VDIはコロナ禍で脚光を浴びたかと思いきや、描画性能不足とコスト高騰という課題に直面していた。これを解決する鍵となり得るのが、長年の歴史を持つ国産VDI製品に、仮想GPU技術を組み合わせたソリューションだ。
コロナ禍以前から「働き方改革」を掲げてテレワークの環境整備に力を入れる企業は、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)を積極的に導入した。VDIはクライアントPC環境を仮想マシンとしてサーバに実装するもので、エンドユーザーはシンクライアントからネットワーク経由で画面データだけをやりとりする。端末上に業務データは残らないため、情報漏えいを防げるとともに、IT管理者にとっては運用管理を一元化できるのがメリットになる。
コロナ禍を機にさまざまな企業がテレワークを採用し、「場所を選ばない柔軟な働き方」は身近なものとなった。ただし、コロナ禍でVDIが多くの企業に導入されたのかと思いきや、実際の状況は逆だったという。
「場所を選ばずに働けるというVDIの役割は、まさにニーズに合致していたのですが、旧来のVDIは音声や動画などの大容量ストリーミングデータを効率的に処理できないという欠点がありました。Web会議をはじめとするモダンアプリケーションやコミュニケーションツールの使い勝手が悪い、という印象が先行し、コロナ禍の間にVDIの需要はほとんど伸びなかったのが実情です」
こう語るのは、NECの劉伯誠氏だ。当時VDIを導入していた企業の多くは、Web会議のパフォーマンスを改善するために、サーバのCPUスペックを上げて解決を試みた。すると今度は「コストパフォーマンスの悪化」という課題に直面することになった。
当時のVDIが置かれていた状況について、エヌビディアの後藤祐一郎氏は次のように振り返る。
「エンドユーザーからは『とにかくVDIが遅い』『CPU負荷が高過ぎる』というクレームが相次ぎ、これに対処するためにCPUを増やしたら、システム全体のコストが高騰するというジレンマがありました。その結果、VDIが持つ管理面のメリットは十分理解しつつも、パフォーマンスとコストの問題から『これ以上VDIを維持できない』と考えるユーザー企業が続出し、ベンダーもお客さまにVDIを強く提案できないという状況が続いていました」
この状況をさらに悪化させたのが、仮想化ソフトウェアベンダーの再編に伴うライセンス体系の変更だった。これによってVDIの基盤となる仮想化ソフトウェアライセンス価格が一気に跳ね上がり、VDIユーザー企業はハードウェアとソフトウェアの両面でコスト高騰の問題に直面することになった。
こうした課題を解決し、逆風に立ち向かうためにNECが注力するのが、自社開発のVDI製品「VirtualPCCenter」の強化だ。同製品は20年以上の歴史があり、国産製品ならではの安定的な供給体制やコストパフォーマンスの高さから、さまざまな企業や公共機関に導入されている。
同製品のコスト面でのメリットについて、劉氏は次のように説明する。
「もともとリーズナブルなライセンス価格を設定しており、買い切り型のパーペチュアルモデルで提供しています。買い切り型ならば契約期間内に突然ライセンス体系が変わるようなリスクは回避できますし、投資計画も立てやすくなるでしょう。国産製品ですから、為替の影響によるコスト変動もほぼありません」
NECの試算では、一般的な外資系VDI製品と比較すると、ソフトウェアの価格は約半分、ハードウェアを含めても全体のコストを25%ほど削減できるという。
サポート期間の長さも、外資系VDI製品にはない強みだ。VirtualPCCenterは1年に1回のペースでバージョンアップを続け、ユーザー企業が導入したバージョンは出荷が停止した後も7年間はサポートを継続する。一般的にソフトウェア製品のサポート期間は短くなりがちな中、「出荷停止から7年間」というのは異例の長さだ。
Web会議をはじめとするモダンアプリケーションのパフォーマンス不足については、近年になってNVIDIAから有効な解決策が提示された。これまではGPUのリソースをVDIの各仮想マシンに分配する手段がなく、演算能力を追加したい仮想マシンの数だけ高価なGPUをサーバに搭載する必要があった。これを解決したのが、後藤氏が「GPU分身の術」と称する仮想GPUソリューション「NVIDIA vGPU」だ。
「ハイパーバイザーに『vGPUマネージャー』というソフトウェアを入れることで、物理GPUのメモリを複数に分割して仮想マシンに割り当てられるようになります。この技術はVDIのパフォーマンス課題の解決に寄与できます。Web会議や業務アプリケーションなどのグラフィックス処理は、表示が終わればGPU使用率がすぐに下がるため、vGPUによる改善を実感しやすいユースケースと言えます」(後藤氏)
NECとNVIDIAは、VirtualPCCenterが持つコストメリットと国産ならではのサポート体制、NVIDIAのvGPU技術が持つ性能面のメリットを組み合わせて、国内のユーザー企業にコストパフォーマンスのよいVDIソリューションを共同で提案している。
「NECが2025年10月にリリースした最新バージョン『VirtualPCCenter 6.7』では、ハイパーバイザーとして『Windows Server 2025 Hyper-V』が利用できるようになりました。Hyper-Vはコストパフォーマンスのよいハイパーバイザーとして利用を希望するユーザー企業さまが多く、弊社もWindows Server 2012の時代から積極的に採用してきました。最新のWindows Server 2025でNVIDIA vGPUが利用可能になったことから、現在のVDIが抱えている課題を一挙に解決できる道筋が見えてきました」(劉氏)
NVIDIAは、Web会議や業務アプリケーションの利用に適したGPU製品だけでなく、幅広いユースケースに応じたGPU製品のラインアップを用意している。「一般的なOA用途で利用されるVDIを、弊社は『オフィスVDI』と呼んで、この用途に適した廉価で集約率の高いGPU製品を提供しています。それ以外にも、CAD(コンピュータ支援設計)や3Dグラフィックスなどの高負荷処理に適した『グラフィックスVDI』、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用途に適した『コンピューティングVDI』、AIの演算処理に適した『AI VDI』などがあります」(後藤氏)
これら多種多様なユースケースに適したシステムを設計するには、VDI構築に関する深い知見を持つSIerの支援も欠かせない。後藤氏は「NECはVirtualPCCenterの長い歴史を通じてVDI構築の豊富な実績をお持ちなので、GPUとサーバの組み合わせやサイジングについて、ユーザー企業さまに応じた構成を導き出していただけます」と、NECのSIerとしての実力を高く評価する。
劉氏も、NECが独自のVDI製品を提供し続ける意義についてこう語る。「VirtualPCCenterは特定のハイパーバイザーに依存しない作りになっています。あるハイパーバイザーの利用継続が困難になったとしても、他製品を使った環境への移行が可能です。今後新たな製品が台頭してきたとしても、ベンダーロックインになりにくい環境を提供することで、ユーザー企業さまが投資したIT資産を長く守れる。それがVirtualPCCenterの強みです」
後藤氏によれば、AI技術の急速な進化と普及に伴い、これまではあまり見られなかったVDIニーズが台頭するようになった。以前のユースケースは、クラウドで稼働する汎用(はんよう)的なAIモデルをAPI経由で利用したり、SaaSとして利用したりする形態が一般的だった。しかしこうした方式は、インターネットを介して大量データをやりとりする必要があり、パフォーマンスや効率の面で課題があった。海外AIベンダーのクラウドインフラに自社のデータを預けることに、機密保持上の懸念を抱く声も目立つようになったという。今後はこうした課題を解決するためにも、VirtualPCCenterのような国産VDIを安全な環境で利用するニーズは高まっていくのではないか、と後藤氏は指摘する。
「『セキュリティの懸念からデータをデータセンター外に出したくない』『ボリュームの大きいデータだから、データセンター内で演算処理を完結させたい』などのニーズから、新たなVDIの役割が定まりつつあるように感じます。AI開発に必要な大量データ処理の効率を考えれば、クライアントとサーバを同じデータセンター内に配置した方が効率が良い。データ漏えいを防ぐためのソブリンクラウドを実現する上でも、オンプレミスインフラやプライベートクラウドで処理を完結させた方が有利です。こうしたニーズに応えていくためにも、弊社のvGPU技術とNECのVirtualPCCenterを組み合わせたソリューションは、新たな価値を提供できると考えています」
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年11月28日