検索
連載

Nutanixは「ポータブルクラウド/SaaSベンダー」へと(生物学的に)変態しようとしているNutanix CEOとCTOに聞いた(2/2 ページ)

NutanixはHCIベンダーからソフトウェアベンダーに変化してきたが、最近では次の「変態」とも言える動きを見せている。これを象徴するのがサブスクリプションモデルへの移行とNutanix on AWSなどの取り組みだ。CEOのディラージ・パンディ氏とプラットフォームCTOのラジブ・ミラニ氏に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

 「ユーザーがやりたいことをやりたい場所で柔軟に実行できるようにするには、ワークフローに妨げが生じてはならない。サブスクリプションモデルは、何よりもユーザーにとってのシンプルさにつながる。OracleやSAPは、オンプレミスで動かすソフトウェアについては買い切りライセンスを提供する一方、クラウドサービスも提供している。これに対し、私たちは『クラウドが新しい消費モデルであるなら、なぜオンプレミスのライセンス形態をクラウドにそろえないのか』と言いたい。クラウド的な消費モデル、クラウド的な運用、クラウド的なシンプルさを実現できないなら、オンプレミスインフラを『プライベートクラウド』と呼べるわけがない」

なぜ、さまざまなクラウドを自由に使い分けられないのか

 一方、Xi Clustersは「ポータブル」の部分を象徴している。Nutanixは、Xi Clustersの第1弾として、「Nutanix on AWS」とも呼べるサービスを、2019年5月の同社カンファレンスで発表した。これはAmazon Web Services(AWS)の物理サーバインスタンスを活用し、これに自動的にNutanixのプラットフォームを導入し、プライベートクラウド基盤として利用できるようにするもの。2019年10月上旬にデンマークで同社が開催するカンファレンスで、早期アクセスプログラムの提供開始を発表できる見通しという。Microsoft Azureで同様なサービスを提供することも検討しているという。

 Xi Clusters on AWSは、「VMware Cloud on AWS(以下、VMC on AWS)」の後追いのような印象を与えるかもしれないが、異なる部分が幾つかある。最も大きな違いは、ネットワーキング/セキュリティで、AWSの仕組みをそのまま活用することだ。VMC on AWSのように、自社のネットワーク技術を持ち込むわけではない。これにはメリットとデメリットがあるが、Nutanixにとってもユーザーにとっても、大掛かりな統合作業が不要だという点では「ポータブル性」が高い。基本的に、ベアメタルサーバを提供しているさまざまなクラウドサービスでXi Clustersを機動的に展開できるし、ユーザー側もこれを機動的に活用できるはずだからだ。

 こうした仕組みと、上述の柔軟に適用できるサブスクリプションライセンスにより、ユーザー組織は、データとアプリケーションを近づけるべきという考え方に基づき、システムそれぞれの都合に応じて、適切なプラットフォームあるいは場所を柔軟に選択、あるいは併用できるようになると、パンディ氏は話す。

 NutanixプラットフォームをわざわざAWSで動かすメリットも、データとアプリケーションの距離というテーマに関係してくると、パンディ氏は話す。

 「例えばAmazon RDSでは、Amazon EC2やAmazon EBSとの間に、ネットワーク的な距離が生じる。一方Xi Clustersでは、ユーザー組織のAmazon VPC内でNutanixクラスタを動かせるため、同じデータベースでも性能を向上できる。『ネットワークは敵だ。このため、データとアプリケーションはできるだけ近づけなければならない』と、私たちは10年前から訴えてきたが、クラウドにはこれがますます当てはまるようになってきた。クラウドのネットワークはマルチテナントで、仮想化されているからだ」

 一方、「データとアプリケーションをできるだけ近くで動かすべき」というテーマを、IoT/エッジコンピューティングや、GDPRその他のコンプライアンス/ガバナンスに当てはめれば、「クラウドのデータセンターだけでは、ユーザー組織における全てのITニーズを満たせないことがあり得る」という発想につながる。

 Microsoftは以前から、Azure Stackを通じてハイブリッドクラウドを推進してきたが、上記の発想から、他の主要パブリッククラウドの間でもオンプレミスをカバーする動きが活発化してきた。AWSは「AWS Outposts」を発表し、Google CloudはKubernetesサービスの「Anthos」で、オンプレミスとクラウドにまたがる統合的なコンテナ環境を提供しようとしている。パンディ氏は、Nutanixの以前からの考えの正しさを、こうした動きが証明していると主張する。

 NutanixクラウドプラットフォームCTO(最高技術責任者)のラジブ・ミラニ氏は次のように表現した。

 「以前私たちは、『インフラをインビジブルにする』ことを企業使命として掲げていたが、その際『インフラ』という言葉で実質的に意味していたのは、オンプレミスだ。しかし最近は『どこであっても、コンピューティングをインビジブルにする』と言っている。コンピューティングはエッジやパブリッククラウドなど、どこでも実行されるものだからだ。いろいろな意味で、これは今後10年におけるNutanixのエッセンスになると思う」

 パンディ氏はこれを受けて、「インビジブル」という言葉には、さまざまな意味を込めていると話した。

 「まずは摩擦のない形でスムーズに使えることが大きな要素だ。また、継続性も意味している。継続的デリバリー、継続的消費、継続的なモビリティーなどだ。異なる稼働形態、異なる場所にまたがる移行をどうやりやすくするかというテーマも重要になっている。最後にセキュリティや強靭性といった点での信頼性の確保が不可欠だ。例えばオンプレミスとパブリッククラウドでは、セキュリティの仕組みが異なる。これらに対し、一貫したセキュリティポリシーをどのように適用できるか。また、ハイブリッドクラウドネットワーキングはどのようにすべきか。ハイブリッド形態におけるインビジブルについては、現在も水面下でさまざまな取り組みを進めている」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
[an error occurred while processing this directive]