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@IT > コストを削減しながら帯域を約10倍にする“適材適所”ネットワーク |
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企業ネットワークの世界では数年前から、IP-VPNや広域イーサネットに人気が集まっている。複数の拠点を持つ企業では、すべての拠点を単一のサービスで運用する姿が一般的となっていた。ただ、この単一的な手法では、広帯域で高信頼のVPNサービスを全拠点に導入しなくてはならず、コスト負担が大きくなってしまっていた。企業ネットワークは、帯域・信頼性・コストといった、相反する課題を抱えていたのである。 あらゆる特徴を備えた多用なVPNサービスが登場している昨今、このような考え方で良いのか、という疑問の声も聞こえてきた。つまり、各拠点での業務や扱う情報により、ネットワークに求められる品質、信頼性、セキュリティ性能、帯域はさまざまであるはずなのに、このような画一的な選択を行っていたのでは、ある面では最適だが、他の面では要求と性能のバランスが取れず、結果的にムダな投資、低パフォーマンスという結果に陥ってしまうのだ。 また、多くの企業で事業リスクに対する考え方が確立されてきたことも疑問の発端となっている。例えば、本社とデータセンターを結ぶ極めて重要な部分には、コストをかけてでも高い信頼性とセキュリティ性能が求められるが、小規模拠点に引き込む回線に、本社と同様の、高品質・高信頼性が必要なのか、という考え方だ。 小規模拠点では、ある程度のリスクを受容する代わりに、安価なサービスを導入し、ネットワーク全体でのコスト削減に目を向けるという構築手法が注目されはじめたのだ。受容されたリスク以上の対策=過剰品質は、即、無駄なコスト、という考え方でもある。その逆に、そのコスト削減分を重要個所に振り分け投資することで、同じ全体コストであっても、よりパフォーマンスの高いネットワーク構築が可能になる。 このように多用なネットワークサービスを拠点ごとに使い分ける手法は“適材適所”ネットワークあるいは“メリハリ”ネットワークなどと呼ばれ大いに注目されているのだ。
ただし、この“適材適所”の考え方は、口でいうほどやさしいものではなかった。異なる複数のサービスを導入し、全体的なネットワークとして構築するには、かなりの技術力とノウハウが必要だったのだ。仮に、導入したサービスが複数の通信事業者にまたがるような場合だと、トラブルが発生した際の切り分けにかかる時間と手間はそれなりのものが予想され、管理・運用面でのコスト上昇の可能性も否定できない。ネットワークの専門家を置いていない企業では“適材適所”ネットワークの構築は敷居が高かったといえる。 そんな企業側のニーズと悩みをすくい上げる目的で登場したのが、NTTコミュニケーションズが提供する「統合VPN」ソリューションズだ。これは、次に挙げる4つのVPN系回線とその関連サービスで構成されている。
そしてこれらネットワークサービスに付随して、
という関連するソリューションも提供されている。
このように「統合VPN」では、ワンストップで多様な“適材適所”ニーズに応えるVPN系ソリューションが提供されているのだ。そのため企業は最適なネットワークサービスを、拠点規模や業務内容に合わせて無駄なく構築することが可能となっている。また、ネットワークだけでなく、関連のソリューションもワンストップで提供されている点も見逃せない。技術力やノウハウに自信のない企業にもこの新しいネットワークの潮流である“適材適所”の考え方を導入することができるのだ。 これまでユーザー企業ネットワーク構築のサポートをしてきたSIerにとっても、「統合VPN」の中から取り入れたいソリューションのみを選んで自社サービスに組み入れることができるので、顧客ユーザーへの訴求にも結び付け、自社サービスの競争力向上も可能だろう。
では、「統合VPN」による“適材適所”が企業のネットワークインフラにどのような効果をもたらすのかをその具体的な方法論とともに検証してみたい。 1. 信頼性の向上とコストダウンという、二律背反する要求に応える 本社やデータセンターといった重要な拠点には、Arcstar IP-VPN、e-VLANといった高い信頼性と品質をもった回線を導入し、支店、営業所といった中小の拠点には低価格なブロードバンド回線を利用したGroup-VPN、OCN-VPNを導入。 このように拠点ごとに適したVPNを使い分けて導入することで、ネットワーク全体で見た場合の信頼性と品質を底上げすると共に、全体的なコストを抑制することができる。 2. 広帯域化と同時に効率化を実現してネットワーク全体のパフォーマンスを上げる 受発注や勘定系システムといった業務に影響を及ぼす重要なデータを扱う基幹系ネットワークは、帯域はそれほど必要としない。このような高品質、高信頼性であることが求められるネットワークにはArcstar IP-VPNまたはe-VLAN を導入。Webアクセス、メール、マルチメディア系データのような情報系ネットワークは、どちらかというとスムーズに利用できることが優先される。このような広帯域を必要とするネットワークには、コストパフォーマンスの高いGroup-VPNまたはOCN-VPNを導入する。このように業務内容に応じて最適なVPNサービスを組み合わせていくことで、ムダがなくパフォーマンスの高い最適なネットワークを構築できるのだ。 3. バックアップ回線を遊ばせておかない 実は、ネットワークの二重化のためにISDN回線をバックアップとして使っている企業がまだまだ存在している。このブロードバンド時代にISDNとは驚きだが、バックアップ専用として普段は使っていないのだからなるべく安価に、という発想から生まれたものであろう。ただ、現在の企業システムでは、総じてトラフィックが増大しているのはご存じの通り。有事の際にバックアップに切り替えても、それ自体が狭帯域が原因で十分な能力を発揮できないのであれば本末転倒だ。
しかし、「統合VPN」が提案するバックアップは、実際に稼働中のVPN同士で相互にバックアップ体制を実現させようというものだ。2の例では、基幹系と情報系を異なるVPN回線で分けた。それを2面のネットワークと考えれば、広帯域の相互バックアップ体制が確立する。 4. キャリアマネジメント体制で運用管理面のコストを大幅に削減 キャリアダイバシティーという方法論で万全のバックアップ体制を構築するやり方がある。高次元の冗長性を実現する方法として認知されている。ただし、複数の通信事業者とのやりとりが発生するため運用管理面での負担が増大することが必至。また、ネットワークの構成も複雑になるため障害対応の面でも不安が残る。 しかし、3の例で紹介した「統合VPN」からの組合せによるバックアップ体制の場合、サービスがワンストップで提供されているため、対応窓口の一元化が可能なのだ。障害時にも障害部分の切り分け、故障個所の特定が容易となり、運用保守に掛かる負担が大幅に軽減される。 ただ、残念なことに、このような管理運用面のコストを数値化するのは難しい。そのため明確な数字を示して削減効果を語れない歯がゆさはある。とはいえ、キャリアダイバシティー体制を経て1社複数サービス体制に乗り換えたユーザーは、口を揃えて「管理が楽になった」と感想を漏らす。それが何よりの証左であろう。 これらの例でも分かるように、「統合VPN」は、企業ネットワークにおいて、コストダウン、広帯域化、管理業務の効率化、品質・信頼性の向上といった、相反する課題を、高い次元でバランス良く実現するサービスとして提供されているのだ。次項ではユーザーの導入事例をもとに、その詳細を具体的に検討してみよう。
東京に本社を置き全国約160個所の店舗と2個所の工場と物流拠点を持つ、総合毛髪企業のアートネイチャーだが、顧客情報の電子化、Web技術ベースのCRMシステムの利用、グループウェア利用におけるマルチメディア化などに伴いネットワークの帯域不足が顕著になってきた。 そこで、白羽の矢を立てたのがNTTコミュニケーションズが提供する「統合VPN」だ。Arcstar IP-VPNとGroup-VPNを使い“適材適所”の考え方により構築したネットワークは、全体のコストはそのままに、約10倍の帯域を得ることに成功した。
アートネイチャーがネットワークの更改にあたり掲げた最大のポイントは「帯域の増強」だったが、それに加え「コストの抑制」「セキュリティの確保」「事業継続性の確保」「運用管理の効率化」といった課題もあげられていた。 そこで“適材適所”のセオリーどおり、本社や物流センターなどの重要拠点には、Arcstar IP-VPNを導入し、全国約160個所の店舗には、ブロードバンド回線を用いたGroup-VPNを導入した。これにより「帯域は約10倍になったが全体コストはほぼ同じ」(情報システム部部長・柿添豊氏)というネットワークを構築することできた。「帯域の増強」と「コストの抑制」という2つの課題がクリアされたことになる。
そして、柿添氏が、同時に検討した競合他社のVPN系サービスと比較して、NTTコミュニケーションズに着目した理由に「閉域網であったこと」が挙げられる。「他社が提案した店舗向けの低価格IP-VPNは、仮想的に閉域網を確保するタイプ」(柿添氏)だった。 CRM上で顧客の身体的な個人情報を扱う同社では、絶対にデータ漏えいは許されないこと。ブロードバンド回線を足回りに使ってはいるが、独自網を使い設備的にも完全な閉域性を確保しているNTTコミュニケーションズのGroup-VPNが選ばれたのは必然といえるであろう。さらに、Arcstar IP-VPNと組合せて導入・運用することにより、企業ネットワーク全体として完全な閉域性を保ち、「セキュリティの確保」という課題を達成することができた。ネットワークにメリハリをつけ、低コスト・広帯域・高セキュリティ・信頼性といったすべての課題を実現したのだ。 同社はネットワークの二重化も行っている。Arcstar IP-VPNで接続した重要拠点についてはアクセス回線を二重化し、さらにGroup-VPNで接続した一部重要店舗には、ADSLなどのブロードバンド回線をバックアップに用いる「バックアップPlus」(Group-VPNのオプションサービス)を採用した。これにより、「事業継続性の確保」という課題がクリアされたわけだ。
そして、「運用管理の効率化」といった課題には、Arcstar IP-VPN、Group-VPNとも、NTTコミュニケーションズによる一元的なレンタルルータによる機器のアウトソーシングを採用した。さらに24時間365日オンサイト保守によりネットワーク周りの故障等の対応窓口を一元化した。これにより保守・運用にかかる負担を大幅に減らすことが可能となっている。「統合VPN」導入以前は、キャリア事業者と機器レンタル事業者がそれぞれ存在していたので、故障時のトラブルの切り分けなどの対応は、困難を極めていたという。 このようにアートネイチャーでは、ネットワーク更改以前に利用していた競合キャリアからNTTコミュニケーションズをパートナーに選ぶことで、「統合VPN」による“適材適所”ネットワークのメリットを十二分に活用し、それまで抱えていた課題を一気に解決したのだ。 また、今回のネットワーク構築は、過去の課題を解決するだけに止まらない。「以前は、帯域などネットワークの制限が多く発想すら浮かばなかったアイデアが自由に浮かび、ビジネスの可能性が広がった」(柿添氏)と、新ネットワークによりもたらされる発想が企業の成長に活力を与えることを実感している。「統合VPN」による“適材適所”ネットワークが、アートネイチャーの企業戦略を強力に支援する姿が想像できる。
ここまで、アートネイチャーの「統合VPN」の導入事例から、“適材適所”ネットワーク構築のツボを紹介した。次回は、NTTコミュニケーションズの「統合VPN」ソリューションが、今後どのように進化するか、来年度に向けた取り組みについてお伝えしたい。 提供:NTTコミュニケーションズ株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年3月31日 |
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