ソフトウェア開発の短納期化が進む中、QA(品質保証)はビジネス価値を左右する重要な要素だ。ポールトゥウィンは膨大な実績と自動化技術を武器に、テスト自動化や内製QA支援で独自の存在感を発揮。同社の取り組みは、企業の競争力をどのように変えるのか。
デジタル化の遅れに警鐘を鳴らした“2025年の崖”。その2025年を迎えた今、コロナ禍を経て一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進した企業がある一方で、今なお取り組みが進まず危機感を強める企業もある。成果を急ぐあまり、品質に問題を抱えたままサービスをリリースした結果、トラブルが発生し炎上してしまった事案も散見される。
ITサービスのQA(品質保証)は、ビジネスの価値に直結する。QAに対する意識やニーズの高まりについて、「ITを導入して事業拡大を目指す取り組みが、これまでアナログ主体で狭い範囲のビジネスを展開していた企業に拡大した結果、ソフトウェアテストのニーズも一気に増えました」と語るのは、第三者検証企業大手ポールトゥウィンの西 潤一郎氏(取締役CSO)だ。
ポールトゥウィンのQA事業に対する顧客企業のニーズも変化しているという。「単にテスト業務をBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)するだけでなく、品質を確保した上でいかに素早くリリースするかが重要です。AI(人工知能)を活用してテストを自動化するなど、ソフトウェアテストにおける効率化のニーズが高まっています」
ビジネスを加速させるためにソフトウェア開発の短納期化が進む中、QAもおろそかにできない――。IT人材不足の深刻化によってAIや自動化といった技術による解決アプローチに期待が寄せられる一方で、自動化を導入すること自体が難しい企業が大半なのが現状だ。開発だけでなくQAも内製化する動きがある中、第三者検証企業はどのようにしてビジネスの品質確保というニーズに応えてくれるのだろうか。
ゲームデバッグのBPOを祖業として設立してから30年以上、ポールトゥウィンは国内の主要パブリッシャーを顧客にデバッグサービスを提供してきた。世界各国に事業会社を展開し、グローバルでも有数の規模を誇る。そこで蓄積したノウハウや、3000人を超えるテスター人材を生かし、ゲーム会社以外のエンタープライズ領域に向けて事業拡大を図っている。
成長の新たな軸は、ソフトウェアテストサービスを中心とするQA事業だ。これまで3500社以上にソフトウェアテストサービスを提供し、テスト項目消化数4920万以上、不具合検出数197万件以上という圧倒的な実績を誇る。ゲームデバッグのBPO事業、カスタマーサポート事業(コールセンターBPOなど)、QA事業の3つが、同社を支える柱となっている。
QAの枠組みに脆弱(ぜいじゃく)性対策などのセキュリティも含まれるようになって久しいが、ポールトゥウィンはセキュリティを専門とするパートナー企業との事業提携によって、セキュリティ面の品質保証にも注力している。開発プロセスの上流工程から関わり、リリース前に脆弱性やバグを削減する効果を高める“シフトレフト”のアプローチも同社QA事業の特徴といえる。
「これまでは最終的な品質チェックを託されることが多かったですが、最近は要件定義や基本設計といった上流工程から関わるケースが増えています。経験やデータに基づく分析とフィードバックを早い段階で提供することで、納期短縮やコスト削減といったお客さまのニーズに応えられます。これはポールトゥウィンの強みの一つになりつつあります」
現在約600人のスタッフからなるQA事業は、顧客ニーズを3つに大別し、それぞれに適したサービスを提供するチームで構成される。
1つ目は、週単位のスケジュールでリリースしなければならないテストに対応する組織で、社内で「スポット系」「短期系」と呼ばれている。ここではスピードと品質のバランスを考慮して顧客と事前にすり合わせをした上で、慎重な設計が求められる。2つ目のチームは対極的に、品質向上に向けた顧客の取り組みを比較的長いスパンで支援する。内製QAチームの一員としてポールトゥウィンのメンバーが参画することも多く、顧客のサービス提供の状況(ステージ)に応じて人材リソースを調整しながら、テストの状況を分析して、いかに効率的にリリースできるか、品質を保証できるかどうかが求められる。3つ目のチームは、スタートアップなど急成長のフェーズにある顧客を対象とし、企業としての品質保証体制を支える役割を担う。
加えて、この3チームに横串を刺す形で支援する4つ目のチームを設け、テスト自動化サービスなどの提案を技術面からレベルアップさせたり、新技術導入などの横断的なサポートを提供したりしている。
「弊社は社内に『先端技術研究室』といったR&D(研究開発)組織もあり、生成AIの活用に向けた研究を進めています。横串のチームは、先端技術研究室の知見や新開発したサービスを3つのチームに共有し浸透させる役割を担っています」
R&Dの成果の一つとして、独自の総合テストプロジェクト管理ツール「FAQT」について触れておきたい。要件、リソース、テスト、スケジュールなどをワンストップで管理し、データを蓄積することでQAをデータ分析の観点から加速するシステムだ。テスト自動化ツールとの連携も可能で、内製QA組織の生産性向上を支援するツールとなっている。
4つのチームによるQA事業展開の狙いは、自動化導入や業務標準化によるQA事業の効率化、ひいては社内リソースの強化にある。ITエンジニア不足が叫ばれるようになって久しく、この状況はポールトゥウィンも例外ではない。新規採用が困難を極める中、人月系のマニュアルテストの自動化はリソース不足を解消し、事業全体の生産性を向上させる切り札となり得る。先端技術研究室が生成AIのノウハウを、技術支援チームを介して3チームに浸透させる体制はそのためのものだ。
QA事業の業務効率が飛躍的に向上すれば、顧客企業に対して新たなビジネス展開を提案できるようになる。現在その実現に向けて全てのエンジニアが何らかのテスト自動化ツールを使いこなせるよう、エンジニア教育を急ピッチで進めている。テスト自動化に関する高度なノウハウやスキル、ツールを含め提供するソリューションの選択肢の多さなどは確実にポールトゥウィンの武器となりつつある。
ポールトゥウィンという会社の強みとして、西氏は“多様なバックボーンを持った人材”と“人材育成”を挙げる。そもそもテスターの経験者などが少なく、未経験の人材を採用し育成するしかなかった時代からゲームデバッグ事業を開拓し、さまざまな工夫をして少しずつリソースを拡充し、レベルアップを図ってきた成果だ。
「全くの初心者でもテスターとしての実務ができるよう、チェック業務を一つ一つ標準化してテスト項目書にまとめました。ソフトウェア開発とは何の縁もない人材でも、経験を積みながらテストケースを作るエンジニアやプロジェクトマネジャーにまで成長し、事業を支えてきた歴史があります。多様な視点で物事を判断できる人材が多数在籍していることは、当社の強みとなっています」
このように品質に関する悩みを抱える企業の課題解決を支援するポールトゥウィンは、取り組みをさらに加速させている。
その一つが、インダストリーカットのビジネス課題解決を支援するアプローチだ。例えば2025年1月には、「外食未来☆支援プロジェクト」という、外食産業が直面する「店舗の人材不足」と「IT化の停滞」といった課題を解決するための施策が動き出した。ポールトゥウィンはカスタマーサポート(CS)やSNS・レビュー監視などのBPOに加え、独自の外国人労働者マッチングサービスを提供。POSレジやオーダーシステム、公式アプリなどのQAとテストソリューションも提供している。こうした取り組みは、飲食業界に限ったものではなく、同様の課題を抱える他業界からもすでに関心やニーズが寄せられている。
「ポールトゥウィンはゲームデバッグ事業、QA事業、CS事業が連携し、業界特有のサポートニーズへ継続的に応えていきます。システムやサービスを組み合わせて多様なニーズに応える総合力は、他のソフトウェアテストサービス事業者にはない強みだと自負しています」
もう一つが、同社が注力し続けている内製QAの伴走支援だ。顧客企業のQAチームの一員にポールトゥウィンのエンジニアが加わり、QAのライフサイクル全体を回しながらテスト自動化の導入など新たなチャレンジをサポートする。「第三者検証という立場にとどまらず、顧客のビジネス課題に1歩踏み込んで『第2.5者』『第1.5者』というスタンスを目指す取り組みです。ここで言う『第2.5者』『第1.5者』とは、公平な立場で品質を検証できる者が、当事者にも寄り添いながら、より実践的かつ効果的に品質を確保していくという考え方です」と西氏は説明する。
この他、ソフトウェア開発を手掛けるグループ子会社SynX(シンクス)との連携による新たなサービスの準備も進めている。「実は私はSynXの代表も務めています。テスト自動化のコードを生成AIで自動生成するなど、生成AIを活用したテスト技術の開発を進めているところです」と西氏は力を込める。シフトレフトのアプローチをさらに進化させる取り組みとして今後に注目したい。
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提供:ポールトゥウィン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年6月15日