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@IT > 「Sun Virtualization Solution Day」イベントレポート |
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OS実行環境にとどまらないSunの総合的な仮想化技術 昨今流行のキーワード“仮想化”といえば、真っ先にあるOS上で別OSを動かすことを思い浮かべる読者も多いかもしれないが、もともとコンピューティングの世界で仮想化というのは、もっと広い用途で使われる言葉だ。
サン・マイクロシステムズの仮想化の取り組みも、CPU、OS、ストレージ、クライアントと、幅広い分野で行われている。同社執行役員でマーケティング統括本部長の杉本博史氏は、Sunの仮想化の長年の取り組みと幅広さを指摘する。「Sunは20年前から仮想化に取り組んでいます。例えば1985年にはファイルシステムの仮想化に取り組みましたし、10年前からはJavaバーチャルマシンも提供しています」。最近ではUltraSPARC T1プロセッサでCPU自体に仮想化をサポートする技術を採り入れているほか、OSのSolaris 10も無償提供されるSolarisコンテナでOSの仮想化を強力にサポート。ストレージでは、Sun StorageTekの技術を用いてテープドライブやハードディスクの仮想化に取り組んでいる。
そして現在、最も注目されているのがOSの仮想化だ。
サン・マイクロシステムズ システムズ・ビジネス統括本部 本部長の古山慶一郎氏は、現在企業が抱える課題としてデータセンターにおける電力消費量の増大と、十分に利用されていない非効率的なシステムを挙げる。ネットワークの発達によって、扱うデータ量やトランザクションは飛躍的に増大。その結果、「一般的なデータセンターでは年に8%の割合で電力消費量が増えている」(古山氏)という。こうした課題に対する有効な解の1つが仮想化だ。OSを仮想化することにより、あたかも1台のサーバが複数サーバであるように機能する。物理的なサーバ数を減らすことで、電力消費コストや設置スペースを含めた管理コストを削減できるのだ。 Solarisの仮想化はOS標準機能で無料Sunの最新OSであるSolaris 10では標準でOSの仮想化をサポートする。OSの仮想化といえば、VMwareを思い浮かべる読者もいるかもしれないが、VMwareはx86の仮想マシン環境を提供し、そこにホストとなるOSを載せるという意味で、実際にはハードウェアの仮想化ソリューションだ。ホストOS自体には手を加えない。これに対して、Sunが無償で提供する「Solarisコンテナ」と呼ばれる仮想OS技術では、OS自体で仮想化を実現している。この方式ではSolaris上に、直接Solarisコンテナが動作するため、VMwareのように仮想マシンによるオーバーヘッドがないというメリットがある。各コンテナは互いに独立しており、集約によるセキュリティレベルの低下がないことも重要なポイントだ。
Solarisコンテナは、1つのOSインスタンス上に理論上、最大8192個まで利用可能。パフォーマンスとの兼ね合いはあるが、1台のサーバ上で必要なだけ独立したOSを走らせることができるわけで、利用効率の低い多数のサーバを、少数のサーバに集約することが可能だ。各コンテナには優先順位をつけることができ、柔軟なリソース配分も可能だ。 前出の古山氏はSolarisコンテナの成功例として、大手通信事業者のVoIPソリューションを例示。Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベース、ファイアウォール、スイッチなど、13台のSolaris 9搭載のサーバで構成されたシステムを、2台のSolaris 10 搭載のサーバに置き換えることができたという。2台のサーバでは合計13個のSolarisコンテナが稼働し、ハードウェアリソースの利用効率がアップ。電力消費量が削減できたほか、各サーバの結線など物理的な維持コストも削減できたという。
Solarisコンテナで威力を発揮するCMT仮想化による高い集約性をハードウェア面から支えているのが、UltraSPARC T1プロセッサで採用されている「チップ・マルチスレッド・テクノロジー」(CMT)だ。1つ当たり4スレッドまで実行可能なコアを、合計8コア搭載。32スレッドを同時実行するという超並列処理プロセッサだ。「現在、典型的なプロセッサの使用率は、わずか15〜25%です。そこで1スレッド当たり処理の高速化はやめて、Sunは発想を転換しました。CMTではスレッドを並列化してCPUリソースをフルに使います」(前出古山氏)。これは、UltraSPARC T1プロセッサの開発コードネームである「Niagara」(ナイアガラ)のイメージに合う。ナイアガラの滝を流れ落ちる水流の1本1本は少量でも、675メートルという広い滝幅から流れる落ちる水量は圧倒的なものになる。
結果はSolarisコンテナ数が1個のとき728PV/secだったものが、4個で2730PV/sec、8個で3349PV/secと4個以上の構成で高いパフォーマンスを叩き出したという。CPU利用率で計算すると、20%前後(1個時)、80%前後(4個時)、ほぼ100%(8個時)となり、「Solarisコンテナを活用することで、CPU利用率が向上し、それにともない全体のスループットが向上した」(前出寺田氏)という。一般的なOSSミドルウェアを活用したWebアプリケーション用途でも、Sun Fire T1000/Sun Fire T2000の高い実力が証明された形だ。 実際に自社で性能を試したい読者には、「Try&Buyプログラム」がお勧めだ。UltraSPARC T1を搭載したSun Fire T1000/Sun Fire T2000、AMD Opteron搭載のSun Fire x64サーバなどを無償で60日間試用できるサービスだ。まずは使って頂き、効果が認められた場合にはそのまま購入、仮に期待した効果が認められなかった等の場合には返却できる。 今後に登場予定の高度な仮想化ソリューションすでに有用な仮想化ソリューションを提供するSolaris 10とSolarisコンテナだが、さらに注目の仮想化関連技術が2つ、今後のSolarisのアップデートで予定されている。 1つはLinuxアプリケーションのバイナリを、Solarisコンテナで実行するための「Solaris Containers for Linux Applications」(SCLA)。これにより他のベンダのハードウェア上で運用中のLinuxアプリケーションを、Solaris 10上に容易に移行させることが可能になる。 もう1つの機能は「論理ドメイン」(Logical Domain)。OSやアプリケーションを仮想環境で稼働させたまま、そこに割り当てる仮想CPUの数やメモリ量を動的に変更できる機能で、これまでミッドレンジ以上の上位サーバでは物理的なCPU/メモリボード単位で実現されていたものだ。今回のイベントでは、この未リリースの論理ドメインの機能がいち早くデモンストレーションされた。 論理ドメインには、すでにUbuntu Linuxなどが対応しており、デモンストレーションでは2つのSolaris 10と1つのLinuxを同時に稼働。リアルプレーヤーでストリーミングの動画を表示している仮想OSに対してコマンド1つで仮想CPUを追加・削除するなど、目を疑うような柔軟な構成変更を行って見せた。論理ドメインはSolarisコンテナと異なり、ハードウェア上にハイパーバイザーと呼ばれる管理レイヤーを配置し、その上でOSを走らせる構造になる。 こうした仮想化技術によってさまざまな実行環境がSolaris上に移行可能となっている。そして移行した実行環境はSolarisであれ、Linuxであれ、今後登場する新ハードウェアでも、そのまま利用可能であることも重要なポイントだ。Sunは明確なロードマップのもとに仮想化を推進しているため、今後さらにマルチスレッド化やSMP化が進むと見られるプロセッサ/サーバでも、フルにハードウェアの高性能化のメリットを享受できるというわけだ。
Sun Fire x64サーバでXenやVMwareも活用ここまではSolarisの仮想化技術を中心にイベント内容をレポートしてきたが、もちろんSunにはSun Fire x64サーバのラインナップがあり、XenやVMwareも利用可能だ。 VMwareを用いても、これまで述べてきたサーバ統合などのメリットを享受できるが、さらに注目したいのは「VMware Vmotion」という機能だ。これはある仮想環境上で稼働するOSとアプリケーションを、ストップすることなく別の仮想環境上に瞬時に移す技術だ。物理サーバの故障や保守の場合、通常はいったんOSを停止することになる。VMware Vmotionを使えば、別サーバ上にOSごと移して実行を続けることができるため、サーバプロセスを無停止のまま保守が可能になる。 また、ユニアデックス 商品戦略部マーケティング&プロデュース室 チーフアーキテクトの高橋優亮氏はVMware利用のメリットとして「仮想化されたOS環境は、1つのフォルダに収めた、数個のファイル群になる」ことを挙げる。このファイル群をコピーまたはバックアップすれば、クローンサーバ環境を作ることができ、パッチ当てテストを行ったり、運用環境から開発環境を派生させることができるなど、運用上のメリットがあるという。
全面的に仮想化ソリューションを提案するSun冒頭の杉本氏の話にあったように、Sunの仮想化技術はOSだけにとどまらない。今回のイベントではストレージの仮想化やデスクトップ仮想化についても紹介された。 サン・マイクロシステムズ プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部の西村学氏によると、ストレージの仮想化とは「中央管理コンソールから一元管理可能な、複数のネットワークデバイス上の物理ストレージのプール化」することを指す。仮想化の対象としてはハードディスク、テープドライブがある。 ハードディスクの仮想化では、既存ディスクをプール化することで、単一の管理ツールで異なる機種のストレージを管理できるメリットがある。また、バックアップ用途で使われることの多いテープドライブの仮想化では、テープカートリッジの規格が容量が変わったときにも、仮想テープボリュームを媒介することで既存のバックアップ環境に手を加えることなく、最新の大容量テープメディアを利用できるなどのメリットがある。 デスクトップの仮想化は、サーバ側にクライアント環境をすべて持たせてしまうというシン・クライアントソリューションを指す。Sunのシン・クライアント「Sun Ray 2」は、従来のシン・クライアントとは異なり、ローカルにアプリケーション実行用のメモリや、データ保存用のディスクを持たない。サーバ側で実行されるデスクトップ画面のビットマップ表示にだけ特化したクライアントだ。かつてのXサーバ端末にも似ているが、Xサーバ端末と異なり、Sun Ray 2はOSすら持たない。Sun Ray 2の消費電力は、わずか4ワット程度で運用管理費用の削減が可能だ。 1つはサーバへの計算資源の集約を推し進める「Sun N1 Grid Engine」。ユーザーが投入するジョブを効率よく分散、実行することで、CPUの利用効率を最大限に高める、大規模なサーバ群向けのグリッドコンピューティングソリューションだ。
また、10月に発表した「Project Blackbox」は“データセンターの仮想化”とも言うべき斬新なアイデアだ。米国で利用されている標準的な輸送コンテナを、1つの完結したマシンルームとして扱おうというもの。250台のサーバを搭載するコンテナは、2TBのメモリと2PBのストレージを備える非常に集約率の高いデータセンターとなる。「電源、水道、インターネットだけあれば、どこに置いてもいい」(前出杉本氏)というユニークな製品だ。ビルの屋上や野外など、これまで考えられなかったような場所に設置することも考えられ、過密化する都市部に新たにデータセンターを構築するよりも、はるかに現実的な解となりうるかもしれない。 OS、ストレージ、ネットワーク、CPU、デスクトップと多様な仮想化ソリューションを提供するSunだが、今回のイベントに参加してみて、応用範囲が広いことや仮想化によるコスト削減効果を実感した。特にSun Fire T1000/Sun Fire T2000と組み合わせたときのSolarisコンテナの高いパフォーマンスには目を見張るものがある。 また、Sunは仮想化技術の啓蒙や教育にも力を入れており、コンサルティングが可能な人的リソースも豊富だという。仮想化を検討するなら、技術面ばかりでなく、適切なソリューションをアドバイスしてくれるパートナーを選びたいものだ。
サン・マイクロシステムズ株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT編集部 2007年1月26日 |
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