![]() |
![]() |
|
Loading
|
@IT > 将来的なナレッジマネジメントを見据えてメール定型文管理にFAQナレッジを活用 |
![]() |
|
Yahoo! JAPANの全サービスのユーザーを対象に、24時間365日体制でメールによるカスタマーサポートを行っているのがヤフー株式会社CS本部お客様センターだ。同センターが顧客対応品質の向上に活用しているのが、野村総合研究所(NRI)のFAQ検索・管理システム「TRUE TELLER FAQナレッジ」である。 FAQナレッジを利用したメール定型文管理システムの導入経緯や活用状況、今後の拡張計画などについて、お客様センター業務推進リーダーの市川久浩氏、小松善之氏および妹尾巳恵氏にお話を伺った。
日本最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーは、今年で設立10周年を迎える。同社では、利用者数拡大で成長してきたこれまでの「量の10年」に対して、これからの10年を「質の10年」と位置付け、その取り組みの1つとして全社的に顧客満足度(CS)向上に取り組んでいる。 その対象となる顧客は、同社が提供するオークションやショッピングをはじめとした80種類以上のサービスを利用するすべてのユーザーだ。2006年5月時点での月間のアクティブID数は1620万IDにものぼる。 この膨大なユーザーとの接点としてCS向上に直結するカスタマーサポートの役割を担っているのが、同社CS本部お客様センターである。ユーザーからのお問い合わせをすべてメールで対応しているヤフーでは、試行錯誤を重ねながらメール対応の品質向上のための仕組みを築いてきた。 市川氏は、同社のメール対応の基準について次のように語る。
1次解決率とは、回答メールを送信してから48時間以内に追加の質問がなければ1度の回答で問題が解決したものとみなす指標である。ヤフーが提供するサービスによって異なるが、センター全体では約80%の1次解決率を実現しているという。 また、メール対応によるカスタマーサポートのメリットとして、市川氏は「サービスの均質化」を挙げる。電話の場合はリアルタイムの対応が求められるが、メールでは対応に時間的な猶予がある。そこで、回答用のテンプレートが重要になる。過去に同様な問い合わせがあった場合はもちろん、ある程度予測される問い合わせに対する回答文も用意しておけば、それらの組み合わせによりオペレータ個人のスキルに依存せず、かつユーザーからのお問い合わせに対して的確な回答が可能となり、均質なサービスを提供できる。
同社では、TRUE TELLER FAQナレッジ導入以前から回答用のメール定型文テンプレートを作成・活用していた。その管理には、社内のスタッフがMicrosoft Accessで作成したデータベースで行われていた。現場で実際に定型文を使うユーザーの視点で作られたシステムということもあって使い勝手はきわめてよかったという。 しかし、ヤフーの提供サービス拡大とともに扱う定型文データが増えてくると、次第にAccessデータベースによる定型文管理システムの弱点が顕在化してきた。まず、自由度が高く使いやすいシステムだった反面、そこに入れる定型文の内容にも自由度がありすぎて、そもそもの利用目的である均質化が図れなくなっていたこと。そして、継続的に質を高めていくためには定型文の有効性を評価するような仕組みも必要になってきたが、既存のシステムにそのような機能を追加することは困難であったこと。 そこで同社では2004年末頃、これらの課題を解決するべく新システムの導入を決断した。いくつかの製品を比較検討した結果、求める機能を適正な価格で提供しているFAQナレッジの採用を決定した。
FAQナレッジはTRUE TELLERのテキストマイニングエンジンをベースにしたパッケージソフトだ。ヤフーの当初の目的は定型文管理だったが、将来的には、センターレベルでの情報共有基盤となるナレッジマネジメントシステムとして活用する方向だった。そこで、最も重視されたのがFAQナレッジの持つ「ワークフローの管理」機能だった。各プロセスの柔軟な権限設定やナレッジの作成・承認・公開といった細やかなワークフロー管理機能が導入の決め手の1つとなったのだ。
各種のカスタマイズを経て、FAQナレッジによる新メール定型文管理システムは、2005年8月に稼働開始した。FAQナレッジの特徴を生かし、新システムでは定型文の作成や承認などが明確にワークフロー管理されている。 まず、定型文の作成や修正は各サービスの担当者である正社員または委託社員のスーパーバイザー(SV)が行う。作成・修正された定型文は、各チームの品質管理担当者による承認処理を経て、FAQナレッジのデータベースに反映される。ユーザーからの問い合わせメールに対応するオペレータ(一般の委託社員)は、FAQナレッジの検索・閲覧のみ可能な権限を持つ(図参照)。
また、旧システムのAccessデータベースで管理していた定型文は、ナレッジとしてそのままスムーズに移行できた。新システムへの移行当時に1万5000程度だった定型文の数は、10カ月後の2006年6月時点で約2万となった。Accessでは面倒だった削除の処理がFAQナレッジでは容易に行えるようになったため、使われていない定型文の削除や、内容的に問題があった定型文の修正などのメンテナンスも実施された。そのため、単純に数が5,000増えただけではなく、質的にもかなりブラッシュアップされていることになる。
FAQナレッジの採用は決めたものの、実際に導入する前にカスタマイズによる個別対応で何としても解決しなければならない課題があった。それは、セキュリティ保持のための高度なアクセス制御の実現である。 小松氏は、「非常に多くのお客さまの個人情報を取り扱っている当社では、セキュリティ保持は最重要事項となります。セキュリティの課題がクリアできなければ、そもそも当社のポリシーとして導入することができないので、そこはかなり慎重に時間もお金もかけて検証し、カスタマイズしました」と当時を振り返る。 例えば、お客様センターの中でも、クレジットカード情報をはじめとした個人情報を扱うチームとそれ以外の各サービス担当チームでは、扱う情報のレベルによって部屋が分かれている。その部屋ごと、各セキュリティレベルに応じた厳密なアクセス制御を実現することが、FAQナレッジ導入における至上命題だったのだ。
24時間365日稼働のメール定型文管理システムとして、お客様センターの数百名のオペレータに利用されているFAQナレッジ。導入から1年近くを経た現在の、現場での反響などを小松氏に聞いてみた。
さて、現時点ではメール定型文管理システムとして利用されているFAQナレッジだが、その導入理由でもある将来的なナレッジマネジメントシステムの実現性は、どの程度あるのだろうか? 妹尾氏によると、試験的にではあるが、すでにその取り組みは始まっているという。
ヤフーのCS向上を支えるお客様センターにおいて、FAQナレッジによる本格的なナレッジマネジメントシステムが稼働する日も、そう遠くはなさそうである。
提供:株式会社
野村総合研究所
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年7月31日 |
|