新規IT活用に経営層の関与強まる、ノークリサーチが分析:「DX」が影響か
ノークリサーチは、中堅中小企業を対象とした「新たなIT活用の意思決定者」に関する調査の分析結果を発表した。2019年は2018年と比べて、経営層の割合が増えたのに対して、現場部門や間接部門、IT管理部門の割合はいずれも減った。
ノークリサーチは2019年6月24日、中堅中小企業を対象とした「新たなIT活用の意思決定者」に関する調査の分析結果を発表した。
ノークリサーチでは、既存のIT資産を刷新したり更新したりする場合とは異なり、中堅中小企業が新たなIT活用に取り組む際にはIT支出の意思決定者が変わってくる可能性があるとしている。それを裏付けるためのデータとして同社は、新たなIT活用に関する提案/計画の担当者を調べた。
「デジタル変革」の重要性が経営層に認知
2019年の結果を2018年と比較すると、経営層の割合が49.0%から56.7%に増えたのに対して、現場部門(2018年の29.4%に対して2019年は24.9%)や間接部門(同21.6%から17.0%)、IT管理部門(同32.0%から26.4%)の割合はいずれも減った。
ノークリサーチではこの結果を受けて、「DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれるようになり、経営課題としてIT活用を捉えることの重要性を訴えるメッセージが増えている影響で、中堅中小企業の経営層が新たなIT活用に関心を高めつつある」と分析している。
次に、年商別で上記結果を分類した。すると年商5億円未満では、経営層の割合が2018年の74.4%から2019年は68.8%に減ったのに対して、現場部門の割合は16.3%から21.3%に増えた。
この点についてノークリサーチは、「経営者が高齢化し、後継の育成が課題となっている一方で、手軽で安価に導入できるクラウドサービスなどを活用して現場レベルの業務改善に取り組もうとする事例も徐々に見られ始めていることが背景にあると考えられる」と分析している。
これに対して年商300億〜500億円では、経営層の割合と現場部門の割合のどちらも2019年の方が多かった。この年商区分で、2019年の割合が減ったのは、間接部門とIT関連部門だった。
この結果については、「IT関連部門が既存IT資産の維持に追われる中、IoT(Internet of Things)など新しいデバイスによるIT活用や、RPA(Robotic Process Automation)による自動化といった働き方改革への対応では、現場部門のノウハウを生かすことが重要だ。それが現場部門の割合が増えている要因の1つと考えられる。一方、経営層の割合も増えている点からは、経営層のリーダシップとバランスを取りながら、現場部門の経験を生かしたIT活用に取り組もうとしている状況が垣間見える」とノークリサーチは考察している。
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