Chromium版「Microsoft Edge」はWSUSで更新できる? できない?:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(86)
本連載ではChromium版の新しい「Microsoft Edge」の企業向けの情報を繰り返しお伝えしてきましたが、新しいMicrosoft Edgeの更新管理については訂正があります。既に該当する記事は訂正しましたが、新しいMicrosoft EdgeはWindows 10の更新プログラムと同じように、「Windows Server Update Services(WSUS)」で更新できます。
WSUSで初期展開はできないが、更新の配布は可能
本連載ではChromium版の新しい「Microsoft Edge」について、2020年1月の安定版(Stable)のリリースから、主に企業向けの機能と展開方法について取り上げてきました。
- Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(本連載 第66回)
- Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(その2)――企業利用でのポイント(本連載 第67回)
- Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(その3)――グループポリシーによる自動配布(本連載 第75回)
- Chromium版「Microsoft Edge」の配布対象が拡大――Windows 7/8.1も自動配布対象に(本連載 第81回)
本連載の第66回と第67回では初出時、「Windows Server Update Services(WSUS)」単体では新しいMicrosoft Edgeを配布、更新できないと説明しましたが、これを訂正します。以下の公式ドキュメントで説明されているように、“旧Microsoft Edgeを利用している環境に初期展開できない”ことは変わりません。ですが、既存のMicrosoft EdgeのMSIインストールを更新することはできるとあります。実際に試してみました。
- エンタープライズ環境の Microsoft Edge についてよく寄せられる質問(Microsoft Docs)
WSUSは、新しいMicrosoft Edgeの初期展開をサポートしていますか?
いいえ、そうではありません。WSUSは、既存のMicrosoft EdgeのMSIインストールを更新することができますが、初期展開には使用できません。WSUSを介して更新プログラムを完全に管理する必要がある場合は、ConfigMgrなどの管理ツールを使用して初期展開を実行できます。
WSUSによる更新の配布方法
「既存のMicrosoft EdgeのMSIインストール」とは、以下のダウンロードサイトから入手したWindows向けのMSIパッケージを使用したインストールのことです。本連載の第75回では、このMSIパッケージを「グループポリシー」のソフトウェア配布機能を利用してクライアントに展開する方法を紹介しました。今回は、手動、グループポリシー、またはその他のツールを利用して展開済みの新しいMicrosoft Edgeバージョン85を、WSUSを利用してバージョン86に更新してみます。
WSUSで新しいMicrosoft Edgeの更新プログラムを配布するには、まず、WSUSコンソール「Update Services」の「オプション」にある「製品と分類」を開き、「製品」タブの「Windows」のサブカテゴリーにある「Microsoft Edge」を選択します(画面1)。その後、WSUSサーバの同期を実行して、完了するまで待ちます。
WSUSサーバの同期が完了したら、「すべての更新プログラム」にある更新プログラムの一覧を最新の情報に更新し、WSUSクライアントのアーキテクチャ(x64またはx86)用の「Stableチャネル」の最新バージョン(この例では、2020年10月9日リリースの86.0.622.43)を探し、「承認」を選択して、配布対象のWSUSグループを指定します(画面2)。
更新プログラムを承認すると、更新パッケージのコンテンツのダウンロードが始まるので、完了するまで待ちます。ダウンロードの完了は、「すべての更新プログラム」一覧を「承認済み」の表示に切り替え、更新プログラムの「ファイルの状態」で確認できます。
以上の設定により、配布対象のWSUSクライアントで承認したMicrosoft Edge(今回の例では2020年10月9日リリースのバージョン86.0.622.43)より古いバージョンを実行している場合は、次回の自動更新時、または「更新プログラムのチェック」をクリックして手動更新を開始すると、WSUSを通じて更新されます(画面4、画面5)。
バージョン20H2以降のWindows 10と新しいMicrosoft Edgeの更新管理
「Windows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)」の機能更新プログラムまたは「有効化パッケージ」は、WSUSを使用してWSUSクライアントに配布できます(軽量な有効化パッケージはバージョン2004を実行中のWSUSクライアント用)。そして、バージョン20H2において、Windows 10の標準ブラウザは完全に新しいMicrosoft Edgeに入れ替わることになります。
そのため、Windows 10 バージョン20H2への移行を計画している場合は、新しいMicrosoft Edgeの展開について考慮する必要はありません。「Microsoft Endpoint Configuration Manager」(旧称、Microsoft System Configuration Manager)や「Microsoft Intune」といった追加のツールを用意しなくても、WSUS単体でWindows 10と新しいMicrosoft Edge両方の更新を管理できるようになります。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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