WS2003移行で泣かないための基礎知識と仮想化、パッケージ購入、スクラッチ開発のメリット/デメリット:Windows Server 2003のサポート切れにどう対応すべきか(前編)(2/2 ページ)
2015年7月15日でサポートが終了になったWindows Server 2003。本企画では、Windows Server 2003からアプリケーションを移行するには、どのような検討が必要か、どのような選択肢があるのか、どのように移行したらいいのかを解説します。
仮想化のメリット/デメリットと移行方法
- メリット
- 4つの移行プランの中でも最もコストが安く利用を継続できる
- デメリット
- サーバーの修正モジュールが提供されないため、システム全体を他のネットワークから切り離す必要がある(下記図(1))
- 仮想化のシステムがWindows Server 2003をサポートしなくなった場合、再度移行を考える必要がある(下記図(2))
サポート切れを覚悟して、Windows Server 2003をそのまま利用継続する場合、完全に外部のネットワークから切り離す必要があります。利用するクライアントPCも外部からのデータが入らないような構成にする必要があります。
パッケージへ移行するメリット/デメリットと移行方法
業務パッケージは、Windows Server 2003の登場時期よりも多機能のものがリリースされています。移行する場合、メリットも多くあります。
- メリット
- Windows Server 2003で利用しているアプリケーションよりも、より高機能で業務のカバー範囲の広いパッケージを利用することが可能
- デメリット
- Windows Server 2003で利用しているアプリケーションがスクラッチで開発しているアプリケーションの場合、現在の業務をパッケージに合わせるか、パッケージを現在の業務に合うようにカスタマイズする必要がある
多くの場合、Windows Server 2003で利用しているアプリケーションは、スクラッチで開発したアプリケーションです。そのため、業務に合うように設計・開発がされています。以下のようなケースでは、パッケージに移行するとコストが増大することになります。
- 他の会社にはないような特殊な業務をサポートするアプリケーションである場合
- 業務は特殊ではないが、現場の声が大きく、Windows Server 2003で利用していたアプリケーションに画面や操作などを合わせる必要がある場合
パッケージのカスタマイズは、通常の開発よりもコストが掛かるため、カスタマイズが多くなるとコストの増大幅が大きく、4つの移行方法の中で最もコストが大きくなってしまいます。ポイントは、パッケージに業務を合わせることができるかどうかです。
スクラッチ開発のメリット/デメリットと移行方法
- メリット
- 現状のソースコードの品質が悪い場合、メンテナンス(機能追加・変更など)のための効率が上がり、コストが下がる
- 移行先のアーキテクチャを自由に選択できる(サーバーOSや開発言語など)
- デメリット
- 設計書・テストケースなどが現状のシステムと一致していない場合、これらのドキュメントの整備に工数とコストが掛かる
- ドキュメントの状態によっては全体のコストに占める割合が50%になることもある
新しくスクラッチで開発をする場合は、現在のアプリケーションを開発したときの費用と同等のコストが掛かります。ドキュメント類の整備に工数が掛からない場合、現在のアプリケーションの開発よりもコストが下がることがありますが、現在のアプリケーションとの比較テストを行う場合は、相殺されてしまいます。
後編は、コード変換ツールを使ったマイグレーションについて
本稿では、Windows Server 2003のサポート終了に伴う“移行”の概要について、解説しました。すでに、サポートは終了しており、4つの移行方法のうちどれがいいかを検討するのに時間がかかるケースがあるので、早めの検討開始をお勧めします。
後編では、今回解説できなかったコード変換ツールを使ったマイグレーションについて解説します。
筆者紹介
樫山友一
ベンチャー企業の立ち上げを数社行い、現オン・デマンド・ワン株式会社代表取締役、米国、GreatMigrations社のgmStduioの日本での総代理店をするなど、海外からの技術導入を積極的に行っている。
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