自社と他社の競合関係は「5年前より厳しい」 ガートナー ジャパンがビジネス変革に関する見解を発表:一方で「5年後は今と同じか、今より成長している」が約7割
ガートナー ジャパンは「2021年CEOサーベイ」と2021年8月に実施した調査の結果を基に、デジタル技術を活用したビジネス変革に関する見解を発表した。
ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2021年10月19日、「デジタル技術を活用したビジネス変革には目に見えない価値(エクスペリエンス)を統合管理し、ターゲットに適切に価値提供できるビジネスの進め方(コンポーサブルビジネス)が重要だ」との見解を発表した。
ガートナーが2020年7〜12月に全世界(北米、欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋地域)のCEO(最高経営責任者)と上級ビジネス幹部を対象に実施した調査「2021年CEOサーベイ」によると、ビジネス上の最優先課題として「成長」を挙げた割合が最も多く、56%だった。次に挙がったのは「テクノロジー関連の変更」で36%だった。
ガートナーの川辺謙介氏(アナリスト、シニアディレクター)は、「将来に向けて持続的な成長を目指す企業は、デジタル技術を活用して『不測の事態に耐え得る能力』を獲得する必要がある。CIO(最高情報責任者)にとって、ITを使ってどのようにビジネスを変革できるのかを根本から見直し実行に移す重要な時期だ」と述べている。
ビジネスの発展には「従業員の士気や満足度を向上させる必要がある」
ガートナーが2021年8月に実施した国内企業に勤める従業員と経営者を対象にした調査で、自社と他社の競合環境について聞いたところ、「5年前と比べて厳しくなっている」と回答した割合は53.0%だった。それに対し「優位になっている」と回答した割合は11.0%にすぎなかった。一方、同じ回答者に5年後までの見通しを質問したところ、『今よりは発展している』と『今と同じ程度を維持している』との回答が合計で70%を超えていた。
川辺氏は「状況を改善する秘策に取り組んでいるからなのか、単に楽観的に見通しているだけなのか、その真意は分からないが、少なくとも今までにない新たな戦略的・計画的な取り組みが必要とされていることは間違いない」と分析する。
ビジネスをさらに発展させるために重視すべきことについて聞くと、トップ3は「従業員の士気や満足度を高める」(41.8%)、「顧客満足度を高める」(33.5%)、「非効率な業務を廃止または改善する」(31.5%)だった。
川辺氏は「日本では少子高齢化が進んでおり、経済を発展させるためには労働者当たりの生産性を向上させる必要がある。生産性を向上させるには従業員や顧客、非効率な業務への取り組みを見直すことが重要だ」と述べている。
「変化の激しい状況下で厳しい競争を勝ち抜くために、CIOやITリーダーには期待が寄せられている。デジタル技術の普及や進展は目覚ましい。今後はデジタル技術を活用し、目に見えにくいもの(エクスペリエンス)を付加価値として捉え、『コンポーザブル』(システムや人材などの要素をモジュールとして捉え、適宜組み替えられるようにすること)の形式で実装することになるだろう」(川辺氏)
こうした背景から川辺氏は、顧客や従業員、ユーザーなどさまざまなエクスペリエンスを統合管理する「トータルエクスペリエンス」の戦略と、それらの付加価値が顧客や関係者などのターゲットに適切なタイミングで効果的に提供できるコンポーザブルビジネスが重要になると推測している。
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