ダイソーが6年でIT内製化、マイクロサービス化、サーバレスに成功した理由:105億レコードの処理が課題(2/2 ページ)
アイティメディアが開催した「ITmedia DX Summit 2019年秋・ITインフラ編」の特別講演にダイソーの丸本健二郎氏が登壇。内製化によって、データ管理基盤の最適化、高度化を図ったいきさつと結果について講演した。
「クラウドベンダーを1つに絞る」という選択
ダイソーではAWSを採用し、多くのシステムをマネージドサービスで構成している。丸本氏は、その採用理由についても触れていた。
「AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureのいずれも、技術的な差はあまりないと考えています。しかし、情報量や対応できるベンダー数という点で、AWSは圧倒的な優位性を誇っています。もちろん各クラウドサービスの特性、メリットを広く浅く享受することもできますが、時間は有限です。私たちはAWSという1つのクラウドベンダーに特化して、狭く深く活用していこうと決めたのです」(丸本氏)
“やらないこと”を決めてサーバレスを採用、3つの理由
さらにダイソーではAWSのマネージドサービスを使って、さまざまなシステムでサーバレスを採用している。丸本氏は、その理由についても3つ解説した。
1つ目は、「特化型のサービス」を活用できる点だ。
例えばデータベースは、上述したようにRDBMSとRedshiftでは得意分野が異なる。RDBMSは設計が簡単で、データ数が小さければ非常に高速な処理が期待できる。Redshiftは、設計にコツはいるものの、膨大なデータの処理が得意だ。
サーバレスでKey-Valueデータベースの「Amazon DynamoDB」は、データ処理の機能は持たず、できることが限定されているものの拡張性に優れており、並列アクセスの受け付けも得意としている。
「全てを満たすことは難しいため、何かを捨てて、いずれかに特化すべきです」(丸本氏)
サーバレス化の2つ目のポイントは、インフラ管理の負荷である。オンプレミスシステムの場合、自由度は高いもののアプリケーションからハードウェア、電源や建物まで全てを管理しなければならない。「Amazon EC2」のようなIaaSの場合、ハードウェアの管理は不要であるが、ネットワークやOS、ミドルウェアの管理は残される。サーバレスであれば、アプリケーションとネットワークのみで済み、ユーザーはビジネスに集中できるようになる。
これら2つの理由について、丸本氏は「“何をやらないか”を決めるべきなのです」と持論をまとめた。
サーバレス化の3つ目の理由がコストである。システムは、想定される処理量に合わせて処理能力が決定される。変化に対応しにくいオンプレミスシステムは、ピークに合わせてリソースを確保する必要がある。IaaSは、オンプレミスよりは変化に強いものの、変化を予測、監視して対応する必要がある。サーバレスシステムであれば、イベント駆動型でスケールするため、IaaSよりも無駄がなく、トータルコストを抑えることができる。
内製化の効果
こうしてダイソーは、AWSのマネージドサービスを最大限に活用し、データ分析を含む自動発注システムや、各種システム間の連携をつかさどるインタフェース統合システムなどを内製した。
内製化に伴い、マイクロサービス化を図ったことで開発も効率的に行え、システムの一部を新しいサービスへ切り替えるときは、調査を含めてたった5日間で完了できたという。目標であった全体最適化を推進し、ITをコストセンターから“攻めの武器”へと変革できたと高く評価している。
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