 |
|
こんなところにもCORBAなの?
組み込みの世界にCORBAの時代が到来する |
前編では、組み込みの世界になぜCORBAが必要なのか?
そして、Orbix/Eが組み込み用CORBAとしてどのような特徴をもつのかについて紹介した。後編の今回は、実際に組み込みシステムを構築する上で、Orbix/Eがどのようなメリットや、アドバンテージをもっているかについて紹介しよう。
 |
Orbix/E 2.0はCORBA 2.3のサブセット |
Orbix/Eの最新バージョン「Orbix/E 2.0」は、CORBA 2.3仕様のサブセットとして設計されている。組み込みアプリケーションの用途を十分に考えて不要な機能を取り除き、サイズを最小限に抑えている。前回も紹介したように、組み込みアプリケーションの限りあるメモリの使用を最小限に抑えることに成功し、C++バージョンでは、クライアントの場合は最小で100Kbytes、サーバの場合は最小150Kbytesを実現している(Javaバージョンではさらに容量は小さくなる)。
また、アイオナの実績あるCORBA ORB製品である「Orbix 2000」、「Orbix 3」とのシームレースな運用が可能なため、ネットワークで結ばれた多様なシステム、OS、デバイス間でアプリケーションを統合することも可能だ。
|
Orbix/E 2.0ディテール
● CORBA 2.3仕様のサブセット
- valutypes、wstring、wcharを除くすべてのIDLデータタイプをサポート
- POAの基本機能をサポート
● IIOP 1.0準拠
- 他CORBA製品とのインターオペラビリティ
- IIOP 1.1/1.2はサイズを減らすために未サポート |
|
 |
さまざまなソリューションに柔軟に対応 |
■多様な言語をサポート
組み込み業界では、高級言語としてC言語が普及している。当然、組み込みエンジニアの言語スキルもC言語が中心となる。一方、CORBAの世界のインプリメンテーションではC++、Javaが中心言語となるため、はたしてC言語がサポートされるのか不安を感じる読者も多いに違いない。しかし、Orbix/E
2.0はC言語もサポートするので、C言語に慣れた組み込みエンジニアにとってもインプリメンテーションしやすいのだ。また、当然、C++、Javaもサポートするので、これらのオブジェクト指向言語によるインプリメントを必要とする場面にも対応する。
そして、使用する言語によって機能差があったり、パフォーマンスに大きな差が出る心配がないのもOrbix/E 2.0の特徴だ。
|
Orbix/E 2.0ディテール
● Orbix/E 2.0 for C/C++
C言語マッピングにより、ネットワーク・プロセッサやDSPなどの組み込みシステムにも利用可能。C++への対応は、統合IPサービス
(特に、光ネットワークスイッチ、ソフトスイッチ、ワイヤレス・インフラストラクチャ) 向けのソリューションを開発する通信会社やネットワーク機器メーカーにとってメリットが大きい。
- 対応OSとコンパイラ
| C/C++ 組み込みOS用 |
| QNX |
GCC 2.95.3 |
| Embedded Linux |
GCC 2.95.3 (HardHat、BlueCat、others) |
| VxWorks |
GCC 2.7.2 |
| ENEA OSE |
Green Hills |
| C/C++ 通常OS用 |
| SUN Solaris 2.6/7/8 |
CC 2.92.3, Forte 6 Update 2 |
| Linux |
GCC 2.95.3 |
| Windows NT/2000 |
MS Visual C++ 6.0 |
● Orbix/E 2.0 for Java
Javaのインプリメンテーションでありながら、C/C++バージョンに匹敵する機能を備える。Sun
MicrosystemsのJ2ME (Connected Device Configuration (CDC)、Foundation
Profile クラス) をサポートしているため、さまざまなワイヤレス・デバイスにも対応できる。
- 対応Java仮想マシン(JVM)
| Personal Java (Windows CE 3.0, Symbian/Epoc32) |
| IBM Java Micro Edition (PalmOS 3.5) |
| Java 2 Micro Edition (J2ME) is under
development |
|
|
■多様な通信プロトコルに対応
組み込みシステムの世界での通信はIPベースとは限らない。Orbix/E 2.0は、OCI(Open Communication Interface)をサポートするため、TCP/IP以外のトランスポート・プロトコルをプラグインで実装することができる。工数のかかる移植作業が不要なため、組み込みシステムのさまざまなニーズに柔軟にこたえることができるのが大きな特徴だ。
プラグインの例としては、赤外線(IrDA)ポートやSSLなどの暗号プロトコルなどがある。もちろん、シリアル上の通信も可能だ。また、特殊な用途としては、軍事システムに利用されるハイ・パフォーマンスな組み込みコンピュータシステム上の特殊なトランスポートもサポートできる。
■ソース・コードを公開
Orbix/E 2.0ではソース・コードが公開される。これにより、ユーザーはOribix/E 2.0に、用途や環境に合わせたカスタマイズを施すことが可能だ。ターゲットに合わせた軽量化、パフォーマンスのチューニングが容易であるだけでなく、ほかのプラットフォームへのポーティングも可能だ。組み込みアプリケーションの開発と運用という特殊な分野であっても、柔軟性と移植性に富んでいる点が大きなメリットといえよう。
Orbix/Eの導入成功事例
インターネットの普及により、そのバックボーンを担うIPスイッチ・ ルータなどには、従来のようにハードウエア面での高速化の努力のみならず、インテリジェントな負荷分散・ルーティングのロジックを実装することが要求され始めている。
米国Caspian Networks社は、そのような要求に応えるために、Orbix/Eを自社のIPスイッチ
(スーパー交換機)用ソフトウエアのインフラとして組み込んでいる。 ここでは、Orbix/Eの高パフォーマンス、 ソースコード公開などのメリットがフルに活用されている。
Caspian
Networks社 |
 |
きめの細かいコンサルティングとサポート |
■日本法人が直接コンサルティングとサポートを提供
前半で述べたことと重なるが、アイオナは定評あるCORBA ORB製品である「Orbix 3」、「Orbix 2000」をかかえる企業だ。CORBAにおけるリーダーシップカンパニーであり、多くの大規模案件の事例をもつ。アイオナは、Orbix/Eと、これらの実績あるOrbixとの相互運用性を1社で保証する。例えばテレコム分野のような大規模な監視システム、バックエンドのエンタープライズ基盤との相互運用において、責任あるサポートを提供できるわけだ。
Orbix/Eに関するコンサルティングとサポートは、日本アイオナ・テクノロジーズのエンジニアが直接担当するため、海外製品にありがちな遅い対応や情報の不足といった不安はまったくない。組み込みシステムの設計・アーキテクチャレベルに及ぶコンサルティングを提供できるため、ユーザーに最も最適なソリューションをプランすることができることはもちろん、CORBAの導入が初めてのユーザーも、不安なく導入することができる。
さらには、ユーザーのエンハンスメント・リクエストを詳細に開発部隊に伝達し、製品に反映することも可能としている。ユーザーのニーズに対し、ここまできめの細かい対応が可能である点は、CORBA製品に限らず、あらゆる各社のソフトウェアプロダクツと比較しても特筆に価するといっても過言ではないだろう。
|
日本アイオナ・テクノロジーズが提供するコンサルティング
|
● iStart(キックスタート・プログラム)
新規導入ユーザ、または新規プロジェクトに対する技術導入サービス。 顧客ニーズに応じて、以下のメニューから内容を柔軟にカスタマイズ。
- プロジェクトに最適な製品の構成設定
- 製品の機能、留意事項の説明
- アーキテクチャ・ワークショップ (セキュリティ、ロードバランシング、フォールト・トレランス、データベース・インテグレーション、トランザクション、メッセージングなどのアーキテクチャに関するレクチャおよびレビュー)
- プルーフ・オブ・コンセプト
● iDevelop(開発支援)
開発プロジェクトを製品技術面から支援するサービス。顧客のニーズに応じて以下のメニューから内容を柔軟にカスタマイズ。
- アーキテクチャ・ワークショップ
- アーキテクチャ・レビュー
- デザイン・レビュー
- 開発サポート(デザインや実装上のQ&A)
● iIntegrate(既存システムとのインテグレーション支援)
顧客の既存システムとアイオナ製品とのインテグレートを支援。
● iMentor(チェックポイント・アシスタンス)
開発の各フェーズの重要ポイントでコンサルティングを実施。
● iDeploy(ディプロイメント・サポート)
テストから展開フェーズでのサポートを実施。
- テスト・プラン、テスト・ケースのレビュー
- システム管理者や運用担当者へのトレーニング
- 展開作業の支援
● オフサイト開発サポート
メールを通じた継続的サポートを提供。
|
|
Orbix/Eの事例ではないが、NTTドコモが世界に先駆けてスタートした第3世代携帯電話網「FOMA」の監視システムには、アイオナのOrbix
3が活躍している。情報通信というクリティカルな生命線に、日本アイオナ・テクノロジーのコンサルティングが活躍している。
■CORBAの未来を支える
アイオナは、CORBAの仕様を策定するOMG(Object
Management Group)の中心メンバーだ。Steve Vinoski、Michi Henningといった人物を中心に、CORBA、組み込みCORBAの仕様策定、改善議論をリードしている。組み込みシステムにおけるCORBAの現時点での最適解が、常に製品に反映されるわけだ。
◆
Orbix/Eは、新しく誕生した組み込みシステム用CORBA ORB製品だが、そのテクノロジは、前編でも解説したように前身であるORBacus/Eの実績と、業界をリードするアイオナのCORBA技術に支えられている。
|