VMware、Pivotal買収の意図と今後:VMworld 2019(2/2 ページ)
VMwareは2019年8月下旬に開催した年次イベント「VMworld 2019」で、前週に発表したPivotal Softwareの買収(まだ完了はしていない)について説明した。これは同社のこれまでの事業、そしてKubernetes戦略の枠内にも収まりきらない取り組みだ。同買収の文脈を追った。
だが、Heptioの買収時点で、既に上記のような解釈は可能だった。実際、ラグラム氏は当時、筆者の問いに対して「VMwareは創立以来、IT運用を担当する人々をオーディエンス(訴求対象)としてきた。だが、過去数年の間にDevOpsが広がってきた。一方、パブリッククラウドの普及に伴ってクラウド運用担当者(「CloudOps」)が生まれている」と答え、DevOpsに対応するためにHeptioを買収したと説明した。
開発者、および開発者を助けるインフラチームの間でKubernetesが広がりつつあり、将来に向けて偏在的なプラットフォームになりつつあるという事実への対応については、Heptioを取り込んだことでその道筋をつけたと説明できるはずだ。
VMwareがさらにPivotalを買収するという事実は、「防御的あるいは受動的なKubernetes対応を超えた活動」を意図していることを意味する。
ラグラム氏に、あらためてKubernetesエコシステムとPivotalの関係について聞くと、同氏は次のように答えた。長文になるがそのままお伝えする。
「開発者はコードを書くことに集中したい。他のことは自動的に起こってほしいと思っている。これが『Pivotal Application Service』の価値だ。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)やパッケージングツールなどを集めて同様な仕組みを作れるではないかと主張する人はいるだろう。だが、一般企業にとって、これは非常に難しいことだ。デプロイ後も、アプリケーションの自動スケーリングや可用性確保、サービスディスカバリをどうするかなどの課題がある。
モダンなマイクロサービスアプリケーションをデプロイし、スケールする形で運用するには、これら全ての問題を解決できなければならない。Pivotalは全てのプロセスを飛躍的にやりやすいものとしてくれる。同様なことの実現に使える特化型ツールが世の中に存在するかといえば、幾つかはある。だが第1に、これらのポイントツールをまとめ上げるのが難しい。第2に、こうしたツールは上級のエキスパートを対象としている。
一般企業におけるJava、Windows、Node.jsなどの開発者は、ビジネス上構築しなければならないアプリケーションの開発で、とてもではないが時間が足りない。さまざまな設定に時間を割く余裕はない。多数の企業顧客が、『Kubernetesは基本的に複雑で、多様なツールをまとめ上げ、動くようにする作業は、その10倍難しい』と話す。Pivotalはこれをはるかに容易なものにしてくれる。これが第1点だ。
もう1点として、Pivotal Function ServiceはKnativeに基づいている。(Knativeは、)イベントベースで、モダンアプリケーションにおける新たなプログラミングモデルの1つを実現する。
(FaaSサービスである)「AWS Lambda」は人気だが、Amazon Web Services(AWS)に密接にひも付いている。特定クラウドに縛られたくないときにはどうすればいいか。Pivotal Function Serviceがこれを提供してくれる。
(『他のベンダーもKnativeベースのFaaSを提供しつつある』と筆者が指摘すると、)単一プラットフォームの機能の一つとして提供することに意味がある。包括的に提供できているベンダーが他にあるだろうか。(まず競合他社で、Pivotal Application Serviceの)「cf push」が象徴するデベロッパーエクスペリエンスを現時点で提供できているところはない。
そこで私たちは、Pivotalのやっていることが非常にユニークで、真似のしにくいことだと考えている。これを市場に広めていきたい。オープンソースの文脈で活動していくため、必ず他の選択肢は登場する。だが、全てを統合的に推進できること、ここに魔法があると考えている」
関連して、VMwareの主要幹部はこぞって、実践を通じてモダンアプリケーション開発のメソドロジーを一般企業の開発チームに伝授する「Pivotal Labs」の重要性を指摘する。そしてVMwareパートナーのリソースを活用し、この活動を広げていきたいとしている。
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