オンプレミスで「Oracle Database」を使い続ける企業は、コスト最適化や人手不足などの課題に直面している。これらの悩みを解決し、低遅延でのシステム連携や高度なAI活用を可能にするクラウドサービスが登場した。既存資産を最大限に生かしつつ、クラウド移行をスムーズに進める秘策を紹介する。
長年にわたり、世界中の企業システムのデータベース基盤を担ってきたOracle Database。同製品を中心に、オンプレミス環境で構築された業務システムが、数多くの企業によって日々利用され続けている。しかし、クラウドの業務システムを利用することがすっかり当たり前になった今日、オンプレミスでデータベースアプリケーションを運用し続けるメリットは年々薄れ、逆にデメリットの方が目立つケースが増えてきた。
こうした状況について、グーグル・クラウド・ジャパンの大久保順氏は次のように説明する。
「オンプレミスでデータベースを構築する際には、処理のピーク時や将来のシステム規模を見越した上でハードウェアを調達する必要があります。そのため過剰投資になりやすく、コストをなかなか最適化できません。また、オンプレミスシステムは自社やパートナー企業の人員が運用管理に当たる必要があり、人手不足の昨今では人員を確保するだけでも一苦労です」
これまで数多くの企業に対してOracle Databaseを使ったデータベース構築と運用を手掛けてきたシステムサポート社の入江大氏も、SIer(システムインテグレーター)の立場から「若手エンジニアの多くがクラウドやAI(人工知能)技術の分野に流れる一方で、オンプレミスの業務システムの運用ノウハウを持つベテランエンジニアの数は減り続けています」と語り、オンプレミスのシステム運用にまつわる人材不足の問題を指摘する。
こうした課題を解決するために、多くの企業が自社のオンプレミスシステムのクラウド移行を進めている。クラウドサービスは必要なときに必要なだけリソースを柔軟に調達できるため、オンプレミスシステムにありがちなキャパシティープランニングの問題や、過剰リソースの問題を回避できる。
また、クラウドサービスはハードウェアの運用管理をクラウドベンダーに委ねられ、マネージドサービスではソフトウェア運用管理についてもかなりの部分を委託できる。マネージドサービスを有効活用することで、煩雑な運用管理作業の大部分を自動化できるため、人手不足の課題を解決する上でも有効だ。
大久保氏は「システムの安定稼働」という点でも、クラウドサービスはオンプレミスに引けを取らないと述べる。
「Oracle Databaseのようなデータベースシステムは企業システムの根幹を担うため、その可用性はビジネスの継続性に直結します。クラウドのデータベースサービスは安定して運用できますから、ビジネス継続性の面でも安心感が高いと言えます」
ただしクラウドインフラにデータベース環境を自前で一から構築するとなると、かなりの手間と時間を要するのも事実だ。そこで、これまで企業が長年運用してきたOracle Databaseおよび周辺アプリケーションの資産を最大限に生かしながらクラウド移行できるよう、さまざまなクラウドベンダーが、クラウドインフラでOracle Databaseの環境を手軽に利用できるPaaS(Platform as a Service)やマネージドサービスなどを提供している。
よく知られているサービスの一つが、Oracleが直接運営する「OCI」(Oracle Cloud Infrastructure)だが、実はこれをGoogle Cloudで利用できるサービスも存在する。GoogleとOracleが共同で運営する「Oracle Database@Google Cloud」だ。
これは、OCIと全く同じハードウェアとソフトウェア基盤を、Google Cloudのデータセンター内にOracleが構築、運用し、GoogleがGoogle Cloudサービスの一つとして提供するものだ。このような提供形態が持つメリットについて、大久保氏は次のように説明する。
「Google Cloud内で業務アプリケーションとOracle Databaseを直接接続できるため、極めて低レイテンシでの通信が可能になります。性能にシビアなアプリケーションや、大量のトランザクションが発生するバッチ処理などのワークロードには特に適しています。特にバッチ処理は小さな遅延が積み重なって大きな影響につながるため、この点は重要です。『Gemini』や『Vertex AI』といったGoogleの各種AIサービスとも直接接続が可能で、Oracle Databaseで管理しているデータを活用したAIアプリケーションを、より効率よく開発、運用できるようになります」
Google Cloudは、Kubernetesのフルマネージドサービス「Google Kubernetes Engine」(GKE)や、サーバレスのアプリケーション基盤「Cloud Run」といったコンテナ関連の各種マネージドサービスも取りそろえている。Oracle Database@Google Cloudを使えば、これらも同じGoogle Cloudのデータセンター内でOracle Databaseと直接連携できるため、既存アプリケーションのモダナイズやアプリケーションの開発・運用効率の向上が期待できるという。
ネットワークをシンプルに構築、運用できる点も、Oracle Database@Google Cloudの大きな特徴だ。多くのクラウドサービスはリージョンごとにネットワークを個別に設計、構築する形を取るため、複数リージョン間を接続するには別の仕組みを導入する必要がある。しかしGoogle Cloudの場合は、世界中の全てのリージョンにわたって単一のアドレス体系でネットワークを構築、運用できる。そのため、海外拠点を多く構えるグローバル企業にとってはメリットが特に大きいと言える。
複数リージョンをまたいだDR(災害対策)サイトも構築しやすい。Googleは現在、日本国内ユーザー向けに東京リージョンでOracle Database@Google Cloudのサービスを提供中だ。今後12カ月以内に大阪リージョンでもサービスを開始する予定とアナウンスしており、国内2拠点をまたいだDRサイトが構築できるようになる。
Google Cloudの各種サービスと同一の管理コンソールで、OCIと全く同じインフラストラクチャを一元管理できる点も強みだと大久保氏は話す。「Oracle Database@Google Cloud は、Google Cloudの管理コンソールからOracle Databaseの管理作業ができます。システム管理者は使い慣れた管理コンソールで日常的な作業を行えるので、作業が効率化します。もちろんOCIの管理ツールも利用可能ですから、Oracle Databaseのより詳細な情報を取得したい場合には、OCIのツールをお使いいただけます」
オンプレミスのOracle DatabaseをクラウドのOracle Database@Google Cloudに移行するときは、「Oracle GoldenGate」や「Oracle Data Guard」など、オンプレミスのOracle Databaseマイグレーションに用いられるツールや技法がそのまま利用できる。
ただしOracle Databaseを用いて構築した業務システムの規模や構成は千差万別だ。入江氏によれば、技術的なハードルに突き当たることもあるという。
「当社はこれまで900件を超えるOracle Databaseマイグレーション案件を手掛けてきましたが、レガシー環境の移行ではさまざまな課題にぶつかり、非常に神経を使います。アプリケーションの互換性が問題になることも多く、例えばOracle Databaseのバージョンが新しくなることでSQLの仕様が変わり、アプリケーションの動きが不安定になるようなことは多々あります」
そこでシステムサポートは、Oracle Databaseの移行を検討する企業に対して、現状の環境を調査し、移行に当たりどのような課題が存在するかを分析、評価する「診断サービス」を提供している。アプリケーションの互換性を細かく調査し、具体的な修正方法まで案内するサービスも提供しており、「これらのサービスは、オンプレミスからOracle Database@Google Cloudへの移行でも極めて有用です」と入江氏は力説する。
このようにGoogleは国内パートナー企業との連携を通じて、Google Cloudの国内ユーザー企業に対してOracle Database@Google Cloudの魅力を広くアピールしていこうとしている。
「Oracle Database@Google Cloudを活用することで、これまでオンプレミスのOracle Databaseアプリケーションに閉じて使われていたデータを、データウェアハウス『Google BigQuery』を使って他システムのデータと突き合わせて新たな知見を得たり、GoogleのAIサービスと組み合わせて新たなサービスを開発したりすることが可能になります。既存のOracle Database資産をより活用したいと考えている企業にとって、Oracle Database@Google Cloudは価値の高いソリューションになると考えています」(大久保氏)
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