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ITIL V3の登場でV2までの欠点も改善

運用の見える化を実現し、
コスト削減に貢献するITIL

ITシステム投資の7割以上を占める”といわれている運用コスト。一方で、日本版SOX法や工事進行基準などの法規制に対応するために、多くの企業ではITシステムへの追加投資が必要だ。そんな中、TCO削減のために運用コスト削減に腐心している経営者は多い。
また、昨今では環境負荷軽減が経営課題の上位に上がってきていることから、グリーンITや次世代データセンターなど、コスト削減と環境対応の2つの観点からシステム運用の改善に取り組む企業も増えている。そのような状況下、ITインフラ運用のベストプラクティスとしてニーズが増えているのがITILだ。

    ニーズの増加によって普及を加速させるITIL

 ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、英国商務局(OGC : Office of Government Commerce)が、ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスを集めたガイドブック。

 特徴は、ITサービスにおける「プラン」「開発」「提供」「維持」の各プロセスごとにガイドラインを定めている点。IT部門は、その各ガイドラインに合わせてサービスレベル合意書(SLA)を締結することで、日々のプロセスを改善し、全体最適を目指すことを推奨している。

 ITILというと、“ISOのような規格やルールの一種だ”と思っている人がいるようだが、これは勘違いだ。ITILはIT運用に関するガイドブックなので、そこに書かれていることを必ず守らなければならないわけではない。現実問題として、企業の置かれている状況はさまざまだ。そのような自社の状況に照らし合わせ、IT運用に関する参考書として、役に立ちそうな部分やツールをうまく“活用”するのが、ITIL本来の使い方だ。

 英国で策定されたITILだが、その利便性の高さから、英国を筆頭として米国やオーストラリア、日本など世界中で導入が進み、昨今では「ITサービス管理のデファクトスタンダード」と呼べる存在となっている。国内では、2003年にメーカーなどが中心となって「ITサービスマネジメントフォーラムジャパン」(itSMF Japan)を設立し、全国で啓蒙活動などを行っている。

 そのITILにおいて、根本的な思想として挙げられているのが、「ITこそがビジネス、ビジネスはITそのもの」という概念だ。これは、「もはやITとビジネスは切っても切れない関係にある」ということを前提として踏まえ、IT部門だけが関係するのではなく、よりビジネスと密着させて考えるべきだという概念だ。この考えに従って、IT部門はユーザー部門や経営者とSLA(サービス品質保証契約)を締結することで、ITサービスのプロセスだけでなく、ビジネスのプロセス全体を改善することを目指している。

 中でも、ITILが特に注力しているのが、企業の「人」「プロセス」「技術」に関する最適化だ。ここでいう「人」とは、実際にシステムを運営するスタッフや部門長やCIOを、「プロセス」はコストを投下され、期待されるアウトプットを出力するためのチームを、「技術」はシステムの構成やリソースの管理、実装などを指している。人・プロセス・技術に関する各要素で、ITILに定められたガイドラインに準じて継続的に改善し、組織としてPDCA(Plan→Do→Check→Action)のサイクルを回していくことがITILの本質だ。

    ITILの核となる「サービスサポート」と「サービスデリバリ」

 ITILのガイドラインは8冊の書籍にまとめられているが、その中核となっているのは、日常的な運用管理作業をテーマとした「サービスサポート」、そして中長期的な運用管理計画の策定を扱った「サービスデリバリ」だ。

 サービスサポートは日常的なシステム運用やユーザーサポートに関するもので、1つの機能と5つのプロセスで構成されている。機能では、ユーザーからの問い合わせ窓口となる「サービスデスク」が、プロセスとしては「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」「リリース管理」「構成管理」が規定されている。

 サービスデリバリは中長期におけるシステム運用管理に関する計画と改善についてまとめたもので、5つのプロセスで構成されている。このプロセスは、上位に「サービスレベル管理」(SLM)があり、ここで策定したサービスレベルを達成するために、「可用性管理」「キャパシティ管理」「ITサービス財務管理」「ITサービス継続性管理」の4つのプロセスが置かれている。

 ITサービス提供の中心として「サービスデスク」を設置し、ユーザーからの問い合わせ対応の起点にする。つまり、ユーザー部門からの問い合わせにはサービスデスクが一括して受け、問題を解決する仕組みだ。そして、実際に問題を解決する際には、サービスを速やかに回復させるための手引きや手順が記載されている「インシデント管理」を参考にする。

 一方で、問題の原因がシステム構成に関する内容で、今後も同様の問題が頻発することが予想される場合には、「問題管理」のカテゴリで、その根本的な原因を探れるような構成となっているのだ。

    ITIL導入のメリットは“IT運用の見える化”

 では、ITILを導入するメリットには、どのようなものが期待できるのだろうか。

 導入メリットは、「システム運用者」と「経営者」の2つの視点から考えることができる。システム運用者にとってのメリットとは、運用をシステム化することで、日常業務の効率化が期待できる点だ。トラブル対応を例にすると、ITIL導入によって「ITリソースの構成が把握できている」ことや、「過去の事例を参考にできる」「対処の手順が明確化されている」ことなどから、効率的に対応できるようになる。

 他方の経営者のメリットは、見えにくいIT運用の負荷やコストを“見える化”できる点だ。例えば、ITILではインシデント管理のログをすべて記録する。そのため、サポートの負荷や作業量がどの程度なのかを定量的に把握することができるのだ。この見える化がきちんとできていれば、運用コストを正確に算出できるほか、作業量に対して人が少なすぎるのか、多すぎるのかを判断できるようになる。

 このように経営者は、システム運用者の業務量と運用コストのバランスを定量的/合理的に判断することで、サービスレベルを保ちつつ、コスト削減を図ることができる。そして、ITシステムの顧客であるユーザーに対して、サービスの質を改善することも、ITIL活用のメリットだ。

    これからのスタンダード、ITIL V3が登場

 このように多くの企業に浸透してきたITILは、2001年にITILバージョン2(ITIL V2)が、2007年5月には最新の「ITIL V3」が出版された。ITIL V3では、どのように変わったのだろうか。

 旧バージョンであるITILやITIL V2では、最もITILとの利害関係が深いシステム部門が導入を始めるケースが多かった。この場合、システム部門は自部門の負荷軽減を重視して導入しがちになるため、本来ITILが目指すべきである全体最適を忘れて個別最適を目指した結果、失敗するケースがあったという。

 また、ITILの中心である「サービスサポート(通称:青本)」と「サービスデリバリ(通称:赤本)」のみしか参照しないことが一般化し、これも誤解を招く原因となっていた。

 最新版のITIL V3では、こうした反省に基づき、ITサービスを新たな枠組みで提示している。まず、ITIL V3ではV2の7冊構成から、「サービス戦略」を核にして、「サービス設計」「サービス移行」「サービス運用」「継続的なサービス改善」という5冊にまとめた。

 また、ITILやITIL V2で重視されていた「サービスプロセス」に対し、ITIL V3では「サービスライフサイクル」という考え方に変わっている。サービスライフサイクルとは、さまざまなプロセスが相互に関係できるように再構成したものだ。これにより、サービスサポートとサービスデリバリにしか目が向かないという企業が少なくなると考えられている。

 そのほか、従来はステップ・バイ・ステップで進んでいたバリューチェーンが、複数の組織間で連携でき、複雑な形に対応できるバリューネットワークに進化している。システム部門が提供するサービスに対しては、さまざまなプロセスからでも手を着けることができるバリューネットワークの方が融通が利くからだ。

    ITILに終わりはない!

 このように最新バージョンが登場し、進化しているITILだが、ITILの取り組みに終わりはない。ITILの取り組みは、システム運用と同様に半永久的に続くものだ。定期的にPDCAサイクルを回し、メンテナンスをすることが重要となる。

 ITILでは、「プロセス(Process)」「ピープル(People)」「プロダクト(Product)」の“3つのP”の重要性がよく指摘されるが、どれが欠けても大きな効果は期待できないものだ。

 もし、「ITILに大きな投資をしたにもかかわらず、効果が上がらない」という不満がある場合には、原点に戻って「自社の何が問題か?」「その問題をITILの活動を利用することでどのくらい解決できるか?」などを、具体的な道筋を想定して考え直してみるべきだ。

 ITILは、ITサービス上の多くの問題や課題を改善するための最善の方法を提示してくれるだろう。ぜひ、ITILをバイブルとしてではなく、参考書や攻略本として活用してほしい。


提供:株式会社野村総合研究所、株式会社日立製作所
企画:アイティメディア 営業局
制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2008年9月30日

JP1/Integrated Management - Service Support(JP1/IM - SS)
日立製作所

ITILはITサービスを“ライフサイクル”としてとらえ、「継続的なサービス改善を行う」という考え方に基づいている。そのライフサイクルを支えているのが「People(人材)」「Process(アセスメント、コンサルティングの活用)」「Product(ツールと技術)」の“3つのP”であり、日立製作所ではアセスメントからツールまでを包括的にカバーするITILソリューションを提供している。

Senju Family 「Senju Service Manager V3.0」
野村総合研究所

7月11日、野村総合研究所(NRI)によるセミナー「IT全般統制対応実践セミナー」が東京都内で開催された。今年はいわゆる日本版SOX法の運用元年。IT全般統制に取り組む企業の事例も増えているという。

サン・マネージド・サービス
サン・マイクロシステムズ

ITIL導入企業が増えつつあるが、導入自体を目的としてしまい、本来の目的であるTCO削減やROI向上を実現できていない企業が多い。その要因には、「ITとビジネスがうまく融合しておらず、全体最適ができていない」という点が考えられる。サン・マイクロシステムズはITIL登場以前からITシステムの運用効率化に取り組み、ITILに準拠した数多くのソリューションを展開。前述の課題を解決するために、企業ごとに最適なソリューションを提供するべく無料のワークショップを開催している。

Vantageファミリー
日本コンピュウェア

日本コンピュウェアは、企業内でサイロ化されたITサービス管理の統合を実現するアプリケーションサービス管理ソリューション群「Vantageファミリー」を提供している。優れたBSM(ビジネスサービス管理)製品とEUE(エンドユーザーエクスペリエンス)製品を組み合わせることによって、ITシステムの状態とビジネスの情報を統合、サービス品質を可視化し、企業におけるTCOの削減やROIの最適化を支援する

ITIL Version3による運用管理の新時代
2007年5月、ITILの最新版である「ITIL Version3」がリリースされた。企業はITILをどのように活用すべきか。またITILを活用したシステムをどのように構築できるのか。

具体的事例から学ぶITILとIT統制
NRIが主催しているIT全般統制対応実践セミナーの資料を基に、統制を意識したITサービスマネジメントの高度化を、具体的な事例を交えて紹介する。

ITILに欠かせないITサービスマネジメントを見直そう
ITILという言葉は国内でも広く浸透してきた。しかし、実際に活用できているだろうか。自社の現状はどうだろう?

ITIL v3のライフサイクルの5つのフェーズを具体化する方法とは?
ITIL V3で定義されたライフサイクルで求められる要件と、それを実現する日本コンピュウェアのソリューション「Vantage」の概要を紹介する。