびリースデータセンターの調査は、Synergy Research Groupが実施した230社以上の個別企業の四半期データを含む、コロケーション市場の追跡調査に基づいている。
10年前、企業は自社データセンター用のITハードウェアとソフトウェアに年間800億ドル以上を費やしていたが、新興のクラウドインフラサービスには100億ドル弱しか費やしていなかった。現在では、データセンターのハードウェアとソフトウェアへの支出は年平均2%しか伸びていない一方、クラウドサービスへの支出は急増しており、年平均42%の伸びで2022年には2270億ドルに達する。
企業がIT投資を抜本的に見直し、自社データセンターへの支出を抑制したため、大手クラウドプロバイダーはハイパースケールデータセンターの巨大なグローバルネットワークを急速に構築している。ハイパースケールオペレーターの成長は、ソーシャルネットワーキング、eコマース、オンラインゲームなど、より消費者志向のデジタルサービスの急速な発展によってさらに加速している。
企業のデータセンター設備への支出は、現状維持か、緩やかな増加にとどまっている。企業がデータセンターに必要な機器を保有することはあるものの、その機器の一部がコロケーション施設に持ち込まれていることが分かる。
「オンプレミスのデータセンターがすぐに姿を消すことはないだろうが、ハイパースケールとコロケーションの会社が急速に成長しているのとは対照的に、オンプレミスのデータセンターの割合は縮小することが予測される」(Synergy Research Group)
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