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@IT > SPSS製品 導入事例探求 第20回 タカラインデックスeRラボ編 |
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玩具業界では、昨年大型合併が実現した。2006年3月、旧タカラ、旧トミーが1つになり、「株式会社タカラトミー」が新たに誕生したのである。同社では近年、データベースマーケティングに力を入れてきていたが、その運営は、関連会社の「タカラインデックスeRラボ株式会社」が一手に引き受けている。 そこで、今回は、タカラインデックスeRラボ データベースマーケティング部 マネージャー 神谷謙五氏、および同マネージャー 福家正和氏の両氏に、タカラインデックスeRラボにおけるデータベースマーケティングの取り組みについて話をお聞きした。
リカちゃん、チョロQ、プラレール、トミカ……子供のころ、これらのおもちゃのどれかを誰もが一度は手にしたことがあるのではないだろうか。タカラトミーでは、ロングセラーとなっているこうした定番商品以外にも、近年は、幅広い層をターゲットとした新商品を次々と開発している。 例えば、癒やしを求める20〜30代の女性に受けている「のほほん族」(愛らしいキャラクターがゆっくりと首を振るおもちゃ)、30〜40代の男性の購入が目立つ「エアロソアラ」(超小型・軽量のラジコン室内飛行機)、中高年の間で人気となっている「ろくろ倶楽部」(手軽に陶芸が楽しめる電動ろくろセット)などである。 また、犬の言葉が分かる画期的な商品として愛犬家に爆発的に売れた「バウリンガル」(犬の鳴き声を声紋分析する犬語翻訳機)は、同社が企画し、携帯電話関連サービス大手のインデックスなどと組んで開発したものである。ちなみに、このバウリンガルは同社の女子社員のアイデアが発端となって開発が始まったそうだ。
同社では、上述したように、幅広い年齢層に向けた斬新なヒット商品を次々と世の中に送り出してきてはいるものの、玩具業界全体としては、少子化による市場の先細り傾向や競争の激化、エンドユーザーの嗜好の多様化が進んでおり、前にもましてヒット商品を生み出すことが難しくなっているという。携帯ゲーム機など、従来のおもちゃと直接競合する商品が増加していることに加えて、女児の場合、化粧品やファッションに対して早くから関心を持つようになってきているため、おもちゃ離れが進んでいるのだそうだ。 このような市場環境の変化に適応するためにも、同社は顧客のニーズをより的確に把握する必要性を感じていたという。ところが、基本的に玩具は卸・小売の流通チャネルを通じて販売されるため、玩具メーカーである同社にとって顧客情報の入手は容易ではなかった。そこで、顧客情報を直接収集できる仕組みを構築し、分析・活用するための「データベースマーケティング」に着手したというわけだ。
同社のデータベースマーケティングの取り組みは、2004年にさかのぼる。当時のタカラ社長の命により同年6月、データベースマーケティング事業部が発足。2005年2月には、同事業部初の成果としての「商品購入アンケートシステム」の導入に成功する。 これは、商品購入者が、購入商品についてのアンケートをインターネット(PC・携帯電話)で回答できる仕組みである。 従来は商品に添付したアンケートはがきを返送してもらっていたが、手書きのアンケートでは、回答内容を手入力でデータ化しなければ集計できないため、せっかくの顧客情報の分析、活用があまり進まなかったという。そこで、インターネットでのオンラインアンケートに全面的に移行することに決定したのである。 「はがきからオンラインアンケートへの切り替えに際しては、社内では若干の抵抗もありました。果たして従来通り回答が集まるのか、という不安の声があがりました。しかし、アンケートシステムの導入に踏み切ってみると、むしろ、喜んで受け入れられる結果となりました」(福家氏) 同社のアンケートシステム導入が成功した理由としては、次の3点が挙げられるという。
さらに、2005年8月には、一元化された顧客データベースを核とするCRMシステムが完成する。以来、データベースに登録された顧客を対象とする同報メール(メルマガ配信などが目的)や、ECサイト、一般ユーザーを対象とするネットアンケートなど、顧客との直接的な対話が行える仕組みを整備してきている。 同社がもつ顧客データベースには、商品購入者のアンケートだけでなく、その他のさまざまな入り口から顧客データが収集され、一元的に管理されているそうだ。顧客データの入り口としては、具体的には、リアルなキャンペーンやイベントの来場者、個別商品のファンクラブ、各種消費者アンケートなどがある。 そして、顧客データベースの情報(属性、購入者履歴、キャンペーンなどの応募履歴等)はSPSSなどの分析ソフトによって分析され、エンドユーザー向けに配信するメルマガのセグメントなど活用されている。 なお、冒頭に述べたように、タカラトミーのデータベースマーケティング事業部は、2006年6月に関連会社のタカラインデックスeRラボに部署ごと移管され、CRMシステムをタカラインデックスeRラボのデータベースマーケティング部が業務委託を受けた形で運用されている。
同社は、顧客データベース構築後、顧客DBに蓄積された各種データをより深く、詳細に分析するためのデータマイニングソフトを探していた。ソフト選定の前提としては、基本的な分析機能が充実していることと、それによってソフトのカスタマイズができるだけ不要であること、さらに導入からサービスインまでの期間ができるだけ短縮されることを重視したという。 神谷氏によれば、当初、データ分析だけでなく、分析後の顧客とのコミュニケーションの実行まで連動して展開できるCRMソフトの導入も検討したそうだ。しかし、そうしたCRMソフトは分析・実行手順がある程度定型化されているため、その手順に自社業務がうまく適合しないかぎり、どうしてもカスタマイズが必要になり、実際に分析業務に使い始めるまでに相当な時間がかかってしまう。そうした理由で採用を見送ったものもあったという。
最終的に同社が選択したのはSPSSの「Clementine」だった。なお、同社にはClementine本体だけでなく、自社のWebサイトの分析やWebアンケートで収集したテキストデータの分析を目的として、「Web Mining for Clementine」「Text Mining for Clementine」も併せて導入されている。 Clementineの採用を決めたポイントについて神谷氏に聞いたところ、まず、分析の流れがストリームとして表示され、ビジュアルに確認できて分かりやすいこと、またぱっと見の「とっつきやすさ」を挙げてくれた。 あまり分析業務になじみのない人にとっても、抵抗感なく使う気にさせるClementineの親しみやすいユーザーインターフェイスを高く評価したそうだ。
「また、これまでの実績も重視しました。すでにさまざまな業種・業態の多くのユーザー企業に導入されていれば、先々のサポートも安心ですし、機能面での発展性も期待できます」(神谷氏) 同社では、Clementineを使用して、顧客がどんな商品を一度に買っているかを分析できる、いわゆる「バスケット分析」(併買行動の分析)や、顧客データに基づくグルーピングを行う「クラスター分析」などに取り組んでいる。また、アンケートの自由回答部分については、「Text Mining for Clementine」を活用して、自由回答に潜むユーザーについての新たな知見を得ようとしているそうだ。
同社のWebサイトは、1日のアクセスが数百万にものぼる人気サイトであり、アクセスログデータも膨大である。このアクセスログ分析には、「Web Mining for Clementine」が使用されている。同社の場合、バッチ処理でログデータの集計・分析が自動化されているのが特徴だ。
Web Mining for Clementine には、極めて処理速度の速い集計エンジンが搭載されており、タカラトミーのホームページが生み出す膨大なログデータを夜間に難なく処理できる。ちなみに、Web Mining for Clementineが持つ高速処理という強みは、もともとログデータ分析ソフトとして定評のあった専用ソフトをClementineのアドオンソフトとして組み込むことで実現している。 Clementineのバッチ処理は従来、基本的な機能が提供されているのみだった。しかし、2006年に分析業務を日常の業務サイクルに組み込むことを容易にする「SPSS Predictive Enterprise Services」と呼ばれる管理ソフトが登場したことにより、Clementineの機能性は大きく向上している。分析業務を自動化して業務に一体化させることを望むタカラトミーのような企業にとっては、より一層使いやすいソフトになったといえるだろう。 また、神谷氏は、Clementineの隠れた魅力を指摘してくれた。
「生データを加工するツールとしても、Clementineは大変優れていると思います。データの加工ツールとしての利用価値も、かなり高いのではないでしょうか?」(神谷氏) 実際、Clementineは分析やモデリングのためのツールというだけでなく、いわゆる「ETL(Extract/Transform/Load)ツール」としても高機能であるため、データの抽出や加工、データベースへの書き出しにも大いに活用できそうだ。
同社では、アクセスログデータとECサイトでの購入データ、顧客DBの顧客属性データなどを組み合わせて、より深い顧客の行動分析に取り組んでいきたいという。また、分析方法についても、決定木分析などさまざまな手法にチャレンジしているそうだ。そうした発展的な分析の取り組みの一例として、ある人気キャラクターについての分析を簡単にご紹介しよう。 子供を中心に絶大な人気を誇る「ポケットモンスター(通称:ポケモン)」には100種類を超えるキャラクターが存在している。ポケモンのファンであるユーザーに対して、好きなキャラクターを3つまで選んでもらうアンケートを行い、そこで選ばれたポケモンのキャラクター間になんらかの関連性があるかどうかを分析してみたそうだ。Clementineで分析すると、キャラクター間の相関関係は「Webチャート」と呼ばれるくもの巣のようなビジュアルなイメージで把握することができる。
「この分析結果の活用方法としては、例えば、関連性の高いキャラクターを並べて売り場に配置することにより、商品の併買率を高めることができるかもしれません」(福家氏) 子供だけでなく、大人にもある「遊び心」を刺激する楽しいおもちゃが、同社のデータベースマーケティングの活用によって、今以上に数多く登場することを期待したい。 提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局 掲載内容有効期限:2007年4月11日 |
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