インド初の“省エネ性に優れた病院”構築へ――NEDOと日立、エネルギーマネジメントと業務効率改善の共同実証を開始
ニューデリーの大学病院で、病院の省エネ化と業務効率改善を実現する共同実証がスタート。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立が、インドの医療サービス向上に向けたモデルケースとなる病院システムを構築する。
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所(日立)、日立インド社(Hitachi India Pvt)は2018年10月18日、インドの高等教育機関兼病院である全インド医科大学ニューデリー校(AIIMS New Delhi:All India Institute of Medical Sciences New Delhi)に、太陽光発電を含む省エネ機器と病院全体を統合管理するITシステムを導入し、省エネと病院業務の効率改善を実現するための実証運転を開始したと発表した。
インドは経済発展に伴い、社会インフラの整備が急務となっており、医療分野では慢性的な電力不足や施設の老朽化などにより、一部の高級私立病院を除いて、十分な医療サービスを提供できない状態にあるという。
これを受け、インドの健康家族福祉省(MoHFW:Ministry of Health & Family Welfare)は、2014年6月に「Green AIIM構想」を発表。インド政府主導の社会インフラ整備施策を掲げ、構想実現のショーケースとして、AIIMS New Delhiをインド国内初の省エネ性に優れた病院に変え、エネルギー効率の高い病院を増やしていく方針を策定した。
NEDOは、2016年11月にMoHFW、AIIMS New Delhiとともに、同校の医療分野のエネルギーマネジメントとITシステムを統合することで、病院全体のエネルギー削減とIT活用による医療データの有効活用を行うための基本協定書を締結。
これに伴い、NEDOは、日立と日立インド社を委託先に選定。太陽光発電の活用による商用電力使用量の削減と電源ソースのグリーン化、省エネ性能の高い設備への更新(空調機器、照明、IT機器など)、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入による病院全体の電力使用の最適化、高効率なストレージサーバを使用したITシステムの構築に取り組み、AIIMS New Delhiでの省エネ化と病院業務の効率化を実証するプロジェクトを進めてきた。
これまでに設備の設計、設備機器の製作、据付・試運転が完了し、今回、病院全体のエネルギー削減とITシステムを活用した医療データの有効活用について検証する実証運転を開始したという。実証事業の期間は2019年度末まで。
実証運転を通して、エネルギーマネジメント(環境面、コスト面、信頼性)の最適化により、ITシステムネットワークの有効性を検証するとともに、病院全体の消費電力を2014年度(実績)比で30%削減することを目指す。
また、省エネ機器とIT機器を統合して運用することで、エネルギー制御だけでなく、医療情報データを一元的に管理・活用し、エネルギーの最適管理や、診療効率とシステムの改善を行えるITインフラ基盤を構築し、その有効性を検証する。
将来的には、各種設備の運転条件や気象条件などからエネルギー需要を予測し、設備の最適運転を実現するなど、病院全体でエネルギー使用量の増加を抑制する仕組みの構築も検討している。
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